M&A担当者のための「SMART M&Aナレッジ」
M&A担当者のための業界動向レポート

大型買収ではなく「小さな足し算」 技術と人材を補うシステム開発業界のM&A最前線

SHIFT、アクセンチュア、NTTデータの事例から見る、売り手市場で選ばれる買い手の特徴

レンガを一つずつ積み上げてITの文字を形にする人々
システム開発業界では小さなM&Aを積み上げる動きが広がっている

受託案件の単価変動や生成AIによるコーディング自動化、モダナイゼーションの需要拡大、セキュリティへの投資などにより、システム開発業界の事業環境が急速に変化している。これまで自力での事業拡大にこだわってきた企業でも、小規模M&Aを活用した成長戦略へのシフトが加速した。多くの企業が小さな案件にも殺到する売り手市場で、買い手が選ばれるための論点を整理する。

ソフトウェア業界の成長が続く中、変化に対応するための小規模M&Aが活発化

IDC Japanの調査によれば、国内ソフトウェア市場は2024年に前年比12.1%増となり、約5.4兆円まで拡大した。その成長をけん引しているのがパブリッククラウドである。売上高は前年比22.1%増となり、市場全体の43.5%を占める。

特に注目されるのは、生成AIの活用、基幹システムの刷新(モダナイゼーション)、顧客体験の高度化、そしてセキュリティへの投資である。クラウドやAIを中心とした新しい技術が次々と実装され、業界全体が変化の真っただ中にあるといえる。

こうした変化に対応して、自社に足りていない技術や人材を、いかにスピード感を持って補うかが、これまで以上に問われる時代になった。M&Aをひとつの解として成長戦略の柱に置く企業も増え、M&Aも活発化した。M&A Onlineによると、「IT・ソフトウェア」分野の国内M&A件数は2024年に202件と、M&A Onlineで確認できる2008年以降で最多を記録した。

特徴的なのは、買収金額を公表している118件のうち、半数超の63件が5億円未満だったことである。求めている技術や人材をひとつずつ「足し算」で積み上げる動きが広がり、大規模な一発逆転のM&Aよりも、複数の小規模案件を積み重ねていくスタイルが主流となっている。そのため、小規模な案件にも多くの買い手が関心を示すようになり、競争が激化している。

IT・ソフトウェア分野の国内M&A件数の棒グラフ。2016年84件、2017年102件、2018年129件、2019年144件、2020年152件、2021年163件、2022年158件、2023年184件、2024年202件。M&A Onlineで確認できる2008年以降では2024年が最多。
2024年のIT・ソフトウエア分野のM&A 202件の買収金額帯別グラフ。1億円未満22件、1億円以上5億円未満41件、5億円以上10億円未満18件、10億円以上50億円未満19件、50億円以上100億円未満6件、100億円以上12件、非公表84件。

IT・ソフトウェア分野の年別データと出典

各年の件数は、M&A Online「業種別ランキング」の公開値である。

※各年に適時開示で公表されたM&Aのうち、経営権の移動を伴う案件を対象。ランキングは対象企業の業種分類である。

M&A巧者は、なぜ売り手から選ばれるのか? SHIFT、アクセンチュア、NTTデータの事例