M&A相談所
QUESTION
不動産業の譲渡で留意すべき点や
企業評価のポイントとは?
不動産業を経営しており、数年後に事業譲渡を検討していますが、不動産業は業種によって企業価値の評価ポイントが異なると聞きました。業種ごとにどんな点に注意すればいいでしょうか。(関東地方の不動産業経営者)
売買、建築、賃貸
業種により評価・交渉のポイントが異なる
不動産事業を売却する際には、単なる資産売却とは異なる留意点が多くあります。ここでは、不動産売買業、不動産建築業、不動産賃貸業の各業種における評価軸と交渉のポイント、そして総合的な戦略について解説します。
●不動産売買業の売却
独自の仕入れルートの確立・仕組化が重視されます。
【評価のポイント】
◆仕入れにおける評価ノウハウが組織として体系化されているか?(評価方法の確立、標準化された評価手順、データベースの活用など)
【交渉のポイント】
◆周辺地域の開発計画や不動産市況の最新動向を踏まえ、今後の事業展開の可能性を具体的に示す。
●不動産建築業の売却
企業の技術力、設計・施工実績、プロジェクト受注状況が評価の中心となります。
【評価のポイント】
◆専門性の高い技術力、設計力、施工管理能力
◆優秀な人材の確保、技術継承・人材育成の仕組み
【交渉のポイント】
◆現場管理体制、技術継承・人材育成計画を提示し、事業の持続性と成長性をアピールする。
◆景気変動の影響を受けやすいことを踏まえ、リスクヘッジ策や進行期のみならず中期的な受注状況をアピールする。
●不動産賃貸業の売却
安定した収益基盤、入居率、長期リース契約の状況が企業価値を左右します。
【評価のポイント】
◆高い入居率を維持するための管理体制、入居者満足度向上のための取り組み
◆長期リース契約による安定収入の確保
【交渉のポイント】
◆賃貸市場の動向、法規制や税制の影響を分析し、リスクと対策を明確に示す。
◆将来収益性を裏付ける情報を買い手に提供し、投資価値を理解してもらう。
●総合的な戦略と展望
どの業種でも、徹底した市場分析と、双方にとって最適な条件を見出すための柔軟な交渉力が重要です。また、情報の透明性を確保するための資料の準備、業種固有のリスク管理策も求められます。専門性の高いM&Aアドバイザーとの連携が成功への近道となります。
収益不動産を保有している場合はその評価も必要となり、算定手法がより複雑になります。また、企業ごとに売上比率や強みが異なるため、各社の事業内容や収益構造、保有資産などを深く分析し、最適な株価算定と、買い手候補先への効果的な提案を行うことが重要です。上記のポイントを踏まえ、譲渡後の事業移行や長期的な成長戦略も見据えた戦略的な売却計画を策定し、市場の変化に柔軟に対応しながらサポートしてくれるアドバイザーとディールを推進することをお勧めします。