INTERVIEW

地域経済をリードする老舗卸売企業
地銀とM&A仲介業者の強力タッグで
大手商社とのM&Aを実現

  • #後継者不在
  • #成長加速
  • #老舗
  • #商社・卸・代理店
信防エディックスの今井氏、八十二銀行の原山氏

株式会社信防エディックス 取締役会長 今井 正武 氏(写真右)
八十二銀行 高崎支店 支店長 原山 英典 氏(写真左)

株式会社信防エディックスは、長野県を基盤に環境衛生資材や防災用品を扱う卸売企業。1952年の創業以来、長年にわたって地域経済を支えてきた老舗で、自治体指定ごみ袋など地域社会に欠かせない商品も数多く扱っている。三代目社長(現会長)の今井正武氏は事業と雇用の継続のため、2022年12月、建材や産業資材に強い大手商社の高島株式会社(東京都千代田区)の傘下に加わることを決断した。今回は、今井氏をサポートされた八十二銀行長野南支店の原山英典支店長(現高崎支店支店長)もお招きし、お二人にM&Aの経緯や成約に至ったポイントについてお聞きした。

事業の存続・拡大のためのM&A
一時は頓挫しかけたが
銀行のアドバイスを受け再開

御社の沿革や特徴を教えてください。

今井:弊社は1952年、長野県善光寺付近で、戦後のコレラやチフス、日本脳炎等の伝染病予防のワクチンを販売する目的で設立されました。以来、防疫用殺虫剤、環境衛生資材、食品衛生資材、防災用品など人々の健康と環境に資する商品を扱っています。1970年代半ばからは市指定のごみ袋をはじめ、さまざまな環境衛生資材を地元自治体向けに展開し、今では当社の主力商品となっています。

1999年に私が社長に就任してからは商品開発も積極的に行っています。近年は防災用品に注力しており、避難所用の簡易型テントや折りたたみベッドはプライバシー保護や感染症対策になることが評価され、全国の自治体に導入されています。

M&Aについて考えるようになったのはいつ頃ですか?

今井:10年ぐらい前からです。後継者がいなかっただけでなく、新たなパートナーを得ることで事業のさらなる成長を図りたいと思い、譲渡を検討するようになりました。実際に行動をおこしたのは一昨年です。

なかなか買い手候補が見つからなかったそうですが…。

信防エディックスの今井氏
「後継者がいなかっただけでなく、新たなパートナーを得ることで事業のさらなる成長を図りたいと思い、譲渡を決断した」と話す今井氏。
「お相手は建材や産業資材に強い老舗の大手商社です。持続可能な社会の実現を目指している点など弊社との親和性があり、グループ内に弊社が強化したい防災用品を扱う企業もありますので、これからの協業がとても楽しみです。商品開発力や行政ニーズへの対応力といった我々の強みを評価してくださっていますし、私自身、新商品のアイデアがいろいろありますので、今後はさらに商品開発に力を入れていきたいと思っています」

今井:ある大手M&A仲介会社と契約しましたが、1年間、全く進展がありませんでした。50社程度の候補企業のリストが届き、話を進めてくださいとお返事しても、そこから先へ進まない。それが3回続き、私のほうからお断りしました。概要を聞かせてほしいといったやりとりすらありませんでした。着手金を払い、期待感を持ってリストにある企業を詳細に検討したのに、何ひとつ得られなかった。高い授業料だったと思っています。

かなり気落ちしていましたが、メインバンクである八十二銀行長野南支店の原山支店長(現高崎支店支店長)に相談したところストライクさんを紹介され、再度やってみる気持ちになりました。

原山:信防エディックス様は、自治体のごみ袋や防災用品など私たちの生活を支える商品を多数扱っておられます。また、立地する長野アークス(卸団地)の組合の役員を務めるなど、地域経済のリーダー的存在でもあります。同社の存続・発展は地域社会・経済にとって不可欠であり、弊行でもできる限りのお手伝いをしようと、状況を十分にお伺いした上でストライクさんを紹介しました。

今井:信頼の厚い原山さんの紹介だったのは大きかったですね。ストライクさんは着手金がなく、買い手企業との基本合意の締結まで無料であることも安心材料になりました。

M&Aの仲介は通訳のようなもの
互いが伝えたいことを
過不足なく的確に伝えてくれた

譲渡の条件で重視されたことは?

今井:最も重視したのは事業と雇用の継続です。全くの同業ではない県外の大手企業という希望も伝えました。せっかくM&Aをするなら、我々にはない経営のノウハウや事業の手法、販路、商品などを持つ企業とご縁を結びたいと考えたからです。

お相手の高島様の印象をお聞かせください。

今井:最初のトップ面談がとても和やかな雰囲気で、弊社が長野を基盤に積み上げてきた実績やネットワーク、商品をきちんと評価してくださっていることがわかり、安心できました。「誠実一筋」と掲げておられる通り、社長を始めお会いした幹部の皆様が本当に誠実な方々で、その崇高なご見識や柔らかなお人柄も大きな決め手となりました。

高島様は建材や産業資材に強い老舗の商社で、持続可能な社会の実現を目指している点など弊社との親和性があり、1915年創業で長い歴史を持つことも共通しています。上場企業ですから、場合によっては大きな体制の変更や商品の絞り込みを求められることもあるのではないかと思いましたが、そういったことは一切なく、商品開発力や行政ニーズへの対応力といった我々の強みをさらに伸ばしたいというご意向でした。グループ内に優良企業が揃っていて、弊社が強化したい防災用品を扱う企業があることも魅力的でした。ストライクさんが私の要望を正確に読み取りお相手を厳選し、かつ弊社の強みを先方に的確に伝えてくれたと思います。

成約までの間に悩んだことや苦労したことはありますか?

八十二銀行の原山氏
今回のM&Aをサポートした八十二銀行の原山氏。「地域経済が不透明感を増す中、経営者の危機感は強まっています。地方銀行として事業承継の悩みを丁寧にお聞きすること、M&Aのニーズにスピーディかつ的確に対応することがますます重要になると考えています」

今井:必要な書類を揃えるのが本当に大変でした。戦後の混乱期に発足した会社なので、どこにあるかわからないものもあって……。「もう限界だ!」と思うほどでしたが、ストライクさんのサポートで何とか乗り越えました。

気持ちの面でぶれることはなかったです。ストライクさんは常に鈴木さん、中山さんの二人体制で臨んでくれましたし、何より原山さんが保護者のように(笑)見守り、適宜アドバイスをしてくれました。非常に強力な体制で、安心・安全だったと思います。

原山:第三者的立場で助言すべきことがあればと考え、ストライクさんとの打ち合わせにはできる限り同席させてもらいました。今井会長のお考えをストライクさんに伝えることが私の役目だと考えていましたが、しっかり共有した上でご希望が叶う譲渡先の選定ができたと思っています。今井会長がおっしゃったようにデューデリジェンスで大変な局面があったものの、成約に向けてのプロセスはスムーズで、特に心配なことはありませんでした。勉強になることが多く、トップ面談にも同席させていただき、非常に貴重な経験になりました。

今回の成功のポイントは?

信防エディックスの今井氏、八十二銀行の原山氏、ストライク鈴木
M&A成功のポイントについて、今井氏は「信頼の厚い原山さんのサポートはとても大きかった」と話す。
「頓挫しかけたM&Aを『もう一度やってみよう』と思ったのも、原山さんがストライクさんを紹介してくれたのがきっかけです。ストライクさんは常に鈴木さん、中山さんの二人体制で臨んでくれましたし、原山さんは打ち合わせや高島様との面談に可能な限り同席して、適宜アドバイスをしてくれました。非常に強力な体制で、安心・安全だったと思います」
(写真右はストライク担当の鈴木)

原山:今井会長がお相手やM&A後の協業のイメージをしっかりと持たれていたこと。そして、ストライクさんが広いネットワークを活かし、高島様という最良のお相手を探し出してくれたこと。そこに尽きると思います。鈴木さん、中山さんには私も本当に感謝しています。お二人は常に冷静沈着ながら熱い思いを持って、懇切丁寧に対応してくれました。お二人の尽力がければ、このM&Aは成立し得なかったと思います。

今井:M&Aの仲介は通訳のようなもの。高島様と弊社、それぞれの言葉をうまく訳し、互いが伝えたいことを過不足なくきちんと伝えてくれた。そのおかげで高島様の考えをよく理解できたし、高島様の信頼を得ることもできたと思っています。

M&Aアドバイザーより一言(鈴木 淳也・法人戦略部アドバイザー談)

ストライク鈴木

八十二銀行様より信防エディックス様をご紹介いただき、地域において欠かせない企業である点や今井会長の思い、他のM&A仲介会社との経緯を伺った際、私は絶対に期待に応えるという覚悟を持って本件を担当させていただきました。

事業内容を深く理解するために創業の歴史からさかのぼって同社を知るとともに、資本提携先のご希望について何度もご相談を重ね、納得いただけるまでとことん一緒に悩み、考えました。その上でストライクが保有している情報やネットワークをフルに活用し、運命のお相手となる高島様に辿り着きました。

資産査定などに必要な書類を揃える際には、連日、とても煩雑な作業が続きましたが、気持ちが切れそうなときには、今井会長との信頼関係の厚い原山支店長が寄り添ってくださいました。譲渡企業様と銀行、弊社が手を携えゴールへと邁進した結果のご成約となりました。

地元企業のM&Aニーズは高い
自社の将来に危機感を抱き
M&Aを検討する若い経営者も増加

銀行のお立場から見て、地域企業にはどのようなM&Aのニーズがありますか?

原山:後継者不在に悩む企業だけでなく、40~50代の経営者が自社の将来に不安を感じてM&Aを検討するケースも増えています。地域経済が不透明感を増す中、想像以上に経営者の危機感は強いので、我々地方銀行としても、事業承継の悩みをこれまで以上に丁寧にお聞きしていかなければならないと思っています。そのためには日頃からの顧客との信頼関係が必要ですが、経営者と信頼関係を築き、その悩みやニーズを的確に捉えるのは現場の支店の役割、特に支店長の役割であると考えています。

M&Aに関しては、弊行本部のM&A専門部署と連携し、スピーディかつ的確な対応ができる体制を整えていますが、県外企業の情報には限界があるため、ストライクさんのような全国ネットワークを持つ専門業者との協業体制も強化していくつもりです。

今井様は現在、取締役会長を務めておられます。

今井:開発、営業が一人増えたようなもの(笑)。特に開発に関しては、いろいろやってみたいことがあります。コロナ禍で中国とベトナムの拠点になかなか行けませんでしたが、これからは現地に足を運んで新たな商品開発に取り組みたいと思います。また、この二つの拠点を高島グループで活かす方法も探るつもりです。

最後にM&Aを検討する経営者の方にメッセージをお願いします。

今井:同業、異業種、広く選択肢を持ちながらM&A仲介業者に相談することをお勧めします。専門家の意見を聞くことはとても有用です。たとえ成約まで至らなかったとしても、M&Aに向けて動いたことで会社が進むべき方向について見えてくることがあるのではないでしょうか。

M&Aはゴールではなく、新たなスタートです。これから大変なことももちろんあると思いますが、自分が育ててきた会社が成長していく姿を見るのがとても楽しみです。高島様と期待の吉川(肇)新社長と、信防全社員に大きなお礼を述べたいと思います。

本日はありがとうございました。

金融機関様とストライクの連携について(鈴木 淳也・法人戦略部アドバイザー談)

ストライク鈴木

現在、パートナー金融機関様から、多くの相談をいただいております。
主な内容は以下の通りです。

①譲渡企業のオーナー様が、紹介元銀行様の営業エリア外も含めた広範囲での買い手探索を希望されている案件
②マッチングが難航しているような難しい案件(過去に他のM&A仲介業者に委託したが決まらなかったケースを含む)
③入口のニーズ喚起から同席してほしい(若手行員様やM&A未経験の方がご担当の案件など)

譲渡企業のオーナー様の多くは、全国から譲受企業を探索し、ベストな企業を見つけてほしいと考えています。弊社では相当数の情報ストックの中から探索することが可能です。そして、何よりも譲渡企業様のお気持ちに寄り添い、納得いただけるまでとことん話し合う姿勢を大切にしております。譲渡企業様及び銀行様と密な協力体制を構築し、三位一体となって最適な候補先企業を探してまいりますので、お気軽にご相談ください。

本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
是非お気軽にお問い合わせください。