QUESTION

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会社の譲渡について番頭格の役員にだけ事前に伝えて相談してもいい?

当社には、辞めると会社経営に支障をきたす番頭格の役員がいます。一緒に会社を大きくしてきた私の半身のような存在で、大切な経営判断については必ず相談してきました。会社を譲渡するにあたっても、彼に相談して、一緒に譲渡先を探したいと思っています。

M&Aを行う際には「最終契約の締結まで従業員に知らせない」ことが重要だと聞きます。しかし、事前に伝えておかないと彼が当社を辞める可能性もあり、そうなると会社の価値が下がり、譲り受ける買い手にも迷惑をかけることになりかねません。彼にだけ事前に伝え、相談しながら進めてよいものでしょうか。

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事前に伝えることは可能
ただし、そのリスクの確認と検討を

結論から申しますと、会社を譲渡することを事前に関係者にお伝えすることは可能です。しかし、ご相談者様もおっしゃるように、会社の譲渡について伝える相手は限定したほうがよいとされています。「M&Aは秘密保持に始まり、秘密保持に終わる」。実際、不用意に関係者に伝えてしまったことで社員や取引先の動揺を招き、結果的にM&Aが破談になったり、希望に沿わないM&Aになる可能性もあります。

それでも、今回のご相談者様のように、事業のキーマンとなる人には伝えておきたいといったケースもあります。そこで、伝えるかどうか検討する際に確認・注意すべきポイントをご説明します。

ポイント1. M&Aによる会社の譲渡に反対されることはないか?
→処遇などにおいてデメリットはないことを適切に伝える

M&Aの現場では、しばしば役員が株式の譲渡に反対することがあります。寂しさといった情緒的な要因だけでなく、オーナー変更による自身の処遇の改悪などを不安に感じる人も少なくありません。事前に伝える際は、譲渡をしてもキーマンにはデメリットがないこと、むしろ会社が存続し成長できるチャンスなのだと、M&Aをする背景を含めて適切にお伝えすることが大切です。

ポイント2. 譲渡先の選定で“ないものねだり”にならないか?
→優先順位をすり合わせておく

譲渡後も会社に残るキーマンにとって、譲渡先は自分の上司となりますので、その人柄や経営方針が自分と合うかどうかは、最も大事なことになるでしょう。M&Aについて伝えるなら、譲渡先の選定にはキーマンの意向をある程度、反映されたほうがよいと思いますが、すべての意向に沿う理想的な譲渡先に出会えるかどうかは未知数です。“ないものねだり”にならないよう、キーマンと優先順位をすり合わせておくことが必要です。

他の関係者に情報が漏洩しないか?
→情報の取り扱いルールを決める

会社を譲渡することは秘中の秘。信頼できる人にしか、その情報は伝えられません。一方で、秘密を厳守するのは精神的につらいことだとおっしゃる方が多いです。キーマンに伝えると、そこから関係者(従業員、取引先、金融機関等)に情報が漏洩・拡散するリスクが生じることを念頭に置き、伝える際は、秘密にする理由を懇切丁寧に説明するとともに、キーマンに対し情報の取り扱いルールを決めることも大切です。

会社の譲渡をキーマンに伝える際は、その伝え方とタイミングが大事です。最終契約前に伝える場合は、情報が漏洩しないようにするだけでなく、キーマンから情報が漏洩してしまった場合の対応策まで見据えておくことが必要です。
社内の関係者への情報共有のタイミングなど、判断に迷われる場合は経験豊富なM&Aアドバイザーにぜひご相談ください。