INTERVIEW

不動産もM&Aも考え方は同じ。
譲り受けた後、「自分たちの努力で価値を高める」やりがいがある

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株式会社ビーロット様

株式会社ビーロット 執行役員 岡島 伸治 氏 / 管理部 永山 ルリ 氏

不動産金融コンサルティングを行なうビーロット(東京都港区)。同社は昨今、宿泊施設の商品化を強化しており、2017年1月には恵比寿と五反田にカプセルホテルを保有するヴィエント・クリエーション(東京都港区、以下VC社)を子会社化し、恵比寿の物件は17年12月に、五反田の物件は2018年4月に、それぞれ新たな「℃(ドシー)」というブランドのカプセルホテルへリニューアルした上でオープンさせた。その他にも複数のホテル竣工を進める同社は、18年2月2日に東証一部へ市場変更を果たした。今回は同社に「買収後に企業価値を高めるM&Aの取り組み方や視点」についてお話を伺った。

ビーロットの事業内容を教えてください

岡島:当社は「不動産投資開発事業」「不動産コンサルティング事業」「不動産マネジメント事業」の3つの事業を中心とする総合不動産会社です。昨今、当社が力を入れている宿泊施設は「不動産投資開発事業」に該当します。土地や空ビルを購入し、宿泊施設を建設したり、コンバージョンを実施した後、オペレーションを運営会社に外部委託し、相互に協力をしながら収益力を長期安定的な形で高め、不動産ファンド等に譲渡するような事業になります。

不動産の収益力を向上する手段として宿泊施設に転換するモデルは、実はそれほど以前からやっていたわけではありません。きっかけは、今から約3年前、東京・築地で一棟空室のオフィスビルを取得したことに始まります。当時、ちょうど東京オリンピックの開催が決まり、国策として「観光立国を目指そう! 海外からの旅行客をもっと呼び込もう!」という機運がありました。東京の宿泊施設が将来的に不足するという見通しもあり、築地は観光客に人気の銀座にも近いので、それならば宿泊施設へ、ベッド数をより多く配置できる「簡易宿所」への転換にチャレンジしてみようと決定しました。経験やノウハウがない中で覚悟が伴う決断でしたが、結果として運営会社の協力もあり稼働率が事業計画を上回り、ファイナンスのパートナーも現れて、海外投資家が出資するSPC(特定目的会社)に無事譲渡することができました。

簡易宿所の売買マーケットがあると確信した私達は、それ以降、その実績をノウハウとして、今回の℃(ドシー)でもご一緒したナインアワーズ(以下9h)さんと新宿で9hブランドの新築のカプセルホテルを開発したり、ABアコモさんと一緒にIMANO HOSTELシリーズという宿泊施設を創るに至ります。一つ一つの宿泊施設を丁寧に手探り&手作りで創り上げてきました。当社のビジネスは一言でいえば不動産再生や富裕層の資産コンサルティングなのですが、ビジネスパートナーとなる運営会社の皆様や金融機関の皆様、クライアントである富裕層のお客様といった取引先との信頼関係を構築することが我々の本当の仕事といえるかと思います。

創業10周年を迎えますが、そのような想いで仕事に取り組み、また幸いにもきちんとした実績を作ってこられたからこそ18年2月2日に東証一部への市場変更が果たせたと考えております。

宿泊施設を作るにあたり、どのようにプロジェクトを立ち上げ、進めていくのでしょうか?

岡島氏と永山氏とストライク小西
「ストライクの小西さんには、ロジックだけでなく人間の「情」の部分までくみ取っていただいた」と話す岡島氏。
(写真中央は永山氏、右は担当の小西)

岡島:役割分担があり、不動産は私たちが購入し、その不動産をどのような形にするかは運営会社に提案してもらいます。ただ、弊社と運営会社では目線が違うのですよね。運営会社はオペレーションを前提としますから、内装関係や家具・什器・備品関係など、利用客の目に見える快適さをどうするか検討していきます。一方、我々は不動産オーナーなので、目に見えないところ……躯体(建物の主要な構造部分)や配管、設備といった壁の内側や外壁などの目に見えない部分に投資しなければなりません。そういった両側面のプランを調和させて一つのプロジェクトを成り立たせるイメージです。

また、不動産オーナーの責任というのは単純に建物を作るだけではありません。近隣の方々やテナント企業など、いろいろな関係者とコミュニケーションを取り、協力しながらプロジェクトを進めていく形になります。

今回は不動産そのものの買収ではなく、VC社という宿泊施設の運営会社の譲り受けでした。
M&Aについて貴社内ではどのような受け止め方を?

岡島:実は以前に大阪の不動産会社をM&Aで譲り受けた実績があり、M&Aについて違和感はありませんでした。不動産もM&Aも我々にとって考え方は一緒です。譲り受けた後に現場に行って、自分たちの努力で何とか価値を高めることができる、そんなやりがいがあります。リノベーション後の「℃(ドシー)恵比寿」の出足も、おかげさまで現在のところ、事業計画を上回る実績となっています。リノベーション前は、女性用のカプセルユニットやサウナはありませんでしたが、℃(ドシー)恵比寿は女性も利用できるサウナ&カプセルホテルにしています。恵比寿駅から徒歩1分という極めて利便性の良い立地もあり、年々認知度が上がっていけば、稼働率はもっと高まると思います。

M&Aのポイントは一緒になって働ける相手かどうか——
その点では選ぶ側であり選ばれる側でもある

今回、VC社からビーロットに転籍された従業員の立場から、今回のM&Aについて感じられたことや印象を教えていただけますか。

永山:VC社からは、ホテルの運営責任者や私が所属していた管理部門のメンバーがビーロットに転籍しました。小さなカプセルホテルの運営会社から、まったくの異業種の不動産会社、しかも上場会社に移るのですから、転籍後はどうなるのだろうとすごく不安を感じた覚えがあります。ただ、実際に転籍した後はビーロットの皆様が温かく迎え入れてくださいましたし、全員が非常に礼儀正しく、風通しが良いことを実感しています。

異業種ではありましたが、私自身はこういったホテルを開発するという分野にも興味がありましたので、新しい知識を身につけられるチャンスだと思うようになりました。知らないことはたくさんありますが、ポジティブに考えられれば、それらを吸収できる楽しみがありますし、常に成長を目標としている企業理念にも共感しています。転籍から1年弱経ちますが、良い刺激を受けながら勤務できていることは本当に幸せだと感じています。

岡島:ホテルの運営を運営会社に頼り切ってしまうと、自社に何もノウハウが残らず、適切な運営管理ができません。そのような観点から、不動産そのものの取得のみならず、ホテルの運営責任者や経営管理部門の方々に合流いただけたのは、今回のM&Aの一番の成果だと思っています。

不動産と企業、譲り受ける交渉過程で違いなど感じたことはありましたか?

岡島:実は関係者同士の意思決定の行き違いで、交渉が難航した局面がありました。不動産の取引だったら間違いなく破談になるような状況で、私たちも、今回のM&Aは破談になっても仕方がない、それくらいの覚悟を決めました。ただ、そのときにストライクの小西さんが両社の間に入ってくださり、絶妙なコミュニケーションを上手に取り持ってくださいました。譲渡企業と私達の直接の交渉だったら、相互理解は難しかったかもしれません。また、M&Aの場合は対象会社に在籍している人材がいるため、その後一緒になって働ける相手かどうかがポイントになりました。私達は、前述の通り信頼関係を大切にしている会社なので、その企業理念に賛同し、仕事を通じて体現してくれる人達かどうかを非常に重要視しています。その点、選ぶ側であり、選ばれる側にもなります。また、不動産の知識のみならず、法務・労務・会計など幅広い知識が買い手に必要という点で不動産取引との違いを感じました。

ほかにもいろいろなやりとりがありましたが、小西さんにはロジックだけではなく、人間の「情」の部分までくみ取っていただきながら、最後の成約までフォローしていただけました。

買収を検討されている読者の皆様に対してアドバイスをお願いします。

岡島:弊社は不動産を取得し、収益性を向上したうえでEXITするのが事業ですから、今回のM&Aに限らず、投資回収計画を外部協力企業と共に描きます。しかしながら、今回もそうでしたが、実際にやってみると描いたプラン通りにはいきません。感覚で申せば、プラン通りにいくのは5~7割くらいでしょうか。その都度、臨機応変に提案を変えて、相手にご了解を得られるようなプランを提示しなければなりません。お金や数字だけで話が進むならAIで十分です。そうではなく、相手のことを謙虚に考え、合意形成を得て、一つのことを成し遂げられるか。人とのコミュニケーションについて、それをないがしろにしてはいけないと思います。

本日はありがとうございました。

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