INTERVIEW

「レーザーの技術」を未来へ。
事業承継M&Aが守った日本のものづくり

株式会社光響 取締役 CFO 松永 啓吾氏、ストライク前川

株式会社光響 取締役 CFO 松永 啓吾氏
京都中央信用金庫 常盤東支店 融資グループ 係長 二瀬 裕介氏
京都中央信用金庫 地域創生部 課長代理 髙矢 真伍氏

レーザー技術の専門商社でありメーカーでもある株式会社光響は、2024年、独自の「周波数安定化レーザー」技術を持つ日本マイクロ光器株式会社をM&Aによりグループに迎えた。後継者不在に悩む企業の技術を、いかにして守り、未来へ繋ぐのか。本件を主導した光響の松永啓吾CFO、そして両社を繋いだ京都中央信用金庫の二瀬裕介氏、髙矢真伍氏に、その舞台裏と技術承継型M&Aの意義について話を聞いた。

株式会社光響
ご成約インタビュー動画

レーザー技術で社会を豊かにする光響の挑戦

貴社の事業内容、特徴や強みを教えてください。

株式会社光響 取締役 CFO 松永 啓吾氏
株式会社光響 取締役 CFO 松永 啓吾氏

松永:光響は2009年に創業しまして、レーザー技術を軸に、製品開発、販売、そしてメディア運営までを一貫して行っている会社です。具体的な事業としては、多くの取り扱いメーカーを持つ商社事業ですとか、レーザー製品の自社開発・販売を行うメーカー事業を行っています。また、レーザーに関する動画学習サイトの運営といった、レーザー業界全体の発展を支える取り組みも行っているのが特徴です。
他に挙げられる私たちの特徴として、創業以来増収を続けており、堅実に事業を拡大してきたことが挙げられます。その成長を持続的なものにするために、2023年には東京プロマーケット市場への上場、そして今年、日本マイクロ光器とのM&A実現に至りました。「光・レーザー技術で社会を豊かに」という経営理念のもと、事業拡大を目指しています。

日本マイクロ光器が扱う「周波数安定化レーザー」とは、どのような技術なのでしょうか。

松永:一般的なレーザーは、温度ですとか湿度といった外部環境の影響によって周波数に揺らぎが生じます。一方、日本マイクロ光器が取り扱っている「周波数安定化レーザー」は、この揺らぎを極力抑え、特定の周波数に高い精度で固定化させたものです。日本マイクロ光器は、独自の光学設計やノウハウにより、信頼性の高い安定化レーザーを開発し、ニッチな市場ではあるんですけども、独自のポジションを確立しており、お客様から高い信頼を獲得しています。

「周波数安定化レーザー」は、どのような産業分野で活用されていますか。

松永:周波数安定化レーザーが活用される代表的な用途の一つに、「干渉計」というものがあります。日本マイクロ光器の周波数安定化レーザーを干渉計に使うことで、ナノメートル以下のレベルでの高精度な測定が可能になります。具体的な用途としては、例えば、半導体製造における高精度測定で利用されています。半導体は世代が進むほど高い精度が要求されますので、この安定化レーザーが測定器の中核部品となっているのです。

技術を途絶えさせない。金融機関が繋いだ運命の出会い

今回のM&Aを検討されたきっかけと経緯を教えてください。

京都中央信用金庫 常盤東支店 融資グループ 係長 二瀬 裕介氏
京都中央信用金庫 常盤東支店 融資グループ 係長 二瀬 裕介氏

松永:まず、光響と日本マイクロ光器が出会う前、それぞれの企業がどういった想いや課題を持っていたか、というところからお話しします。光響は、経営理念である「レーザー技術で社会を豊かにする」の実現のため、自社単独での成長だけでなく、M&Aも成長戦略の一つとして積極的に検討していました。一方、日本マイクロ光器は、周波数安定化レーザーをお客様に永続的に供給していくという使命を持ちながら、後継者不在という課題を抱えていました。
この両者の想いを結びつけてくれたのが、京都中央信用金庫さんとストライクさんです。光響が成長の糸口を探していたタイミングと、日本マイクロ光器が事業承継を模索していたタイミングが重なり、このご縁が生まれたのだと実感しています。そして、両社の「周波数安定化レーザーの技術を途絶えさせてはならない」という思いが噛み合い、M&A実現に向かっていきました。

二瀬:日本マイクロ光器様は後継者がおられない状況でした。私が外回りとして事務所の方に訪問させていただき、代表者のお二人と面談を重ねる中で、お取引先から長期の商品供給のご依頼があったと伺いました。面談の中で、代表者のお二人から「今後も供給責任をしっかり果たしていきたい」という強い思いを聞いておりましたので、事業承継が必要だと感じておりました。また、日本マイクロ光器様の高い技術をこの先にも残していく必要があると思いましたので、M&Aという手法をご提案させていただきました。

お相手に求める条件はどのようなことでしたか。

京都中央信用金庫 地域創生部 課長代理 髙矢 真伍氏
京都中央信用金庫 地域創生部 課長代理 髙矢 真伍氏

髙矢:同じ京都の企業であり、レーザー関連の事業を幅広く展開されている光響様は、東京プロマーケットに上場されていて経営基盤もしっかりされておられましたので、マッチング先として非常にふさわしいと感じました。また、同じ京都ということで、人の派遣だったり、人の交流という点でも非常にやりやすいのではないかと考えました。

なぜ、日本マイクロ光器の技術を「途絶えさせてはならない」と強く感じたのでしょうか。

松永:日本マイクロ光器の周波数安定化レーザーは、高精度計測機器の中核部品であり、容易に他では代替できない製品です。特に心に残っているのは、日本マイクロ光器のお客様が「5年先も10年先も、このレーザーを供給し続けてほしい」と望まれているという話を聞いた時です。お客様自身が、この技術が継続的に利用できることを前提に製品開発や設計を行っているのだと知りました。
その声を耳にしたとき、これは単なる一企業の事業承継にとどまらず、日本マイクロ光器の技術を必要とするお客様、さらにはその先の産業にも繋がっていることを実感しました。だからこそ、光響が責任を持ってこの技術を承継していく必要があると強く感じたのです。

シナジー創出と「暗黙知」の継承という挑戦

どのようなシナジーを見込んでのご決断だったのでしょうか。

松永:まず一つ目は、マーケティング・営業面でのシナジーです。日本マイクロ光器の製品は技術的に非常に優れているものの、これまで積極的にマーケティングや営業活動をしてこなかったので、「知る人ぞ知る製品」という側面がありました。そこに光響のWebマーケティングや営業力を活かすことで、製品をより多くのお客様に認知してもらい、従来届かなかった市場や顧客層へ製品を届けることが可能になると思っています。実際に、Web経由での問い合わせや新規のお客様との対話が増えており、効果が現れ始めていると実感しています。
もう一つは、サプライチェーンにおけるシナジーです。光響が持つ仕入先や販売先といった幅広いレーザー関連のネットワークを活用することで、品質やコストの最適化、新しいサプライチェーンの構築に繋がるのではないかと考えています。

買収を検討するにあたり、どのようなリスクや課題を想定されましたか。

松永:M&Aの実行に至るまでの財務面や法務面といったリスクは、デューデリジェンスなどでストライクさんが伴走してくれたことで、大きな懸念はありませんでした。一方で、より大きな課題だと感じていたのは、M&A後に本格化する技術承継の難しさでした。日本マイクロ光器には40年以上にわたり積み上げられてきた独自のノウハウがあり、それを引き継ぎ、再現可能な形にしていくこと。これはマニュアルでは表現しきれない「暗黙知」の承継であり、これが弊社にとって重要なテーマとなりました。
また、統合におけるシナジーも重要な論点となりました。統合の進め方次第では双方の強みを損なうリスクもありますので、日本マイクロ光器の伝統や強みを尊重しながら、光響の事業基盤とどう組み合わせていくかというのも重要なテーマでした。

M&Aが拓く、日本のものづくりの未来

CFOという立場を超え、戦略立案からPMIまで一貫して関与されたことで、どのような学びがありましたか。

松永:CFOとして一貫して携われたことで、多くの学びや気づきを得ることができたと本当に思っています。当初は光響の成長戦略の一環としてM&Aを検討してきましたが、実際に進める中で強く感じたのは、M&Aは単なる事業拡大の手段ではないということです。譲渡企業様の事業を承継するということは、その企業にとどまらず、その先にいるお客様、さらには広く産業全体にとっても大切な価値を守り、発展に繋がるのだと学ぶことができました。このようにM&Aには大きな意義があるという実感を得られたことは、大変貴重な経験です。
さらにもう一点痛感したのは、M&Aの本当の難しさはクロージング後にやって来るということです。技術をどう承継し、どうやってシナジーを実現するか。これは数字や契約書に現れない、人と人との信頼関係の中で実現されるものであり、「人間力」が試されるフェーズなのだと日々実感しています。

日本の製造業全体で「事業承継」が大きな課題となっていますが、この課題をどのように認識していますか。

松永:事業承継は、日本の製造業全体が直面している大きなテーマだと思っています。特に長年積み上げてきた技術やノウハウは、一度途絶えてしまえば再現が難しく、社会全体にとっても大きな損失になります。光響はレーザー分野において、事業や技術を未来につなぐ役割を果たしていきたいと考えていますが、同じような取り組みが他の業界でも進み、事業承継の事例が広がれば、日本全体の競争力維持や強化に繋がると確信しています。

二瀬:当金庫とお取引いただいているお客様につきましても、今後、事業承継の課題を抱える企業様が増えてくると考えております。その中で、製造業を営んでおられる企業様につきましては、やはり社長様の属人的な技術、この技術をどう引き継いでいくのかというところが今後の課題になってくるのかなと思います。専門性が高ければ高いほど、技術の承継に時間がかかると思いますので、当金庫としましても、お早めに事業承継に取り組んでいただくようご提案させていただいております。

今後、M&Aを検討される経営者の方にメッセージをお願いします。

髙矢:私たちは、地域に根差す金融機関として、お客様の事業に長く寄り添うことを大切にしています。事業承継は、経営者様にとって一生に一度の大きな決断です。だからこそ、私たちはその想いをしっかりと受け止め、最適な形で次世代へバトンを渡せるよう、全力でサポートしていきたいと考えております。

松永:こうした動きを活性化させていくためには、金融機関の存在が非常に重要だと感じています。事業承継の課題を抱える企業と、それを引き継ぐ企業とを繋ぐことができる金融機関の役割は、今後ますます重要になってくるでしょう。最後に、今回の事例が、事業承継を検討されている企業にとって一つの参考事例となり、同じ課題に直面する企業や経営者の皆様にとって少しでもヒントになれば、大変うれしく思います。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(前川 泰毅・法人戦略部 シニアアドバイザー談)

ストライク前川 泰毅

本件のような技術承継型のM&Aは、いわゆる「暗黙知」の承継が伴うため難易度が高いですが、当社の強みである質の高い仲介サービスを存分に発揮できる形でもあります。今回、光響様は日本マイクロ光器様の技術と歴史を、日本マイクロ光器様は光響様の熱意とポジティブな姿勢を、互いにリスペクトし、素直に言葉にして伝え合っていたことが、成功の大きな要因だと感じています。日本のものづくりは非常にレベルが高い一方で、事業継続の観点では課題も少なくありません。ストライクのミッションである「世界を変える仲間をつくる。」を愚直にやり抜き、本件のような貴重な技術を後世に伝えるサポートを、これからも一生懸命やっていきたいと考えています。

2026年1月公開

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