INTERVIEW

医療介護の未来を拓く戦略的統合
地域に根差した包括ケアの実現へ

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有限会社アクティブライフ旭川(現:有限会社ウェルフォース) 取締役事務長 田中稔洋氏, 株式会社ウェルフォース 代表取締役 桶川和則氏, 株式会社日本創生投資 ディレクター 牧大誠氏, ストライク福留

有限会社アクティブライフ旭川 取締役事務長 田中 稔洋 氏
株式会社ウェルフォース 代表取締役 桶川 和則 氏
株式会社日本創生投資 ディレクター 牧 大誠 氏

北海道旭川市の介護施設運営会社有限会社アクティブライフ旭川(現:有限会社ウェルフォース)が、医療対応型老人ホームを主力とする株式会社ウェルフォースの傘下に入った。この統合は、有限会社アクティブライフ旭川の元社長田中氏が直面していた後継者問題を解決するための決断だった。一方、譲受側の株式会社ウェルフォースは、資本提携先である株式会社日本創生投資からのサポートも受けながら、M&Aを通じた企業価値向上を目指し、譲り受けを決意した。介護事業という共通の事業基盤を持つ両社の統合による相乗効果や今後の展望について、有限会社アクティブライフ旭川取締役事務長の田中氏、株式会社ウェルフォース代表取締役桶川氏、そして本件の窓口であった株式会社日本創生投資ディレクターの牧氏に、統合に至る経緯や将来の展望についてお話を伺った。

将来を見据えた情報収集が事業承継の課題を解決

事業内容や事業の特徴を教えてください。

多機能ケアセンターさざなみ緑町館
旭川市にある「多機能ケアセンターさざなみ緑町館」

田中:有限会社アクティブライフ旭川(現:有限会社ウェルフォース)は、旭川において、介護施設の施設運営を主な事業として展開してまいりました。私が社長に就任してからおよそ4年半が経ちますが、その間、複数の小規模施設の運営に携わってきました。当社の経営理念として、豊かな自然環境に恵まれた立地を活かし、ご利用者の皆様が穏やかで心安らぐ老後を過ごしていただける施設づくりを最優先に取り組んでまいりました。

牧:株式会社日本創生投資は、中小企業を対象とした投資事業を展開する企業です。事業承継、事業再生に関するバイアウト投資、グロース投資を中心に、製造業、建築業、飲食・食品関連事業、コンシューマ-領域の事業まで、業種問わず幅広い分野で投資活動を行っています。当社の特徴は、画一的な投資手法にこだわらず、各投資先企業が抱える固有の課題に深く寄り添い、企業の成長を本質的な面からサポートする点にあります。投資先のビジネスや業務内容を深く理解し、一社一社に対して丁寧なハンズオン支援を提供することで、真の企業価値向上を実現しています。

桶川:株式会社ウェルフォースは、東京都葛飾区に本社を置き、医療対応型の老人ホームを中心とした介護サービス事業を展開しております。事業エリアは、東京を拠点としながら、岡山や旭川へと事業承継を通じて全国的に拡大しています。当社の最大の特徴は、軽度から重度の要介護者まで、幅広い介護ニーズに対応できる総合的なケアサービスを提供していることです。特に、医療ケアが必要な方への対応が可能な施設が少ない中、当社ではそのような方々もしっかりと受け入れ、住み慣れた地域での生活を継続的にサポートできる体制を整えています。これにより、地域社会において重要な役割を果たし、ご利用者様とそのご家族に安心を提供することができています。

M&Aのきっかけを教えてください。

田中:私が会社を引き継いだ当初は会社の譲渡については全く考えていませんでした。その後、M&Aに関する提案を受ける機会があり、当時は事業も順調に推移していたものの、後継者がいなかったことから、将来を見据えて情報収集という形で話を聞かせていただくことにしました。その後、徐々に業績が悪化し、会社としても転換期を迎えたことから、M&Aについてより具体的に検討するようになり、積極的に協議を進めるようになりました。

牧:当社は、ウェルフォース社へのグロース投資を通じて、同社のIPO準備支援や企業価値向上のためのM&A支援を行ってまいりました。ウェルフォース社は、今回の旭川の案件を含めて計2件のM&Aを実施しています。最初の案件は2024年1月に岡山県で実施し、その後、ウェルフォースが持つノウハウの注入やホスピス機能の強化に注力しました。岡山の施設が順調に軌道に乗り始めたことで、全国展開戦略の一環としてM&Aを積極的に活用する方針が固まりました。これを受けて、ストライクさんに全国のサービス付き高齢者住宅や有料老人ホームを運営する企業の譲受に関するご相談をさせていただいたのがきっかけです。

桶川:当初は、本社がある葛飾を中心とした城東エリアでの事業展開のみを想定していました。しかし、日本創生投資様からの投資を受け、IPOを目指す過程で、城東エリアだけでの展開では成長に限界があるとのアドバイスをいただき、エリア拡大の必要性を認識しました。地方展開については当初は不安を感じていましたが、岡山の施設は予想を超えて好調な結果となりました。わずか半年で大幅な稼働率改善を達成し、経営が安定化しただけでなく、職員のモチベーションも大きく向上し、施設の成長に成功しました。この成功体験が大きな自信となり、今回の新たなM&A案件への取り組みを決断するに至りました。

どのようなシナジーを見込んでのご決断でしたか?

株式会社ウェルフォース 代表取締役 桶川和則氏
「地域全体の医療介護エコシステムの発展に貢献していきたい」と話す
株式会社ウェルフォース 代表取締役 桶川和則氏

桶川:有限会社アクティブライフ旭川さんの施設は、医療ケアという重度ケアの受け入れをされていませんでした。そこで、当社の強みとなる医療ケアの部分が付加価値になると期待できました。

経営理念が深く共鳴~職員が生き生きと働ける環境づくりが不可欠

トップ面談の印象を教えてください。

田中:どのような事業を展開されていて、今後どうしたいかなど、非常にわかりやすくお話をいただきました。旭川で医療の部分まで取り入れている施設がなかったので、新しい発見でしたし、なかなか面白く興味が湧きました。

桶川:田中社長との出会いで、その誠実なお人柄に感銘を受けましたが、特に印象的だったのは経営理念の共通性でした。当社は「法人は職員を大切に、職員はお客様を大切に」という理念のもと、職員を最重要な財産と考えています。介護サービスは人と人との関わりが価値を生む事業であり、職員が生き生きと働ける環境づくりが不可欠です。この経営理念に対する考え方が、田中社長と深く共鳴しました。

具体的な協業内容について教えてください。

桶川:医療への転換が一番のポイントです。駐在スタッフもしっかり派遣できておりますので、より質の高いサービスを入居者様に届けていきたいです。

牧:その他は、グループ全社的な管理業務の共通化やDXによる経営効率改善、そしてグループ内でのナレッジ共有や人的資源の交流等による双方向の成長促進が上げられると思います。今後もM&Aを通じてグループインいただく会社様が増えたり、新規地域での施設展開が進んでいったりする中で、それぞれの施設・会社がもつ強みや独自のノウハウ、成功体験などが、グループ内で数多く蓄積されていくと思います。そういったナレッジや人材含む経営資源等、お互いの良いところグループ内で持ち寄って循環させていくことが、「1+1=2」以上となる、グループ・施設間の相乗的な発展、成長を実現していくことにつながると思っています。

施設での医療ケアニーズに応える

10年後、どういった場所にしたいですか?

有限会社アクティブライフ旭川(現:有限会社ウェルフォース) 取締役事務長 田中稔洋氏
「医療面のサポートが加わることで、今までよりも入居者の方が最後まで安心して暮らせる場所にしたい」と話す
有限会社アクティブライフ旭川(現:有限会社ウェルフォース) 取締役事務長 田中稔洋氏

田中:入居者の方に最後まで安心して生活をしていただけるよう運用してきましたが、そこに医療面のサポートが加わることで、より最後までサポートできる場所にしたいです。

桶川:旭川市とその周辺地域において、医療ケア対応可能な施設へのニーズが高まっています。当社は新規施設の開設やM&Aを通じて地域展開を進め、旭川市のリーディングカンパニーを目指しています。特に、終末期医療を必要とする方々への包括的な医療介護ケアの提供を重視し、地域の病院や介護事業者との連携を強化することで、地域全体の医療介護エコシステムの発展に貢献していきたいと考えています。

ストライクのサービスや担当者いかがでしたか。

田中:最初からとても丁寧に様々対応していただいて、感謝しております。

牧:ストライクさんへの相談から1年も経たないうちにM&Aが成約に至ったのは、優れたマッチング能力によるものと考えています。中小企業同士のM&Aには多くの課題や難しさも伴いますが、豊富な経験を持つ福留さんの先見性と細やかなサポートにより、スムーズに案件を進めることができました。

桶川:フットワークもすごく軽く、バランスをとっていただける点が非常に魅力的でした。田中社長と私の間に入りながらお互いの主張や大切にしたいこと、条件面の調整などお互いの視点に立ちながら、本質的な部分をご理解いただきながらスムーズにお話を進めていただけました。

M&Aのメリットや今後の戦略を教えてください。

株式会社日本創生投資 ディレクター 牧大誠氏
「M&Aは時間を買う意味合いがあり、非連続的な成長を実現できる手段だ」と話す
株式会社日本創生投資 ディレクター 牧大誠氏

牧:ウェルフォースの成長戦略として、新規施設の開設(オーガニック成長)とM&Aによる施設取得の二つの手法を並行して進めています。M&Aは、既存の人材やネットワーク、入居者基盤を活用できる点で、時間を買う意味合いがあり、非連続的な成長を実現できる手段です。特に、当社の強みである医療ケア対応施設への転換により、既存の賃料・介護保険収入等に加えて医療保険収入の獲得も見込めるため、1居室あたりの売上単価を大幅に改善し、収益性改善を図れます。今後は、当社のノウハウと経験を活かせるM&Aを検討し、地域の医療介護ケアにおけるエコシステムの発展、従業員の待遇改善、そして企業としての成長を同時に実現していきたいと考えています。

介護業界のM&Aの意義についてどのようにお考えですか。

桶川:現在の介護業界は大きく二極化しており、成長を続ける事業者がある一方で、人材不足や介護保険報酬の問題で苦戦する事業者も多く存在します。当社の強みは、医療ケアの提供による収益改善にあり、そのためには看護師チームの形成が重要なポイントとなっています。特に、当社の特徴は介護職と看護職の距離が非常に近く、円滑なコミュニケーションが図れる職場環境を実現していることです。医療ケア導入に対する介護職員の不安に対しては、経験豊富な看護スタッフによるOJTや教育研修を通じて、医療知識・技術の習得をサポートする体制を整えています。このような体制があるからこそ、事業承継後の医療ケア導入もスムーズに進められると確信しています。

今後M&Aを検討される方へメッセージをお願いします。

有限会社アクティブライフ旭川(現:有限会社ウェルフォース) 取締役事務長 田中稔洋氏, 株式会社ウェルフォース 代表取締役 桶川和則氏, 株式会社日本創生投資 ディレクター 牧大誠氏, ストライク福留
お話を伺った皆様とストライク本社にて
左から
有限会社アクティブライフ旭川(現:有限会社ウェルフォース) 取締役事務長 田中稔洋氏
株式会社ウェルフォース 代表取締役 桶川和則氏
株式会社日本創生投資 ディレクター 牧大誠氏
ストライクの福留佳宏

田中:私自身、M&Aの知識がない状態からのスタートでしたが、良いパートナーと出会えた際には、積極的に検討を進めることをお勧めします。事業承継で悩まれている経営者の方々にとって、M&Aは有効な選択肢の一つとなり得ますので、ぜひ前向きに検討していただきたいと考えています。

牧:企業オーナーや経営者の方々は、後継者不足や経営課題、さらなる成長への展望など、様々な課題を抱えていらっしゃいます。M&Aは時にネガティブな印象を持たれがちですが、これらの課題を解決し、企業を発展させていくための前向きな選択肢の一つとして捉えていただきたいと考えています。ストライク社は、それぞれの企業のニーズに合った最適なパートナーとのマッチングを実現できる存在ですので、まずはご相談いただくことをお勧めいたします。

桶川:M&Aは企業の成長における前向きな選択肢の一つです。今回の旭川の事業承継では、両社の強みを活かした協業により、さらなる発展と永続的な成長への道が開かれました。この統合は両社にとって新たな成長エンジンとなり、より大きな価値創造のきっかけとなっています。企業の更なる発展を目指す手段として、M&Aは有効な選択肢の一つとしてご検討いただければと思います。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(福留 佳宏・北海道営業部 アドバイザー談)

ストライク福留 佳宏

アクティブライフ旭川様は北海道旭川エリアで質の高いサービスを提供する介護・福祉事業を手掛ける企業様です。弊社にご相談をいただく以前は社内承継を実施されましたが、今後の成長と発展を考えた際にM&Aで譲渡をする決断に至りました。高齢化が進んでいる旭川エリアでは非常に重要なサービスを供給している一方で、同業者の数も多く他社との差別化を図ることが難しいとの事業課題をお聞きしておりました。そのような中でウェルフォース様とのM&Aが実現できたことは、企業の成長発展と後継者問題の2つを解決する一助になったと感じております。両社の更なる発展を祈念するとともに、今後はM&Aを通じてウェルフォースグループの発展に寄与できるよう精一杯努めて参ります。

2025年2月公開

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