INTERVIEW

地域医療の要となる病院・介護施設を承継
グループの力を活かし
経営マネジメントの向上に寄与

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HA(ヘルスケアアクセラレーター)グループ 本部 太田 祐樹 氏

HA(ヘルスケアアクセラレーター)グループ 本部 太田 祐樹 氏

2022年6月、千葉県夷隅郡大多喜町にて病院・介護老人施設を運営する医療法人川崎病院を承継したHA(ヘルスケアアクセラレーター)グループは、全国各地に拠点を持ち、次世代型の病院・介護施設運営を目指す医療法人グループ。2019年に事業をスタートして以来、着実にアライアンス先を増やしており、2022年11月現在、16医療法人33施設を運営している。最大の特徴は、グループ本部が180病院以上の経営支援・コンサルティングを行ってきたメンバーを擁することで、提携病院・施設の運営を支援し経営マネジメントを向上、収益増加を実現させている。医療法人が直面する経営課題やHAグループのM&A戦略について、グループ本部の責任者太田祐樹氏にお話を伺った。

法人では対応が難しい
人材確保などの経営課題を解決に導き
地域医療の発展に貢献

HAグループの理念や事業内容を教えてください。

私たちはヘルスケア業界全体の発展に貢献するために、次世代型の病院・介護施設の運営に取り組んでいます。医療法人のほとんどは中小の民間病院ですが、経営環境が厳しさを増す中、一法人だけで事業を存続・発展させるのは非常に難しくなっています。そこで、HAグループでは、地域医療を守るという使命感を持つ医療法人の仲間を集め、グループの力を活かして経営力の向上を図り、その法人だけでなく患者様、当該地域、日本、世界に対しヘルスケア領域の新しい価値を創造することをミッションにしています。同時に、収益をしっかりと上げ、その収益を現場で働く職員の方々に配分することで、医療・介護従事者が輝ける未来をつくることも目指しています。

グループの強みを教えてください。

HA(ヘルスケアアクセラレーター)グループ 本部 太田 祐樹 氏
HA(ヘルスケアアクセラレーター)本部 太田 祐樹氏

経営マネジメントに強いところです。グループ本部には、経営・事業再生コンサルタント、大手医療法人グループの事務長経験者など病院・介護施設の経営のプロとして経験豊富なメンバーを中心に、公認会計士、弁護士など士業のメンバーも揃い、グループ本部を構成しています。私たちが医療法人の運営を支え、医療従事者には医療に注力していただく。20~30代の若いメンバーが多く、熱意を持って病院の運営に取り組んでいることも特色だと思います。

医療法人にはどのような経営課題があるのでしょうか。

まず第一に、ニーズに供給体制が追いつかないことが挙げられます。高齢化が進み、入院・介護ニーズはますます高まっていますが、人手は足りていない。特に地方はその傾向が顕著で、人材の確保が大きな課題となっています。

二つめの課題はマネジメントの体制です。中小の民間病院では、理事長や院長を務めるドクターが経営を担うケースがほとんどですが、ドクターが診療をしながら資金繰りや人材確保・教育、業者の交渉なども行うのは大きな負担で、経営に苦戦している病院が多いのが現状です。

三つめの課題は、医療法人のグループ化が進んでいないことです。医薬品卸、寝具委託、給食委託など医療周辺業界はグループ化が進んでいて、例えば医薬品卸は四大卸と呼ばれる4社だけで9割のシェアを占めています。このため、大手業者に対して個々の医療法人が価格交渉などを行うのは厳しいといったことも課題になっています。

こうした課題を解決に導くカギとなるのがグループ化です。中小の医療法人でアライアンスを組み、人的リソース、現場オペレーションや事務効率化のノウハウなどを共有し合うことにより、経営マネジメントの質を高めていく。エリアで仲間を増やせば、そのグループ力を業者交渉などに活かすことも可能になります。

HAグループのM&Aの特徴を教えてください。

ドミナント戦略、つまりエリアをある程度集約しながら、法人の承継を行っています。HAグループはグループ法人が互いに助け合い、支え合うことを大切にしており、エリアを集約することで、コロナ対応含む緊急時の応援体制や双方のノウハウ共有などグループシナジーを発揮できると実感しています。地方都市に拠点病院を置き、その周辺に仲間を増やしていくイメージですね。

提携先の機能を定めていないのも特徴だと思います。急性期なら急性期、リハビリならリハビリを軸に展開するグループもございますが、私たちには機能を問わず経営を改善するノウハウがあるため、機能や診療科にこだわらず承継しています。

医療に真摯に取り組む法人を
マネジメントサイドからサポート
医療従事者が医療に集中できる体制を整える

お相手に望む条件などはありますか。

医療面での特徴・強みがある法人、地域医療・介護を大事にされている法人を重視させていただいています。我々のグループはマネジメントノウハウに強みがあり、だからこそ我々は真摯に医療に取り組んでいる医師、病院を支えたいと強く願っています。医療・介護に必死に取り組んでいるからこそ、経営や改善活動に取り組む時間がとれず、経営状態がよくないというケースは多く、そのような法人に対して、私たちがマネジメントをサポートし、医療従事者の方々がより医療に集中できるようにして、更なる発展を実現する。それが私たちの目指す形です。

価値観のようなところも重視しています。日本の医療・介護業界を発展させたい、働く職員の皆さんを幸せにしたいというHAグループの軸となる思いに共感いただけないような場合、やはりご縁を結ぶのは難しいと思います。

川崎病院様とのM&Aは、後継者不在の事業承継型でした。

川崎病院、外観
HAグループが譲り受けた千葉県の大多喜町にある川崎病院。現在も地元に欠かせない病院として地域医療の中核を担う。

川崎病院は、大多喜町唯一の総合病院であり、地域に欠かせない重要な病院です。経営は非常に優良ですが、理事長先生がご高齢になり、また親族内でも承継する医師がいないということで、患者様や職員の皆様のために病院を長く地域に残したいと、譲渡のご決断をされました。M&A後も経営は変わらず良好で、町ともしっかり連携をとりながら、医療・介護サービスの提供に取り組んでいます。一時的にご親族が事務長を務めていらっしゃる状況だったため、本部から事務長を派遣し、マネジメントの強化にあたっているところです。複数先の中から弊社グループを選定頂きましたので、気を引き締めながら、川崎病院のスタッフの皆様と地域医療を永く守っていきたいと考えています。

後継者不在のケースは多いのでしょうか。

大きく2つのパターンがあります。医療の質は高いが経営面で課題を抱え単独では解決できないようなケースと、経営は順調だが経営者がご高齢になられ、後継者がいない中で事業承継についてご相談いただくケースです。当グループではおおよそ7割が前者、3割が後者です。なお、単独法人ではこれからの時代を生き残っていけないと考え、経営も優良であるが「成長戦略」としてのグループ参画という事業承継もございます。

財務状況が悪くても、M&Aの可能性はあるのでしょうか。

可能性はあります。私たちは拠点エリア内の法人であることを前提に、地域医療における存在価値、医療・介護の質・内容などを総合的に判断しております。

例えば、保険医療機関の取消処分を受けることになった病院を譲り受けた事例があります。救急の受け入れも行い、地域にとって必要不可欠な病院で、すぐ近くにHAグループの病院があったこともあり、お引き受けしました。通常は3カ月程度かかる事業譲渡を1カ月で終えなければならず、とても大変でしたが、職員の皆さんもそのまま引き継ぎ、診療体制を維持することができました。その後は病床利用率も上がり、1年以上経過して経営状態も良好になっています。職員や地域の患者様から、病院が存続できて“ありがとう”というお言葉をいただけるのは仕事冥利に尽きます。

弊社とは長くお付き合いいただいていますが、仲介会社からの紹介は多いのでしょうか。

HA本部の太田氏、ストライクの箕浦
HA本部の太田氏(左)とストライクの箕浦(右)

はい。仲介会社から情報を提供していただくことは多いです。ストライクさんの良さは、譲渡側の医療法人に親身になって対応してくれるところだと思います。最近、社を挙げて医療業界のM&Aに取り組まれていて、サポートの質が上がっていると実感しています。今後はストライクさんが広く情報提供されることで、M&Aを検討される医療法人が増えることも期待しています。

現場で働く人たちの幸せも大切なミッション
マネジメントの見直しや増患対策により
収益をアップして職員に還元

事業承継後の運営体制を教えてください。

グループ本部から事務長などのスタッフを少なくとも週3日、必要な場合は常駐する形で配置し、マネジメント体制の構築に力を入れています。業務や運営面の改善・効率化については、必ず現場で働く職員の皆様と一緒に検討し、合意形成をとりつつ進めていきます。

グループに参画することで、具体的にどのような変化が起きるのでしょうか。

HA(ヘルスケアアクセラレーター)グループ 本部 太田 祐樹 氏
HAグループでは「現場で働く人たちの幸せも大切なミッション」と語る太田氏。業務プロセスの効率化やスタッフのスキルアップを後押しできる体制を整えることにも注力している。

共同購買を通じた薬価差益の見直し、グループ力を活かした業者交渉、診療報酬請求等の見直し、RPA等のテクノロジーを駆使した業務プロセスの効率化などを実行します。収益が上がった場合には、特別手当などを職員の皆さんに支給します。現場で働く人たちの幸せも大切なミッションですので、収益を上げ職員の皆さんに還元するというところは、特に意識して運営しています。また、グループにさまざまな機能の病院があることを活かして研修の機会を増やし、意欲あるスタッフのスキルアップを後押しできる体制を整えることにも力を入れています。

経営者である医師がそれまですべて一人で抱え込んでおられた経営課題から解放されることも、とても大きな変化だと思います。参画してくださった病院の先生方からは、肩の荷が下り、より医療に集中できるようになって嬉しいと仰っていただくケースも多いです。

職員の方々の待遇や仕事内容は変わらないのでしょうか。

待遇は変わらないのが基本です。また病院の機能を変えないので、仕事の内容も変わりません。この点については事業承継後すぐに全体説明会を開催、必要に応じて個別面談もしっかり行い、丁寧にご説明してご理解を得るようにしています。大量離職は、これまでの経験で一度もありません。

病院の機能に関しては、中長期的には変わる可能性もあります。療養病院が救急病院に一変するようなことはないですが、療養病院でリハビリを提供できるようにするというように、少しずつ医療機能や質を上げていくことはあります。長期的な目線で機能や質を見直すことは、事業の発展、地域医療への貢献のためにも重要です。

増患にも取り組まれるのでしょうか。

はい。例えば地域連携業務の見直しをします。私たち本部のメンバーが連携先のご施設を訪問し、HAグループの病院がどのような患者様(疾患など)を受け入れられるか丁寧にご説明して、患者様をスムーズにご紹介いただける体制をつくっていく。紹介患者様により早く入院していただけるように、現場の受け入れ体制の改善なども行います。実際、ベッドが半分しか埋まっていなかったような病院も含め、どの病院もほぼ100%、病床が埋まるようになっていっています。

最後に、後継者不在などの経営課題を抱える医療法人様へのメッセージがありましたらお聞かせください。

医療法人の方々はM&Aになじみがないと思いますが、経営者の高齢化も進む中、医療業界を発展させていくには、M&Aによるグループ化を進めることが必須になっていくと思います。国も「地域医療連携推進法人」制度を立ち上げるなど、地域医療の集約化、経営の合理化を推進しようとしています。デジタル化の推進、海外人材の登用・教育など、これから新たに取り組まなければならない課題も少なくありません。

私たちは今後とも経営マネジメントのノウハウを活かし、病院・介護施設の運営をサポートしたい、グループ群として地域医療を守っていく同志を増やしたいと考えています。事業承継を含め経営に悩んでおられる医療法人様にとって、HAグループへの参画が選択肢の一つになれば幸いです。

本日はありがとうございました。

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