株式譲渡に関する税務処理ABOUT M&A
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中小企業のM&Aにおいてよく用いられているのが株式譲渡(譲受)スキームです。株式譲渡に関する税務上の論点についてまとめてみます。
(1)株主が個人の場合
所得の種類 | 譲渡所得(申告分離課税) |
所得の計算方法 | 総収入金額(譲渡価額)- 必要経費(所得費+委託手数料等) |
税率 | 20%(所得税15%+住民税5%) (ただし平成25年~令和19年までは20.315%(所得税15.315%+住民税5%) |
①所得の種類について
申告分離課税方式の譲渡所得になります。なお、平成25年度税制改正により上場株式等と非上場株式等との間で譲渡損益の通算は原則としてできなくなっています。
②所得の計算方法について
所得の計算方法で問題になるのは、取得費の扱いと譲渡に際して支払った手数料についてです。
取得費について
株式等を取得した時に支払った払込代金の他、購入代金(購入手数料その他その有価証券の購入のために要した費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)も取得費に含めます。
同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合
同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入し、その株式等の一部を譲渡した場合の取得費は、総平均法に準ずる方法によって求めた1単位当たりの価額を基に計算します。
取得費が分からない場合
譲渡した株式等が相続したものであるとか、購入した時期が古いなどのため取得費が分からない場合には、同一銘柄の株式等ごとに、取得費の額を売却代金の5%相当額とすることが認められています。実際の取得費が売却代金の5%相当額を下回る場合にも、同様に認められます。
例えば、ある銘柄の株式等を300万円で譲渡した場合に取得費が不明なときは、売却代金の5%相当額である15万円を取得費とすることができます。
仲介手数料について
M&Aで株式を譲渡するにあたり仲介業者に手数料を支払った場合の処理ですが、株主が個人の場合は上記の必要経費に含めます。
仲介手数料:委託手数料として計上(消費税込みの金額)
③税率について
税率は上記の通り、一律20%(所得税:15%+住民税5%)です。ただし平成25年から令和19年までは復興特別所得税として各年分の基準所得税額(15%)に2.1%を乗じた額を所得税と合わせて申告・納付します。
つまり所得税は15%×(1+2.1%)=15.315%となりますので、住民税を加えると譲渡所得等にかかる税率は20.315%となります。
(2)株主が法人の場合
譲渡益の扱い | 株式売却益 |
譲渡益の計算方法 | 譲渡対価 -(株式取得価額+諸経費) |
税率 | 法人税率(法人税、住民税及び事業税)の税率 |
①譲渡益の扱いについて
持分の多寡に応じて「関係会社株式売却損益」や「関連会社株式売却損益」、「投資有価証券売却損益」といった勘定科目になります。
②譲渡益の計算方法について
法人株主の取得価額については、個人株主の「取得費が分からない場合」の適用はありません。株式を取得した際に仲介手数料を支払った場合は諸経費として取得価額に含めます。一方、株式を譲渡した際に仲介手数料を支払った場合は費用計上します
③税率について
実効税率は以下のように計算します。

実効税率は各都道府県によって異なりますし、外形標準課税が適用されるか否か(資本金1億円超が適用)でも異なりますが、概ね30~35%です。