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M&Aインタビュー No.36

58歳社長が会社を譲渡したのは
『社員のことを最も考えてくれる会社』
~買収企業から「70歳まで経営続けて」

株式会社カワツウ 代表取締役 荻野 哲生 氏

株式会社カワツウ 代表取締役 荻野 哲生 氏

神奈川県川崎市で消防・消火設備や電話・テレビなど弱電設備の工事を行う株式会社カワツウ。同社は『快適な生活環境の実現と安全・安心の暮らしの提供』を企業理念として、地域に密着し事業を展開してきた。2020年9月、創業者である荻野哲生社長は、後継者不在の解決と社員の将来を考えて、建設資材商社の大手である田中商事株式会社へ会社を譲渡した。田中商事からの依頼で、荻野氏は譲渡後も社長を続けている。「70歳まで経営してほしい」とも言われている荻野氏に、今回のM&Aについてお話を伺った。

細やかで迅速な顧客対応を目指し起業
事務作業を行う優秀な女性社員たちが
営業活動やお客様からの信頼を支える

創業の経緯を教えてください。

私がカワツウを創業したのは1995年です。会社を興すまで、いろいろな仕事をしてきましたが、25~26歳のときにカワツウと同業の電気設備工事の会社に勤め始めました。当時の電気設備業は職人の世界です。キャリア形成としては、出世をするか一人親方として独立するか、その2つの選択肢しかありませんでした。

その会社で働き始めてから7年半経った頃、社長から「新しい会社を設立するので社長をやらないか」という話をいただきました。私はとてもうれしく、乗り気だったのですが、結局は「専務としてやってほしい」と話が変わってしまいました。私は「社長として会社を経営したい」「細やかで迅速で正確な顧客対応を建設業界で行っていきたい」という気持ちが強くあり、独立の道を選びました。33歳で起業。それが、カワツウの創業の経緯です。

創業後の会社の事業展開、経緯などをお聞かせください。

株式会社カワツウ 代表取締役 荻野 哲生 氏

譲渡先企業の意向で、現在も社長を務めている。
「田中商事様からは『70歳になるまで会社にいてほしい』というお話もいただいています。58歳での会社の譲渡は、タイミングとしては早いという考えもあるかもしれませんが、若いうちにモチベーションが高い状態で次のステップに進んでいけるという利点があります。今後はさらに売上高を伸ばしたり、支店を増やしたりしたい。新しい目標に向けて、田中商事様と二人三脚で進められることを、とても楽しみにしています」

カワツウを神奈川県川崎市の鷺沼で創業したのは、私が生まれ育った土地で土地勘があったからです。創業当初は、実家の2階にオフィスを設けて仕事をしていました。景気は建設業界全体がバブル崩壊後のどん底にあり、厳しい状況でした。融資を受けたり、貯金を取り崩したりしてのスタートで、親せきからも借金をしました。創業から5ヵ月ほどは売上高がゼロの状態が続き、営業活動を始めて6ヵ月経った頃に、やっと実を結び始めました。

会社運営が少しずつ軌道に乗って、創業2年目には年商2億円ほどになりました。ところが、その矢先にメインのお客様が倒産し、当社が800万円の負債を抱えることになりました。そのときは資金面で本当に苦労し、それ以降は貸し倒れを回避するため、建設資材の商社をメインのお客様としてお付き合いするように営業方針を切り替えました。売り上げも徐々に右肩上がりになっていきました。特にここ10年は、業績は堅調です。資金繰りに苦しんでいた創業当初とは、大きく様変わりしました。

25年間続けてこられた会社の強みを教えてください。

カワツウの強みの1つは優秀な女性社員です。弊社と同規模の設備工事の会社では、事務スタッフの人数は2~3人のことが多いと思います。カワツウは現在、全社員23名のうち約半数の11名が女性社員で、事務スタッフとして働いていて会社をずっと支えてくれています。実際に工事を行う職人や商談を決めてくる営業は当然大事ではありますが、カワツウでは、その営業を支える事務スタッフの存在が大切なのです。

弊社のような設備工事会社は、一般的には建設会社の下請けとして仕事を受注します。下請けの場合、見積書作成などの事務作業はさほど多くありません。一方で、カワツウは建設資材の商社から仕事を受注します。こうした建設資材商社から依頼される見積もりの数は多く、当社では月間で約200件もの見積もり作成を行うこともあります。

そのような業務をカワツウの女性社員はミスなくスムーズに処理してきました。お客様への対応の質が落ちないように、ミスが発生しないように、見積もり作成自体が遅れないように頑張ってくれています。お客様からも「カワツウは細かいことへの対応も早く、見積もりも迅速に出してくれる」との評価をいただいています。それが他社との差別化にもつながっているのだと思います。

自分が健康で若いうちに
良い譲渡先に巡り会うことも重要
譲渡のタイミングも見据え、早めの決断を

会社の譲渡を決断したきっかけは?

会社の経営は安定しましたが、経営者としての重圧や気苦労は増える一方でした。経営者としてこの状況を続けられるか、違う仕事の仕方はないのかと考え始めました。実際に事業承継について考えるようになったのは、50歳くらいからです。事業継承の話を子どもにしましたが、子どもには会社を継ぐ意思はなく、最終的に56歳で譲渡を決断しました。

譲渡のお相手の会社は、どのように選定されましたか?

大変ありがたいことに、カワツウを譲り受けたいという会社はたくさんありました。弊社を譲り受けていただいたのは、お付き合いのあった電気工事関係の資材商社である田中商事様でした。他からも魅力的な申し出があって話し合いもしましたが、私としてはカワツウのこと、働いている社員のことを最もよく考えてくれる会社にしたいと考えており、「今まで通りに仕事をしてもらい、カワツウの社員で役員構成をしてほしい」という田中商事様のお言葉を受けて、田中商事様に譲り受けていただくことにしました。

私は田中商事様からのご依頼で、譲渡後も5年間、引き続き社長として会社に在職することになりました。M&A後の残留期間が5年間というのは平均よりかなり長いようです。カワツウの若い社員が不安にならないように、長期間にわたり私が会社に残るよう配慮してくださった田中商事様に感謝しています。まさに理想的な譲渡先だと私は感じています。

今回のM&Aを仲介してくれたストライクの久米さんは、対応が早く、仲介の専門家として信頼でき、安心して最後まで進めることができました。その結果として、田中商事様という良い譲渡先に巡り会い、スムーズに会社を譲渡することができて本当に良かったです。

会社の譲渡に関して、他の企業の経営者に伝えたいことはありますか?

荻野哲生氏とストライク久米

同社を譲り受けたいと希望する企業は多く、荻野氏は複数の企業と面談。選んだのは、働いている社員のことを最も考えてくれる会社だった。
「今回のM&Aでは、親身になって会社の譲渡を一緒に進めてくれた久米さんがいたことが、何より助けとなりました。譲渡するにはさまざまな知識や事務手続きなどを要するので、M&Aの専門家の手助けは不可欠であり、信頼できる専門家に相談して安心できる環境をつくることが大切だと思います」(写真左はストライク担当の久米)

経営者として考えることや思うことなどたくさんあるとは思いますが、譲渡するタイミングや譲渡先の選定はとても大事です。また、譲渡するにはさまざま知識、事務手続きなどを要するので、信頼できるM&Aの専門家の手助けは必要不可欠です。私の場合は、親身になって会社の譲渡を一緒に進めてくれたストライクの久米さんがいたことが、何より助けとなりました。特に会社を譲渡するまでの最後の3ヵ月は、事務手続きなども立て込んで、あっという間に過ぎましたが、その期間も久米さんの存在が支えになりました。譲渡を検討されるなら、専門家に相談して安心できる環境をつくることが大切だと思います。

また、自分が健康で若いうちに良い譲渡先と巡り会うことも大事だと実感しています。社員の将来のためにも、私は早めに譲渡の判断をして良かったと思っています。

オーナー社長としての重責から解放され
新たな目標も見えてきた
社員教育や福利厚生の充実にも力を注ぎたい

譲渡後のご自身の新しい目標があればぜひお聞かせください。

田中商事様からは、5年間と言わず、70歳になるまで会社にいてほしいというお話もいただいています。そのご厚情にお応えできるように、残された時間の中で新たな目標に向けて動いていければと思っています。

58歳での会社の譲渡は、タイミングとしては早いという考えもあるかもしれませんが、若いうちにモチベーションが高い状態で次のステップに進んでいけるという利点があります。その利点を生かし、今後は、7億円で止まっていた売上高を10億円以上に増やしたり、関東一円に支店を作ったりしたい。新しい目標に向けて、田中商事様と二人三脚で進められることを、とても楽しみにしています。

最後に、今後の抱負をお聞かせください。

これまではオーナー社長としての重責に苦しむことがありましたが、これからは私一人でなく田中商事様と一緒に経営することができます。ある意味、肩の力を抜いた状態で仕事ができますので、これまで以上に会社経営に集中し、社員教育と社員の福利厚生を充実させたいと考えています。M&Aを機に、今後は社員たちと新たな発想で仕事をしていこうと思っていますが、すでに自らの新しい発想を持つ社員も多く、今までにない動きも出ていて、とても明るい未来が見えてきています。

プライベートでも、若く健康なうちに趣味を充実させていくつもりです。私なりのセカンドライフを過ごす中で、仕事や趣味を通して新しい発見をしていければと思っています。

本日はありがとうございました。