INTERVIEW

M&Aで加速させる成長:
高洋電機の戦略と佐藤商事の決断

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佐藤商事株式会社 代表取締役 専務執行役員 浦野正美氏、佐藤商事株式会社 統括部長 兼 経営管理部 部長 阿久津勝広氏、エヌケーテック株式会社 代表取締役社長 畠教博氏、高洋電機株式会社 代表取締役社長 高祖雅規氏

佐藤商事株式会社 代表取締役 専務執行役員 浦野 正美 氏
佐藤商事株式会社 統括部長 兼 経営管理部 部長 阿久津 勝広 氏
エヌケーテック株式会社 代表取締役社長 畠 教博 氏
高洋電機株式会社 代表取締役社長 高祖 雅規 氏

佐藤商事株式会社(東京都千代田区)は、鉄鋼を中心に幅広い事業を手がける大手鉄鋼商社だ。一方、高洋電機株式会社(三重県度会郡)は、金属加工技術に強みを持つ、技術力の高い老舗企業。このM&Aは、佐藤商事の事業再編によるエヌケーテック(埼玉県さいたま市)のカーブアウトと高洋電機の事業拡大という、両社の戦略的なニーズが合致したことで実現した。佐藤商事の代表取締役 専務執行役員 浦野 正美 氏、統括部長兼経営管理部 部長 阿久津 勝広 氏、エヌケーテックの代表取締役社長 畠 教博 氏、そして高洋電機の代表取締役社長 高祖 雅規 氏にお話を伺った。

佐藤商事株式会社 × 高洋電機株式会社
ご成約インタビュー動画

M&Aに至った背景と譲渡への想い

事業内容や特徴を教えてください。

浦野:佐藤商事は、業界では独立系鉄鋼商社として知られています。鉄鋼部門、非鉄部門、電子部門、機械部門、ライフ部門、営業開発部門の6つのセグメントで事業を展開しています。鉄鋼部門が売上の約6割を占めていますが、自動車、建機・農機、電子部品、プラント向け設備、さらにはホテル・レストラン向けのカトラリーなど、幅広い分野で事業を展開しています。また、自社で加工メーカーを抱えている点も特徴です。連結で1000人規模の企業であり、部門間の連携が取りやすい点が強みです。

高祖:高洋電機は、金属加工を専門とする会社です。創業から74年を迎え、難削材の切削加工を得意としています。マシニングセンターなど約300台の機械を保有し、自動車部品が売上の約2割、産業用モーターやクラッチ部品が10数パーセント、建機部品が10数パーセントを占めます。
特徴としては、一般的な金属加工に加え、タングステン、モリブデン、ニオブなどの特殊金属や、プラチナ、樹脂、セラミックスなどの加工も行っています。これらの特殊素材の加工には高度な技術とノウハウが必要です。

M&Aによるエヌケーテックの譲渡を選択した理由を教えてください。

佐藤商事株式会社 代表取締役 専務執行役員 浦野 正美 氏
佐藤商事株式会社 代表取締役 専務執行役員 浦野 正美 氏

浦野:エヌケーテックの譲渡を検討したのは、従業員の雇用維持が最大の理由です。日々汗水たらして働く従業員が大事だと考えています。佐藤商事としては、2年間再建を頑張りましたが、それぞれの得意分野を生かしながら経営していくことが従業員にとっても幸福だと考えました。清算という選択肢も考えましたが、従業員の雇用を守ることを最優先にM&Aを選択しました。

譲渡先に希望した条件を教えてください。

浦野:譲渡価額ではなく、会社を継続的に発展させていける企業であることを重視しました。M&Aは、単なる企業の売買ではなく、従業員の未来を託す行為であると考えています。そのため、譲渡先には、企業の成長だけでなく、従業員の成長も重視してくれる企業であることを希望しました。

トップ面談での印象はいかがでしたか?

浦野:面談では、高祖社長の経営に対する熱意や、従業員に対する思いやりを感じることができました。この面談を通じて、高洋電機であれば、エヌケーテックの従業員を安心して託せるという確信を得ることができました。

会社の成長に明確な課題を感じていたことからM&Aを決断

高洋電機が初のM&Aを決断するに至った理由を教えてください。

高洋電機株式会社 代表取締役社長 高祖 雅規 氏
高洋電機株式会社 代表取締役社長 高祖 雅規 氏

高祖:事業拡大の機会を求めて約5年間、M&Aを検討していました。その中で、エヌケーテックは業界も近く、関東圏に拠点を作るという当社の目的に合致していました。高洋電機は、これまで自社の技術力を活かして事業を拡大してきましたが、更なる成長のためには、新たな拠点と顧客基盤が必要だと考えていました。
M&Aで譲渡対象となる会社は、後継者問題や業界の問題など、何かしらの課題を抱えていることが多いですが、エヌケーテックの場合は売上の伸び悩みが明確でした。そのため、注力すべき点がはっきりしていて課題解決に集中できると考えました。

佐藤商事が高洋電機を選んだ理由をお聞かせください。

浦野:エヌケーテックの将来性を重視し、高祖社長であればエヌケーテックを成長させてくれるという期待感を持てたことです。また、高祖社長が従業員と積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢にも感銘を受けました。高祖社長の経営に対する熱意と誠実な対応、従業員を大切にする姿勢に共感し、高洋電機を譲渡先として選んだのです。

PMI(M&A後の統合プロセス)と今後の協業についての見通しを教えてください。

高祖:2024年9月からPMIを開始していますが、今のところ大きな問題はなく進んでいます。エヌケーテックの従業員には、会社の現状を理解してもらい、危機感を共有しながら、営業強化を進めています。会社に貢献するとはどういうことなのかを一人ひとりが考え、組織として一本に繋がることが重要だと考えています。PMIでは、両社の企業文化や業務プロセスを理解し、スムーズな統合を目指しています。また、従業員には今後のビジョンを共有し、皆が一体感を持って事業に取り組めるように努めています。営業力を強化するために、製造部門や事務部門も含め、全社一丸となって営業活動を支援する体制づくりを重視しています。

「危機感をバネに、営業力強化へ」M&Aで生まれ変わるエヌケーテック

それぞれのお立場から見て、今回のM&Aにはどのようなメリットがあるとお考えでしょうか。

佐藤商事株式会社 統括部長 兼 経営管理部 部長 阿久津 勝広 氏
佐藤商事株式会社 統括部長 兼 経営管理部 部長 阿久津 勝広 氏

高祖:高洋電機とエヌケーテックは、それぞれ異なる顧客基盤を持っています。M&Aによって、営業の手段が倍になり、それぞれの強みを活かせるようになりました。高洋電機はニッチな産業を狙い、エヌケーテックは間口の広い顧客基盤を持っています。この2つの特性をうまく活用していくことが、今回のM&Aの最大のメリットだと考えています。M&Aによって、両社の顧客基盤を相互に活用することで、新たな顧客開拓や売上拡大に繋げることができると期待しています。

畠:高祖社長と私のモチベーションが上がったことです。エヌケーテックの業績は厳しく、危機感を持って取り組む必要があります。この危機感を従業員と共有し、営業力を強化することで、業績を向上させていきたいと考えています。

阿久津:高洋電機が難削材の加工技術を持っているため、エヌケーテックとのシナジー効果が期待できます。佐藤商事としては、今回のM&Aでグループ全体の事業ポートフォリオを最適化し、より収益性の高い事業に集中することができます。

エヌケーテックと高洋電機の今後の協業についてお聞かせください。

エヌケーテック株式会社 代表取締役社長 畠 教博 氏
エヌケーテック株式会社 代表取締役社長 畠 教博 氏

畠:高祖社長には週に2日エヌケーテックに来ていただいています。今後は、エヌケーテックの営業担当者が直接高洋電機の担当者と連絡が取れる体制を整え、うまく連携できるように進めていきたいと考えています。

高洋電機にとって今回が初めてのM&Aとなりました。手応えと課題はどのようなものでしたか?

高祖:M&Aのプロセスは非常に楽しかったです。エヌケーテックの従業員も真面目で、会社のことを真剣に考えていると感じました。今後の課題としては、両社の条件が噛み合っていない部分をどう解決していくかです。

ストライクのサービスはいかがでしたか。

佐藤商事株式会社 代表取締役 専務執行役員 浦野正美氏、佐藤商事株式会社 統括部長 兼 経営管理部 部長 阿久津勝広氏、エヌケーテック株式会社 代表取締役社長 畠教博氏、高洋電機株式会社 代表取締役社長 高祖雅規氏、ストライク有野
今回のM&Aは戦略的なニーズが合致したことで実現した。
(写真左はストライク担当の有野 良一)

浦野:ストライクは、業界の知識が豊富で、会社を継続していくことに真剣に取り組んでくれました。最後まで諦めずに、エヌケーテックの雇用を守るために尽力してくれたことに感謝しています。M&Aは複雑なプロセスを伴うため、専門家のサポートが不可欠です。ストライクは、M&Aに関する豊富な知識と経験を持ち、両社のニーズを的確に把握し、M&Aの成功に大きく貢献してくれました。

高祖:ストライクの有野さんは、黒子のように目立たないながらも、ポイント毎にしっかりと繋いでくれました。非常に難しい仕事だったと思いますが、熱意を持って取り組んでくれたことに感謝しています。有野さんはM&Aの専門家として、両社のニーズを理解し、M&Aの成功に向けて熱意を持って取り組んでくれました。

これからM&Aを検討される経営者の方に向けたメッセージをお願いします。

高祖:M&Aは、今後の事業展開において必要な選択肢の一つです。M&Aに対する理解を深め、選択肢として柔軟に取り入れることが重要です。専門家の意見も取り入れつつ、自社の戦略に合う形で実施することが大切です。

浦野:少子化が進む日本において、後継者問題は深刻です。また、事業を行っていると不採算部門も出てきます。M&Aは、後継者問題や不採算部門の整理など、企業の課題を解決するための有効な手段ですので、自社の課題と目的を明確した上で検討することが重要です。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(有野 良一・企業情報部 アドバイザー談)

ストライク有野 良一

佐藤商事様は独立系の鉄鋼商社で、当初買収についての打ち合わせを進める中で、子会社であるエヌケーテック様のカーブアウトについてご相談をお受け致しました。エヌケーテック様は、主要取引先が海外へ生産を移したことによって業績が悪化しており、グループを通してエヌケーテック様の営業支援を行うなど改善策を模索されていましたが、両社の強みの違いから再建が上手く進んでいないとの事でした。そんな中、「地域に根付いた従業員の生活を最優先に」とM&Aを選択されたことで、高洋電機様とのマッチングに繋がりました。事業の選択と集中の中でM&Aを活用し、雇用を維持しながら、より事業シナジーのある企業へ譲渡する。3社にとって意義のあるM&Aのお手伝いができ、心より嬉しく思います。今後の各社の更なる発展を心から祈っております。

2025年4月公開

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