ご成約インタビュー No.110
INTERVIEW
7つの歯科医院を運営する医療法人
後継者問題を解決するための事業承継で、
歯科と医科の連携という新たなステージへ
- #後継者不在
- #創業者
- #地方創生
- #セカンドライフ
- #介護・医療

東風会グループ(医療法人社団東風会、医療法人はやしま歯科)
理事長 守屋 啓吾 氏
元理事 守屋 久美 氏 ご夫妻
岡山県内7カ所で歯科医院を運営する東風会グループは2024年8月、後継者問題を解決する目的で、株式会社地域ヘルスケア連携基盤(CHCP)の経営支援を受けることを決めた。CHCPは地域の歯科医院や病院、調剤薬局などの連携を強化させることによって「新たな地域包括ケアモデル」の創出を目指しており、東風会グループの参加は地域医療のさらなる拡充を期待させる。岡山県倉敷市に1988年に歯科医院を開業して以来、地域社会の歯科医療の担い手を務めてきた東風会グループ理事長、守屋啓吾氏と、経理や労務を担当した元理事で奥様の久美氏に、経営支援を受ける決断に至った経緯や思いをうかがった。
岡山県で開業し36年
予防歯科で地域に貢献
開院の経緯を教えてください。
啓吾氏:もともと手先が器用だったので、「歯科医に向いているかな」と考えて大阪大学歯学部に進学しました。卒業して、かぶせ物やインプラントなどを専門に扱う補綴(ほてつ)科で勤務した後、川崎医科大学の口腔外科で研修を受けました。倉敷市で守屋歯科医院を開業したのは卒業4年目です。早く開業したいと思っていましたので。
歯科医院の最大の特徴は何でしょうか。

啓吾氏:予防歯科に力を入れていることです。
私たちは治療として、歯を削って型取りをし、かぶせを入れます。「ちゃんと噛(か)めるようになりました」となります。けれども、そこで終わりではなく、実はそこがスタート。人によっては歯周病や虫歯が原因で5~10年でかぶせがダメになってしまうので、予防が大切なんです。
私はさらに考えを発展させて、人々が自らの健康をコントロールして改善できるようにする「ヘルスプロモーション」のお手伝いをする、という考え方をベースにしています。グループの医師などスタッフにもこの考え方を言い続けています。
事業承継を検討するようになった経緯を教えてください。
啓吾氏:1995年に最初の分院を開設し、数年ごとに1カ所ずつ増やして計7カ所に展開することができました。ただ、2~3年前から「今後はどうなっていくんだろう」と考えるようになったんです。医療法人の理事長は「医師または歯科医師」と決まっていて、息子2人は医師でも歯科医師でもないため継ぐことができません。
各分院長に「引き継いでくれないか」という話をしたものの、まとめて引き継いでくれる人はいませんでした。そこで、第三者に引き継いでもらうという選択肢が残りました。
久美氏:承継を考えるようになったのは、歯科医が退職した後に誰かを雇おうとしても雇えなくなってきたという事情もあります。守屋歯科医院は3年前に分院長が退職し、その後は新たな分院長が見つかっていません。
啓吾氏:そのため、セミリタイアしていた私がフルタイムで診療を担当していますが、1週間朝から晩まで働くのは厳しいですね。
久美氏:そんな時にストライクさんから電話があり、「話だけでも聞いてみようかな」という軽い気持ちで担当者の方とお会いしました。日々、事業承継を勧めるダイレクトメールが山ほど届いていて、「事業承継を考えなきゃな」と思うようになっていたんです。
グループを高く評価してもらい決断
歯科医師を確保してきた実績も決め手に
CHCPさんをお相手に選んだ決め手は何だったんでしょう。
久美氏:お相手の候補が何社か示されて、そこから絞って面談しました。お会いする時には、納得のいく条件ならば経営支援を受けようと考えていました。
私たちがすごく気になっていたのは、歯科医師を確保する力があるかどうか、でした。経営支援を受ける上での最大の条件は今の従業員を守ってもらうことです。そのためには、働いてくれる歯科医師を確保して、歯科医院を続けられなければなりません。地方は特に歯科医師不足で、周りの歯科医院はどこも苦労しています。いただいた資料の中に、他の地方都市で歯科医師を雇った実績のグラフがあり、それが決め手の一つとなりました。
啓吾氏:私たちのグループを高く評価してくださったのがCHCPさんでした。
また、CHCPさんは歯科と医科の連携を目指しています。この考えに共感したことも決め手となりました。
例えば、インプラントの手術をすることになった患者さんが糖尿病を患っていて、治療を受けていなかった場合、まずは医師の治療を受けることが正しい順番です。糖尿病の方は手術後の傷の治りが悪いんです。
このように、歯科と医科は密に連携していかなければならないということはみなさん感じていると思うんですよね。けれども、連携はほとんどできていないんです。連携を進めていくような組織から経営支援を受けることができるならば、素晴らしいと考えました。
成約までに大変だったことは何でしょうか
久美氏:CHCPさんからさまざまな資料をお願いされたのですが、すぐに出ないものが多くて大変でした。なくても今まで困らなかったものですから。
ストライクの担当の方が優しくフォローしてくださったので、頑張れました。
啓吾氏:大変な部分は妻がやってくれましたので私は診療に集中できました。
分院長などのスタッフに、事業の承継をどのように伝えましたか?

啓吾氏:相手を1社に絞った段階で、事務長には話をしていました。
久美氏:成約前に伝えるのは珍しいパターンのようです。成約前に話が漏れてしまうと、不安になって退職する職員が現れたり、反対を主張する人がいたりすると聞いていました。
ただ、経営支援の話が進んでいる時は大きな決済をこちらの都合でできませんでした。何か大きなものを買ってほしいと言われてもすぐには答えられないことが増えてきて、分院長たちが「おかしいぞ」と思い始めるかな、というタイミングで「キーマンとなる分院長には話しておこう」と決断しました。他の分院長にも、「あとは成約するだけ」という段階で話しました。
分院長やスタッフの反応はいかがでしたか?
啓吾氏:すんなりと受け入れてくれたので、話してよかったと思います。
久美氏:受け入れてくれたのは、経営が積極的ではなくなってきていたためだと思います。グループの後継者が決まっていない状況では大きな借入はできません。そのために夢を語れなくなってきていました。
分院長の先生たちも承継の話を聞いて、「次が決まれば、また攻めの経営に転換できる」と考え、未来が明るくなったのでしょう。前向きに捉えてもらえたのだと思います。
啓吾氏:持続的に発展するためには投資していかなきゃいけませんが、確かに消極的になっていましたね。
院長職を引き継ぎ、働き方を変えたい
医科と歯科の連携強化に期待
成約後、どのような変化がありましたか?
啓吾氏:今まで後回しにしていたDXを導入する予定です。
久美氏:診療用のチェアも古くなってきているので、入れ替えの話が進んでいます。ライトやルーペなどの備品も購入していいということになり、スタッフは喜んでいると思いますよ。
経営支援を受けてよかったと感じていますか?

「CHCPさんの経営支援を受け、肩の荷が下りて楽になりました」という。
久美氏:肩の荷が下りて、楽になりました。理事長は約10年前に病気を患い、趣味のトライアスロンでケガもします。将来のことを考えると、理事長がケガしたらどうしよう、病気になったらどうしよう、と不安を感じていたんです。そういう思いから解放されました。
啓吾氏:私にもそういう気持ちが一部ありますが、守屋歯科医院の院長を引き継いでもらえる歯科医師の派遣はこれからです。私は今、60代半ばですが、70歳ぐらいまで働こうと思っています。2年後には他の人に仕事を引き継いでセミリタイアし、週2回だけ治療するとか、手術だけ実施するというように働き方を変えたいですね。今後のめどがついたという状況です。
セミリタイアできたら、何がしたいですか?
啓吾氏:旅行に行きたいですね。今でもハワイやヨーロッパ、カナダなどに行っていますが、その間は医院を休みにしなければなりません。最長でも1週間が限度です。患者さんに影響しますし、スタッフのお給料も減ってしまいます。私自身、後ろめたい気持ちもあります。
CHCPさんと東風会グループとの協業にはどのような期待を寄せていますか?
啓吾氏:岡山県内にCHCPグループの医科や薬科がもっと増えれば、お互いにやりやすくなると期待しています。先ほど、インプラントの患者さんで糖尿病を患っている方の例を話しましたが、そのようなケースがあれば積極的に医科につなげていけます。歯科と医科の連携強化に期待しています。
ストライクのサービスや担当者はいかがでしたか

啓吾氏:柔らかく、きめ細かく対応していただきました。事業承継に至るプロセスは基本的に煩雑なことが多いじゃないですか。私だったら投げ出したくなるようなことを、きっちり最後までフォローしてくれました。
久美氏:やらないといけないことがいっぱいあって、メモしたのに忘れてしまうことがありました。
でも「大丈夫ですよ。後でメールで送っておきますから」と優しく対応していただきました。
「事業承継したい」と考えている方がいたら、ストライクさんをご紹介したいと心から思います。
実は、銀行にも事業承継の提案をいただいたことがあります。ただ、パートナー先の候補のリストを見ても、「ここと一緒になるイメージがつかないなぁ」と感じ、お願いする気にはなりませんでした。
啓吾氏:ストライクさんは全国展開をしているので、希望に添う候補を全国規模で挙げていただけました。
歯科医院の後継者に悩んでいる方は多いと思います。アドバイスをいただけないでしょうか。
啓吾氏:確かに、同じ悩みを抱えている方は結構いるでしょうね。
患者さんやスタッフにとっては医院が継続することが一番の幸せだと思うので、誰かに引き継ぐのが一番いいです。親族に引き継げなければ、第三者に承継するのもいいと思います。
承継するならば、元気なうちに決めた方がいいですね。今は元気なつもりでも、いつ何が起きるか分かりません。私も健康には自信があったのですが、突然病気になりました。
久美氏:事業承継は判断力や体力が必要です。少しでも事業承継の可能性を考えているのでしたら、自分たちが作り上げてきたものがどれくらいの価値になるのか、話だけでも聞いてみるのがいいと思います。
私たちも、実際にストライクさんの担当の方とお会いして、「今後の話ができるな」ということが分かったので次の段階に進みました。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(土島 隆太・コンサルティング部 アドバイザー談)

東風会グループ様は、開業して36年の岡山県倉敷市を中心に7つの歯科医院を運営するグループです。
本件は、守屋理事長の後継者不在を理由にご相談をいただきました。
いきなり辞める訳にはいかないため、自分たちが元気なうちに医院の承継問題を解決し、また守屋理事長と理事である奥様が年齢を重ねられていくにつれて、経営面で積極的ではなくなってきたこともあり、今後のグループの成長のためにも承継問題の解決は必要だと考えていただくことになりました。
CHCP様が人的支援などの経営支援を行い、医療と経営を分離することで、
各院が医療に集中できる環境を創出できることも決め手のひとつになったかと思います。
人的なリソースが限られている地域医療を守っていくためにも、第三者の経営支援を活用することが今後増えていくと考えます。
今後も両法人のさらなる発展・成長を願っております。
2025年2月公開
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