INTERVIEW

後継者不在の建設会社がM&Aで成長戦略を実現
――株式会社高山と繁星株式会社の事例

株式会社高山様、繁星株式会社様
譲渡企業様 譲受企業様
企業名 株式会社高山 繁星株式会社
所在地 長野県上田市 大阪府大阪市
事業内容 特定建設業 不動産開発業、宿泊施設運営業、不動産特定共同事業(グループ会社含む)
M&Aの目的 後継者不在の解決、地域雇用と事業の継続、会社の成長基盤づくり 長野県内の開発体制強化、建設機能の内製化、地方開発の推進
今後のテーマ 地域密着の強みを生かした事業承継と次世代体制づくり 白馬をはじめとする長野県内開発案件への対応力強化と人材投資

この記事のハイライト

課題:株式会社高山は後継者不在に加え、公共事業の減少や不動産市況の変化を見据え、会社の将来に向けて早い段階から事業承継を模索していた。

決断:繁星株式会社は長野県内、とりわけ白馬を中心とした長期開発構想の実現には、地域に根ざした建設会社との連携が不可欠と判断。現場の丁寧な管理体制や将来像の一致が、両社の大きな決め手になった。

成果:成約後は、管理体制の整備や資格手当の導入、採用強化などPMIが着実に進行。地域企業としての基盤を守りながら、長野県内トップクラスの建設会社をめざす新たな成長戦略が動き始めている。

谷町洋氏、滝沢康之氏、ストライク岡和希
左から 谷町洋氏、滝沢康之氏、担当したストライク岡和希
長野県上田市の株式会社高山の社屋前

M&Aは、後継者不在という経営課題を解決するだけでなく、地域に根ざした企業が次の成長曲線を描くための有力な選択肢でもあります。
今回は、長野県上田市で地域の建設・不動産開発を支えてきた株式会社高山取締役会長の滝沢康之氏と、地方開発に強い関心を持つ繁星株式会社代表取締役会長の谷町洋氏に、事業承継を決断した背景、お互いに信頼を寄せた理由、そして成約後に進み始めているPMI(統合プロセス)と今後の成長構想について伺いました。

後継者不在を越え、会社を次の成長ステージへつなぐ決断

事業承継を考え始めた背景について教えてください。

滝沢:私も67歳になり、後継者の問題をきちんと考えなければいけない時期に来ていました。娘はいるのですが、事業を継ぐ人材がいない状況でしたので、自分が元気なうちに、しっかりした会社と組んで会社の将来をつくりたいと考えるようになりました。

最初は銀行に相談しました。長野銀行さん(2026年1月より合併に伴い、八十二長野銀行)に窓口になっていただき、その後ストライクさんにも入っていただいて進めてきました。早めに動いたことで、落ち着いて相手を見極めることができたのは良かったと思います。

滝沢様として、単独での経営にどのような課題を感じていましたか。

滝沢:当社は上田市・東信地区を中心に、不動産開発と建設関連の仕事をしてきました。ただ、この地域は災害が比較的少ないこともあって公共事業が年々減ってきていますし、物価高の影響で土地需要も以前ほど勢いがありません。

そうした中で、従来の延長線上だけでは先細りになる可能性も感じていました。だからこそ、リゾート開発のような新しい需要を持つ相手と一緒になることが、会社の成長にも社員の将来にもプラスになると考えました。今回のご縁は、まさにその方向性に合っていたと思います。

谷町様は、なぜ長野県の建設会社に注目されたのでしょうか。

谷町:もともとインバウンド需要が拡大する白馬(長野県白馬村)で長期の開発構想があり、長野県内で建設機能をしっかり持つことが重要だと考えていました。白馬だけでなく、軽井沢やその周辺、長野県内には今後も多くの可能性があります。そうした中で、地元の会社がグループにあることは、許認可や地域との信頼関係の面でも非常に大きいんです。

上田市については最初から詳しかったわけではありませんが、今回のご縁の中で知ることができました。地図で見ても長野県の中心に近く、各地へのアクセスや展開を考える上でも魅力がありました。

“この相手なら任せられる”と感じた、現場と将来像への信頼

初めて面談された際のお互いの第一印象を教えてください。

谷町洋氏
谷町洋氏

谷町:印象に残っているのは、現場を一緒に見て回った時のことです。管理がとてもきれいで、整理整頓も行き届いていました。現場がきれいな会社は、仕事もきちんとしていると感じます。そこは非常に大きな安心材料でした。
また、細かい条件の話ばかりではなく、これからどんな未来をつくっていきたいかという話が自然にできたのも良かったですね。最初から方向性が合っている感覚がありました。

滝沢:私も非常に話しやすかったです。無理に何かを変えるという雰囲気ではなく、会社をどう伸ばしていくかという前向きな話が中心でした。そこが安心につながりましたね。

最終的にM&Aを決断した最大の決め手は何でしたか。

滝沢:いろいろな相手と面談してきましたが、話をしてみると、自分たちの考えと少し違うなと感じることもありました。大手住宅系の会社もありましたが、その競争の中に入っても当社らしい成長は難しいと感じましたし、別の成長分野の会社にも会いましたが、将来性を慎重に見極めた上で見送りました。

今回決めたのは、単に会社を引き継いでもらうのではなく、次の成長が具体的に見えたからです。時間をかけて探した分、本当に良い相手に出会えたと思っています。

谷町:僕自身、相手の会社を詳しく分析する前に、まず経営者同士で未来の話ができるかを大事にしています。あれもやりたい、これもやりたいと一方的に話すと、不安を与えてしまうこともあります。その点、高山さんとは自然に将来の方向性を共有できました。

長野県は観光地が多く、開発ニーズもある。そうした地域特性を踏まえると、地元に根ざした建設会社と一緒に成長していくことには大きな意味があります。高山様なら、その土台を一緒につくっていけると感じました。

社員の皆様には、どのように説明されたのでしょうか。

滝沢:もともと私は、会社のことをわりとざっくばらんに話すタイプなので、M&Aを検討していることも含めて社員にはある程度伝えていました。会社をさらに伸ばしていきたいという考えも共有していたので、話が決まった時も比較的スムーズに理解してもらえました。

谷町:成約後は、グループ側の責任者である谷中さん(繁星、高山双方の社長を務める谷中譲氏)が2週間ほど現地に残って、社員一人ひとりと面談を行いました。いきなり仕組みだけ入れるのではなく、まず人を理解することを大切にしたかったんです。現場の不安を減らしながら進めるPMIが重要だと考えています。

PMIで待遇改善と採用強化を進め、長野県トップ級の建設会社へ

成約後、現場で具体的に変わったことは何ですか。

滝沢康之氏
滝沢康之氏

滝沢:仕事の本質はこれまでと大きく変わっていませんが、白馬方面の案件対応を見据えて、管理体制や進め方の整備が進んでいます。経理や管理面は本社側でもしっかり見てもらっていますし、工事管理のシステム導入も進んでいます。今はまさに準備段階ですね。

谷町:人材面では、待遇改善をかなり重視しています。資格手当など、従来は十分でなかった部分を整え始めました。地方でも、実力や資格に見合った報酬をきちんと出すことが大切だと思っています。長野県内の建設会社の中でも、高い給与水準をめざしたいという思いがあります。待遇が改善されれば、地域に人が残るきっかけにもなるはずです。

今後の事業シナジーと成長イメージについて教えてください。

谷町:白馬では今後20年単位の構想があります。そうなると、建設機能の内製化は欠かせません。外部からの依頼も増えていますし、案件規模は今後さらに大きくなっていくと見ています。来期の契約高20億円超を視野に入れつつ、1~2年で体制整備を進め、3年目以降で良い循環に載せ、本格的な売上成長を見据えています。

滝沢:受注の考え方も大きく変わってきました。これまでの売上規模(5億円程度)からすると、かなり高い目標になりますが、現実味のある話として見えてきています。そのためには、施工管理人材を2〜3人増やすことや、外注先との連携強化が必要です。しっかり体制をつくれれば、大きく成長できると思います。

これからのビジョンを一言で表すと、どのようなものになりますか。

谷町:地域に根ざした強みを守りながら、より大きな市場に応えていける建設会社に育てていくことです。長野県のリゾート・観光開発需要にしっかり対応し、数年後には県内でも存在感のある会社にしたいですね。

滝沢:私は、会社が続いて、社員が安心して働けて、さらに伸びていくことが一番大事だと思っています。今回のM&Aは、そのための非常に良いスタートになったと感じています。

地方企業の経営者へのメッセージ

後継者不足や将来不安を抱える地方企業の経営者に、伝えたいことはありますか。

滝沢:今まで通りを続けるだけでは、厳しくなっていく会社も多いと思います。後継者がいない、人も集まりにくい、地域の需要も変わってきている。そういう中では、良い相手と組んで会社を次に進めることが、結果的に社員や地域を守ることにもつながると思います。

時間をかけてでも、自分たちの考えに合う相手を探すことが大切です。焦らずに、でも早めに動くことをおすすめしたいですね。

谷町様から見た、地方企業の可能性とは何でしょうか。

谷町:日本の地方には、まだまだ大きな可能性があります。特に観光や滞在価値を生み出せる地域は、国内外の需要を取り込める余地が大きい。大事なのは、地域の会社がその波にどう参加するかです。

必ずしも海外に出ることだけが国際化ではありません。日本国内にも、国際的な需要とつながる市場はあります。そうした機会を前向きに捉えられる会社には、まだまだ成長余地があると思います。

M&Aアドバイザーより一言

ストライク岡 和希

株式会社ストライク 法人戦略部 岡 和希

本件は、八十二長野銀行からのご紹介をきっかけにご相談を頂きました。
長野県の企業と大阪府の企業、地理的に距離のある企業同士のマッチングに、アドバイザーとして、我々の存在価値を大きく発揮できたと感じております。
日本の中小企業が国外からの観光のニーズに応えるべく、提携を行うこととなった本件が全国のオーナー社長の皆様に、選択肢を提供するきっかけとなりましたら大変嬉しく思います。
本件は進める過程の中で、お二人がそれぞれの思い描く未来について熱く語り合うお姿が大変印象的でした。
現在はまさに飛躍のための準備期間であると伺っております。思い描く未来の実現へ向けて、進み続けることを心より願っております。

公開日:2026年7月21日

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