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M&Aインタビュー No.22

株式会社日本真空科学研究所 代表取締役社長
飛田 睦子 氏

1951年8月、光学部品メーカーとして創業した(株)日本真空科学研究所。創業以来、60年以上にわたり構築してきた真空成膜技術を強みとして、デジタル一眼レフ市場を中心に大手カメラメーカー等へ精密部品を供給している。しかし2015年2月、前代表取締役の飛田洋一氏が急逝。急遽、奥様である飛田睦子氏が株式を相続、あわせて代表取締役に就任されることとなった。それまで事業に関与されたご経験がなかった飛田社長は、事業の存続と安定を図るため、M&Aを決断。2017年2月、信頼できる会社への事業承継を実現された。
今回は飛田社長に、会社の経営を担うことになったときのご心境や、譲渡に至られた経緯、またその際に感じられたことなどを伺った。
1951年8月、光学部品メーカーとして創業した(株)日本真空科学研究所。創業以来、60年以上にわたり構築してきた真空成膜技術を強みとして、デジタル一眼レフ市場を中心に大手カメラメーカー等へ精密部品を供給している。しかし2015年2月、前代表取締役の飛田洋一氏が急逝。急遽、奥様である飛田睦子氏が株式を相続、あわせて代表取締役に就任されることとなった。それまで事業に関与されたご経験がなかった飛田社長は、事業の存続と安定を図るため、M&Aを決断。2017年2月、信頼できる会社への事業承継を実現された。
今回は飛田社長に、会社の経営を担うことになったときのご心境や、譲渡に至られた経緯、またその際に感じられたことなどを伺った。

夫の急逝後、4代目の社長になることを決断
同時に事業の安定を図るため、M&Aの検討を始めた

M&Aを終えられた今のお気持ちをお聞かせください。

今は肩の荷が下りてホッとしている、というのが正直なところです。

当社は1951年8月の創業ですから、今年で66年目を迎えました。創業者は義父ですが、早くに亡くなったため、義母が後を継ぎ、しばらく社長を務めた後に、夫が3代目の社長になりました。けれども、夫が急逝し、その後は私が4代目としてバトンをつないできました。私たち夫婦には子どもがいませんでしたので、今回、親族承継の流れが終わり、外部への承継となったのには感慨深いものがあります。

4代目の社長になられた経緯を教えていただけますか。

2015年に夫が亡くなったとき、数人の幹部社員から、どうしても私に社長を継いでほしいと言われました。そうでないと会社が空中分解するか、よく知らない人が来て会社がどうなるかわからないから、と……。でも、社長になるわけですから、簡単に返事はできませんでした。それまで私も監査という役割で会社に関わってはいましたが、経営となると全く別の話ですし、また私個人が借入金の連帯保証人となることにも、大きな戸惑いがありました。自信を持って経営ができるのなら、それも許容できたのでしょうが、当時の私は先のことどころか、目の前のこともおぼつかない状況でした。

しばらく考えましたが、自分の人生を振り返ったときに、「私、あのとき逃げ出したな……。社員は今頃どうしているかしら……」と後悔するのは嫌だと思いましたので、会社の株式を相続して、4代目社長になる決心をしました。

M&Aのご検討を始められたきっかけは?

急遽、事業を継いで4代目の社長となりましたが、まずは何をしなければならないのか?考えたのは、社員がこれから先、ずっと定年まで安心して勤め続けられる保証をつくることでした。

私の役割は、緊急時のピンチヒッターのようなものだと思っていましたので、私がない知恵を絞って頑張り続けるのではなく、将来、何があっても経営を安定させるための道筋をつけなければならない、と。そこで、経営を承継したのと同時に、もう一つの選択肢としてM&Aの可能性について手を打っておこうと思ったのです。社員に対する責任感だけでなく、私個人の問題として、急に背負うことになった連帯保証の重圧が重く心にのしかかっていたこともありました。

ストライクを知ったきっかけや、担当者の印象を教えてください。

お話(右) 株式会社日本真空科学研究所 代表取締役社長 飛田 睦子 氏
聞き手(左) 株式会社ストライク 代表取締役社長 荒井 邦彦

M&Aの専門家に相談しようと考えたとき、いくつかの専門会社を調べましたが、実は亡くなった夫の本棚に、ストライクの荒井社長が書かれた『事例でわかる!オーナー経営者のためのM&A活用法』という本があるのを見つけて、これも何かのご縁だと思い、ストライクさんにお電話をし、担当の犬塚さんにお会いしました。それからずっと2年くらいの間、犬塚さんは良い相談相手になってくださいました。M&Aについて社内で話すわけにはいきませんし、私も不安が大きくて、社長を辞めたいと言ってしまったりしたこともありました。

犬塚さんには、一番飾らない私の気持ちや本心を聞いていただきながら、とても真剣に取り組んでいただいたと思っています。本当に感謝しています。

創業以来、カメラの部品を作ってきたが、
M&Aを機に自動車業界への新たな展開が見えてきた

譲渡先の企業の印象や社長同士のフィーリングはいかがでしたか。

譲渡先企業の印象はとても良かったです。先方の社長の人柄もとても素晴らしく、今ではビジネスだけでなくプライベートでも交流を図らせていただいています。ゴルフが共通の趣味ということもあって、最近は一緒にラウンドしたりしています。また、双方の社員同士のスムーズな交流も図ってくださっていますので、社員たちも安心していると思いますし、私もホッとしています。

こうした人と人とのご縁というのは、運なのでしょうか。M&Aを検討した当初は、どんな方が来るか不安ばかりでしたが、ストライクさんのおかげで、本当に良いお相手と巡り会えたと思っています。

譲渡後の会社の状況や、今後の展望について教えてください。

当社は真空蒸着という技術を使ってカメラの部品を作っている会社なのですが、カメラ市場は、スマートフォンのカメラに押されて縮小傾向にあります。カメラの出荷台数も頭打ちです。そういった市場環境の中で、社員たちの元気もなくなっていたと思います。

今後、伸びそうな分野は自動車しかありません。当社だけではその業務にとりかかることができずにいましたが、今回の譲渡先企業は自動車業界に強く、今後、自動車関連のお客様とお仕事ができる可能性が見えてきました。譲渡先企業から当社に社外取締役として来てくださっている方も、自動車部品のメーカーとの関係をプッシュしてくださいました。

当社は60年以上、カメラの部品を作ってきました。主な生産は中国で、日本の本社は生産工場としての機能より開発に力を入れていたため、いきなり自動車関係の仕事に対応できるのかどうか、戸惑っている部分もあります。しかし、これから数年後を見据えて、会社として求められることを着実に乗り越えて、信用を得られるようにやっていきたいと思っています。

譲渡先企業のおかげで、社内に活気が出てきました。譲渡先企業の方も来ますし、新しい取引先からも人が来るようになりました。社員たちも皆、とてもはりきって働いています。社内の雰囲気も、良い意味でにぎやかになりました。実際、このM&Aのために辞めるという社員は一人もいませんでした。社員たちには、むしろ「良かった」と言われています。喜んでくれているのだと思います。

譲渡先企業と一緒となって、新しいことにどんどんトライされている楽しさが感じられます。

「ストライクの担当の犬塚さんは本当に良い相談相手。飾らない気持ちや本心もいろいろ聞いてもらいました」と話す飛田社長。
(写真左はストライク代表の荒井、右は担当の犬塚)

本当に楽しいです。先日も、これからはヘッドアップディスプレイ(自動車の部品)が飛躍的に伸びますよ、ということを社外の方がご説明に来てくださいました。当社には、これまでカメラ業界で蓄積してきた知見がありますので、要領を得ればうまくいきそうです。すでに有名な海外自動車メーカー様から依頼も来ています。

自動車業界には、人命を預かるということで資格を取得するまでが難しいといったハードルがあるのですが、そういった課題を踏み台にして、その先に進んでいけたらと思っています。夫は生前、10のことに取り組んで1つ成功したら良いほうだ、といつも言っていました。これがどうなるかわかりませんが、新たな一歩として、良い方向に踏み出せたなと思っています。

本日はありがとうございました。