ご成約インタビュー No.118
INTERVIEW
DtoCで切り拓くテレビの未来
RKB毎日ホールディングスが仕掛ける革新的戦略
- #成長加速
- #事業拡大
- #戦略的M&A
- #小売業
- #製造業

株式会社RKB毎日ホールディングス
取締役 グループ戦略室長 長井 巧氏
株式会社RKB毎日ホールディングス(福岡市)は2025年1月、DtoC(インターネットでの通信販売事業)を主軸とするFun Standard株式会社(福岡県大野城市)を子会社化した。このM&Aの背景には、放送業界を取り巻く課題と、RKB毎日ホールディングスの新たな成長戦略があった。本記事では、RKB毎日ホールディングス取締役の長井巧氏に、M&Aの経緯やシナジー、今後の展望についてお話を伺った。
放送事業に次ぐ新たな収益基盤の構築へ
RKB毎日ホールディングス様の事業概要を教えてください。

RKB毎日ホールディングスは、RKB毎日放送を中心とした認定放送持株会社であり、放送事業を核として事業を展開しています。RKB毎日放送は、九州では初の民間放送局として1951年に開局し、70年以上にわたり、テレビ・ラジオという電波メディアを通し、地域の情報・文化をリードする役割を担ってきました。
今回、M&Aに至った背景を教えてください。
周知の通り、放送業界は近年、大きな転換期を迎えています。インターネット広告が急成長を遂げる一方で、テレビ及びラジオの広告収入は減少傾向が続いています。このような環境下において、当社グループは放送事業に次ぐ新たな収益基盤の構築が喫緊の課題でした。そうした中、ストライクさんの紹介により、2015年設立のDtoC企業であるFun Standardさんとの出会いがありました。同社は、EC事業領域で独自のポジションを確立されており、当社グループが課題としていた新規事業の柱として大きな可能性を秘めていると判断しました。加えて、長年にわたり地域に根差した放送局グループとして、視聴者・聴取者の皆様との強固な信頼関係を築いてまいりました。この実績を活かし、Fun Standardさんの企業価値向上、とりわけ信用力とブランド力の強化に寄与できるものと確信し、譲受を検討しました。
譲受の決め手は何ですか?

最も注目したのは、Fun Standardさんが自社で収益基盤を確立している点です。当社グループもEC事業に多少なりとも取り組んでいましたが、単独での収益化に課題を抱えていました。同社の譲受により、これまで培われたノウハウと実績を活用し、当社グループのEC事業の飛躍的な成長が見込めると判断しました。さらに、同社の事業基盤が当社の地元である福岡県に置かれていることも、M&Aの大きな推進力となりました。地域経済の活性化という当社グループのミッションとも合致し、より強固なシナジーが期待できると確信しました。
放送局ならではのM&A実行の課題
放送局でM&Aを実施する際、ハードルが高いイメージがありますが、M&Aを実施されるまでに苦労されたことはありましたか?
最大の課題は意思決定のスピード感でした。当社グループは先進的な取り組みに積極的である一方、放送事業者として慎重な判断を要する企業文化も持ち合わせています。新規事業への挑戦に対して保守的な意見もあり、社内での合意形成には相応の時間を要しました。加えて、総務省管轄下の放送局として求められる高度なコンプライアンスやリスク管理体制の維持も重要な課題でした。また、M&Aプロセスにおける法務・財務面での専門的知見の必要性から、外部専門家との緊密な連携が不可欠でした。
そのような苦労をどのように乗り越えられましたか?
社内コンセンサスの構築に向けて、徹底的な議論を重ねました。特に、M&Aの戦略的意義と将来価値について、データに基づく客観的な説明を繰り返し行い、関係者の理解醸成に注力しました。また、デューデリジェンスをはじめとする各種調査においては、慎重かつ網羅的な精査を行い、リスクの洗い出しと対応策の策定に万全を期しました。この過程で得られた知見は、PMIの計画立案にも活かされています。
メディアとECのシナジー創出へ
具体的な協業内容を教えてください。

まずは、RKB毎日放送の放送枠を活用し、Fun Standardさんの商品をテレビショッピングで展開していく計画があります。これにより、同社の認知度向上と売上拡大が見込まれ、RKB毎日放送としても放送枠の収益化が図れることから、グループ全体での収益シナジーが期待できます。次に、当社グループが保有する小売業界とのネットワークを活用してFun Standardさんの商品の実店舗展開も視野に入れています。これまで培ってきた取引先との関係を基盤に、新たな販路開拓を推進していく考えです。さらに、中長期的な成長戦略として、オリジナル商品の開発にも着手したいです。オリジナル商品をFun StandardさんのECプラットフォームで展開することで、メディアとECの相乗効果を最大限に引き出していきたいと考えています。
M&A実施後の今後の展望を教えてください。
当社グループの成長戦略として、まずFun StandardさんのDtoC事業の規模拡大を加速させていきます。同時に、当社が長年培ってきたコンテンツ制作力とブランド力を活用し、新規事業領域への展開も積極的に推進していく方針です。M&A戦略においては、放送事業とのシナジー創出が期待できる企業との戦略的提携を重点的に検討していきます。今回のM&Aを通じて獲得した知見を活かし、放送事業に次ぐ収益の柱を確立することで、持続的な企業価値の向上を目指します。さらに、Fun Standardさんとの協業で得られるシナジーを最大化し、新たなビジネスモデルの創出にも挑戦していきます。これらの取り組みを通じて、地域経済の活性化と社会価値の創造に貢献していく所存です。
事業会社が放送局と協業するメリットはなんですか?
放送局と協業することでもたらされる最大の優位性は、長年にわたり構築された強固な信用力と圧倒的な情報発信力の獲得です。具体的には、テレビ・ラジオCMや番組枠を戦略的に活用することで、商品・サービスの認知度向上から購買意欲の喚起まで、マーケティング施策を効果的に展開することが可能となります。さらに、放送局が保有する質の高いコンテンツ制作ノウハウや、大規模イベントの企画・運営実績といった無形資産を活用することで、従来にない革新的なビジネスモデルの創出も期待できます。このように、放送局との協業は、事業会社の成長戦略において極めて有効な選択肢となり得るのです。
ストライクの担当者はいかがでしたか?

(写真右はストライクの長谷川 奨)
担当の長谷川さんには、M&A検討の初期段階から一貫して戦略的にサポートしていただきました。Fun Standardさんのご紹介にとどまらず、案件組成からクロージングに至るまで、豊富な知見に基づく的確な助言をいただき、円滑な意思決定の一助となりました。長谷川さんの卓越した専門性と情熱的なコミットメントは、本案件成立の大きな原動力となりました。今回のM&Aの実現は、長谷川さんの多大なる貢献によって実現したものと深く感謝しております。
M&A成功のカギは迅速な意思決定
今後、M&Aを検討される方にメッセージをお願いいたします。
M&A成功の鍵は、迅速な意思決定にあります。慎重な検討は必要ですが、過度な分析や躊躇は機会損失につながりかねません。経営者として明確な判断を下し、その決断に基づいて果敢に前進することが重要です。もちろん、M&Aは企業の将来を左右する重要な経営判断です。しかし、たとえ想定通りに進まない局面があったとしても、それは成長過程における必要なプロセスと捉えるべきでしょう。まずは自社の課題と目標を明確にし、スピード感を持って実行に移すことが、新たな成長機会の獲得につながります。その際、信頼できる専門家のサポートを得ることは不可欠です。彼らの知見を活用しながら、果断に前進することで、M&Aを成功に導くことができると確信しています。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(長谷川 奨・成長戦略部 シニアアドバイザー談)

Fun Standard様は、福岡県でアウトドア商品やスポーツ用品、カー用品などを自社で製造しECサイトで販売する「DtoC事業」で成長を遂げているベンチャー企業になります。Fun Standard様の代表取締役である大屋様はご年齢も若く、非連続な事業成長をさせたいという想いから、大手企業との資本提携をご検討されておりました。お相手先となったRKB毎日ホールディングス様はFun Standard様と同じ福岡県にある大手放送局でマスメディアとネットの融合による事業の相互シナジーを感じられたことから、両社資本提携の意思決定をして頂きました。RKB毎日ホールディングス様とご一緒になられたことで、信用力の向上、資本力の強化、販路拡大、採用力の強化に繋がり、更なる成長と発展に繋がることを確信しております。今後の両社様の発展を心から願っております。
2025年5月公開
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