INTERVIEW

徳島県から四国全域へ!
JR四国グループとなった建設コンサルタント会社が描く未来図とは

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株式会社基礎建設コンサルタント 代表取締役 中木 一文氏

株式会社基礎建設コンサルタント 代表取締役 中木 一文 氏

徳島県を拠点に「ともに創ろう、地球の未来を!」を理念に掲げ、建設コンサルタント事業を展開してきた株式会社基礎建設コンサルタント(徳島県徳島市)は長年培ってきた技術力と地域からの信頼を基盤に、県内のインフラ整備に貢献してきた。
この度、同社はJR四国グループの一員となり、新たなスタートを切ることになった。徳島県だけでなく、四国全域へと事業規模を拡大させたいと語る同社の代表取締役 中木一文氏にJR四国グループとなったことで期待する事業展開やシナジーについて伺った。

地域密着企業が挑む新たなステージ
お相手先に望んだのは「従業員ファースト」

御社の事業内容や強みについて教えてください。

スパッド台船
主に海洋工事で活躍するスパッド台船。
徳島県内で保有しているのは基礎建設コンサルタント社のみ。

当社は徳島県を中心に建設コンサルタントを主軸に地質調査やインフラの設計などを行っています。売上の割合は建設コンサルタントが約三分の二、それに付随する地質調査や測量関係が約三分の一を占めています。徳島県からの発注が90%以上を占めており、その他に徳島市や民間企業からの発注も請け負っています。

地質調査関係では「スパット台船」という主に海洋工事や水上作業で使用される特殊な作業用の台船を所有しています。徳島県内で所有しているのは当社のみで、港湾関係に強いのが特徴です。現在は能登半島地震の復興事業の一環で地質調査に出ており、国交省から令和6年能登半島地震災害対応功労者として感謝状をいただきました。

いつ頃からM&Aを検討されましたか? その際に重視されたポイントはありましたか?

事業承継は3~4年ほど前から検討していました。社内に後継者候補はいましたが、株式まで引き継ぐのが難しいという状況でした。
譲渡先へ希望したことですが、まずは当社の状況を理解してくださる企業、という点です。基礎建設コンサルタントとしての自主性を尊重し、これまでの経営方針を継続できることは大事なポイントでした。また、当社の優秀な社員を活かし、社員ファーストで物事を決めていくことができるというのも重要でした。その上で、当社が目標としていた徳島以外の3県(香川県、愛媛県、高知県)にも進出していける成長性も重視しました。ストライクに相談したところ、お相手としてJR四国さんのお名前が挙がりました。JR四国さんは知名度・安定性が高い企業ですし、当社の自主性を尊重するという姿勢で常に接してくださいました。株式の問題を解決できるという点も含め、JR四国さんとのお話を進めようと思いました。

JR四国様のどのようなところが魅力的でしたか?

JR四国さんも当社も、公共インフラに密接に関わっているという部分で親和性を感じました。面談の際にJR四国社長の四之宮和幸様が来社されましたが、誠実でスマートな方だと感じました。お話する中で当社の自主性を重んじ、「任せる経営」という姿勢を示してくださいました。その上で足りないリソースは相談してくださいと仰ってくださいました。経営を任せていただけるというのは私の希望に合致しましたし、その他のJR四国の幹部の方も皆さん誠実で包容力のある方々で、是非ご一緒したいと思いました。

JR四国グループとなったことで徳島県から四国全域への進出を目指す

お話を進めていく中でご苦労された点について教えてください。

デューデリジェンスに必要な資料を集めることが大変でしたね。他の社員に事情を明かせない中で、妻と共に休日返上で資料の準備をしました。
デューデリジェンス自体はそれほど日数をかけずに終えることができたのですが、社員に知られないように資料を揃えるのは大変でした。

M&A後の協業体制について期待していることは何でしょうか。

港湾
JR四国グループとなったことで、今後は四国全域や港湾関係への進出を目指すという。

JR四国傘下である四国開発建設と協力して、設計部門は当社が担い、工事は四国開発建設が担当するといったグループ内企業での横の連携を図っていきたいです。
JR四国管内のレールは全長で約854kmあるのですが、その中の橋梁やトンネル、法面の点検業務などを当社でお手伝いできるのでは、と考えています。この辺りは当社が官公庁から請け負ってきた地質調査や橋梁の点検といった経験が活かせる分野だと思います。

今後の事業展開や構想について思い描いていることを教えてください。

譲渡にあたり、徳島だけでなく、四国全域に事業展開していきたいという想いがありましたので、まずは四国4県に事務所を作っていければと考えています。
建設コンサルタントとういのは官公庁の受注頼りになる部分が多く、首長が変わると予算の配分が変わるので、どうしてもその影響を受けてしまうのですが、JR四国グループの一員となったことで、その影響を軽減できると期待しています。
これからは徳島だけでなく、四国全域へ展開していきたいという希望がありますが、その中でも高知や愛媛といった港湾部での業務にも注力していきたいですね。

その他にJR四国グループになったことで期待していることはありますか?

事業展開として期待していることに四国全域や港湾関係への進出を挙げましたが、そのための人材が不足しているのでリクルート活動にも注力していきたいですね。2026年には複数名の新卒採用を目指していますが、JR四国グループの一員であるというネームバリューを活かした採用活動を行いたいです。
当社では技術者の育成に力を入れていますが、建設コンサルタント業というのは現場での業務経験を何年か積まないと取得できない資格もあります。
今後は若い人を採用して自社で教育し、現場で活躍できる人材を育成できるような体制を構築していきたいですね。

周囲や社内からは大きな反響が
従業員の不安払しょくのためにも恒例行事は続けていきたい

JR四国グループになったことでどのような反響がありましたか?

株式会社基礎建設コンサルタント 代表取締役 中木 一文氏
今回、お話を伺った中木 一文社長。
譲渡にあたって何よりも従業員の雇用維持を強く希望された。

JR四国グループになったことを発表した際、これまでお付き合いのあった取引先からこれまで同様に仕事を引き受けてもらえるのか、という問い合わせをたくさんいただきました。これはありがたいことだと思いましたね。それだけ当社を必要としてくださっていたのだな、と。徳島県とのお付き合いに関しても敷居が低くなったように感じます。

社員の皆様は今回のM&Aをどのように受け止めていらっしゃいますか?

社員からも非常に反響が大きかったです。私は引き続き社長として社内に残りますが、給与面や処遇を含め、会社がどのように変化してくのか不安に感じている人も多いと思います。
熱心な社員の中にはJR四国グループとなったことでモチベーションが上がっているものもいますが、今はまだ不安を抱えている割合の方が多い印象です。
そういった社員の不安を払拭するためにも、これまで当社で行ってきた社内行事は変わらずに続けたいですね。毎年、当社の創立記念日には記念品としてお菓子などを配っているのですが、今年も実施する予定ですし、恒例の研修旅行も変わらず続けたいと思っています。

ストライクの担当者についてのご感想はいかがですか?

株式会社基礎建設コンサルタント 代表取締役 中木 一文氏、ストライク山口
基礎建設コンサルタント社にて。
(写真右はストライク担当の山口)

担当の山口さんにはJR四国さんという素晴らしいお相手先をご紹介いただき、本当によくやっていただいたと思います。
真面目で誠意のある対応をしてくださって、今回の山口さんの対応に私としては二重丸をあげたいですよ(笑)

無事にご成約となった今のご心境についてお聞かせください。

肩の荷が軽くなったというのが一番です。何十年と背負ってきた責任を軽くすることができたのは非常に大きいです。当社は私の妻と二人三脚で続けてきた会社なので、これまでずっと一緒に働いてくれた妻をゆっくりさせてあげたいという想いもありました。
今後の事を相談する相手を得られたということも心強いです。先ほども申し上げたように、当社は私と妻の二人で続けてきた会社なので、何かあっても社員に相談できないという場面がありました。今回のM&AでJR四国さんという心強いパートナーを得ることができ、そういった心理的な負担が軽くなったことは非常に大きいですね。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(山口 聡士・コンサルティング部 シニアアドバイザー談)

ストライク山口 聡士

基礎建設コンサルタント様は、徳島県に本社を構え、建設コンサルタント・地質調査・測量を中心とした事業経営をされており、特に港湾周辺の事業に強みを持つ会社になります。後継者不在という状況下で、自慢の社員の将来を守ってあげたいとの中木社長の強いご意向で、M&Aのお相手探しをスタートいたしました。進めていく過程の中で幾つかのハードルはありましたが、お互いの企業理念と経営スタイルの共有に十分に時間を掛けたことで、無事に成約に至ったものだと考えております。
また、創業当時から経理・総務全般を任せ、仕事中心の生活として負担を掛けていた奥様を早く楽にさせてあげたいという、もう一つの中木社長の願いも叶えることができて良かったです。
M&Aにて新たなスタートを切った基礎建設コンサルタント様の更なる発展を祈念しております。

2025年2月公開

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