INTERVIEW

M&Aは投資ではない!
順調なPMIの秘訣は
「独立性の維持」と「会社は人である」の思い

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(株)オービットの山田社長、(株)フジヤマの藤山社長、同 取締役の直也氏、ストライクの増田

株式会社フジヤマ 代表取締役社長 藤山 義修 氏(写真右から2番目)
株式会社フジヤマ 取締役 藤山 直也 氏(写真右から1番目)
株式会社オービット 代表取締役社長 山田 益司 氏(写真右から3番目)

静岡県浜松市にある、建設総合コンサルタントの株式会社フジヤマは、2019年に福岡市にある建設コンサルタントや測量サービスを手掛ける株式会社オービットをM&Aによりグループ会社とした。オービットはオーナーの他界後、オーナー夫人が会社の譲渡を決断。九州外で譲渡先を探していたところフジヤマが引き受ける形となった。M&Aの成約から3年、組織融和やPMIが非常に順調であり、オービットの業績も右肩上がりに。その秘訣はなにか。フジヤマ代表取締役社長の藤山義修氏、取締役の藤山直也氏、オービット代表取締役社長の山田益司氏の3名に伺った。

「独立性の維持」を心がけ、業績も伸び社員数も増加

会社を譲り受ける際にお相手に対して配慮されたことはどんなことでしょうか。

株式会社フジヤマ 代表取締役社長 藤山義修氏
株式会社フジヤマ 代表取締役社長 藤山義修氏

藤山義修氏(以下、藤山):グループになる際、私たちはお約束をしました。「オービットの独立性を守りながら、お互いの足りないところを補完し合って、ともに成長をしていきましょう」と。株主が変わったからといって「すべてうちの言う通りにしなさい」ということは一切言っておりません。「こうした方がいいんじゃないですか」とアドバイスすることはありますが、それが強要にならないように心がけました。

成約から3年ほど経過した現在、PMIが非常に順調とのことですが、その成功の要因とは何だと思いますか。

藤山:やはり、「親会社の言うことを聞く」という形ではなく、オービットの独立性や企業文化を維持しながら支援しているということだと思います。オービットにはオービットの強みがあります。そこは今後も伸ばしていただけるように尊重しています。具体的に言いますと、オービットは公共事業(国土交通省)の受注が多いんです。その点においては、フジヤマは弱い領域でしたので、グループになることによって助けていただける環境ができ、今はフジヤマもそうした受注が少しずつ増えてきています。

一方で、オービットの営業品目はある程度固まっているという面もあります。景気の変動などに強い組織にするには、より幅広い仕事に対応できたほうがいいのではないかと考え、その点はさまざまな仕事を手掛けているフジヤマから新しい技術をオービット側に移植し、徐々に営業品目を増やしていこうとしています。オービットとフジヤマは営業区域が重ならないので、そういった面ではお互いうまく補完し合うことができています。

藤山直也(以下、直也):業績はありがたいことに順調に伸びており、それに伴い社員の給与も上がっています。また、グループ化以降、オービットには新たに17人が入社。2023年4月にはさらに2〜3人が入社予定で、社員も増えました。オービット社員にアンケートを取ったところ、「悪くなった」と回答した人はゼロ。みなさん「良くなった」あるいは「以前と変わらない」と回答。我々がオービットの独立性を守っているということが社員のみなさんにも実感してもらえているのだと思います。

山田益司氏(以下、山田):小さい会社、大きい会社、それぞれ課題も悩みもあると思いますが、小さい会社だと「こうなりたい」という希望があってもなかなか実現できない。それがフジヤマさんと一緒になったことで、明るい夢を追えるようになりました。フジヤマさんは今年度からグループ統括室を作り、グループとして進むべき指針となるビジョンを制定しました。また、8年間の計画も作っています。この8年を大切にすることによって、次の10年が開けていく。グループ全体の未来に向けて引っ張っていっていただいています。

株式会社フジヤマ 取締役 藤山直也氏
株式会社フジヤマ 取締役 藤山直也氏

直也:今の時代、一社でできることには限界があります。オービットもフジヤマも、一緒になることで、それぞれ単体でめざしていた目標よりももっと先まで行ける可能性が見いだせると思います。「M&A」というと「乗っ取られるんじゃないか」とマイナスのイメージを持つ人もいるかもしれませんが、一緒になることで自社の身の丈以上に伸びていく。他のフジヤマグループの会社もそう思ってもらえれば、一枚岩になっていくのではないでしょうか。これからもグループ会社が数社増える予定ですので、「フジヤマグループに入れば大手と何ら変わりない」と思ってもらえるようにしていきたいと思っています。

今後大きく成長するための課題も新たに見えてきた

両社の組織融和に向けてどのようなことに取り組まれましたか。

直也:人事交流を積極的に行っています。短期の場合もあれば、長期で転籍するケースもあります。社風が違うわけですから、ただ単に「2社で仲良くしよう」と言うだけで実現するほど甘くはありません。実際に人が行き来することでわかってくることがたくさんあります。フジヤマにとっても、フジヤマのことしか知らない社員がオービットに行くことで違う発見があり、いい効果を生み出してくれていると思います。

山田:そうですね。言葉だけでは伝わらないことでも、実際にフジヤマ本社に行って見れば、「百聞は一見にしかず」ということでわかることもたくさんあります。身を持ってわかったことは、他の社員にも情報が共有できるようになります。

藤山:我々も「静岡県内でトップの実績」なんて言っても、井の中の蛙でローカルなことしかわからなかったのが、オービットのオペレーションを知って視野が広がりました。

直也:情報が入るようになったことが、オービット社員にとってもメリットの1つとなっていると思います。今までは業界内でお付き合いはあっても、他社はライバルですから当然すべてをさらけ出すことはないですよね。でも、フジヤマとは同じ会社のようなものですから、内部の制度に関しても全部見せていますし、経験や知見の共有や機器のご提供もすぐにできます。社員にとって相談できる場所があるというのは、安心感につながるのではないでしょうか。

3年経って見えてきた課題はありますか。

直也:課題はオービット社内の制度の整備です。オービットはこれから小規模から中規模の企業に成長していきます。その時に、福利厚生や人事・労務管理を含め制度が確立できていないと足かせになる可能性があります。整備していくことで社員のエンゲージメントが高まり、「もっと会社に貢献したい」と思ってもらえるでしょう。そうした環境をつくることが大きな課題です。業務や技術力に関しては、一定の分野においてオービットはフジヤマ以上のものを持っているので、そこは今後も伸ばし続けて、さらにフジヤマから必要なエッセンスを取り入れながら新規分野を拡大していけたら、10年後、20年後にグループ会社になった意味が結果として表れると思います。

株式会社オービット 代表取締役社長 山田益司氏
株式会社オービット 代表取締役社長 山田益司氏

山田:直也さんの言ったことは核心を突いていると思います。中小企業を大きくしようとするときには制度作り、システム作りが重要。それが中小企業単体だとなかなか作れないのです。先を歩いている人から「ここが遅れている」とご指摘してもらい、土台を作っていく。その土台の上に、また次の土台を作っていけるようになると思います。

藤山:結果的には「この会社に勤めてよかった」と従業員のみなさんに思ってもらうことが一番ですね。

直也:フジヤマグループ全社の従業員がそう思ってもらうことを目標にしています。

約1年かけてしっかりと話を聞いて交渉を進める

ストライクのサービスや担当者について、良かった点や改善すべき点はございましたか。

(株)オービットの山田社長、(株)フジヤマの藤山社長、同 取締役の直也氏、ストライクの増田
写真左より、ストライクの増田、(株)オービットの山田社長、(株)フジヤマの藤山社長、同 取締役の直也氏

直也:M&Aの交渉にあたり、オービットはオーナーと経営者が違うということで難しい点がありました。経営陣は今後の経営を心配されているでしょうし、オーナーはできるだけいい条件で売却したいでしょう。我々も言いたいことを言いますし。我々としては、オービットの経営陣が納得できる形にすることに注力し、担当の増田さんには山田社長をはじめ経営層の方がどう考えているのか、細かくヒアリングしてもらいました。オービットが我々に直接言いにくいことも増田さんが間に入ってくださったおかげで言っていただけたように思います。そうして、増田さんには3者の意見を調整しながら話を進めていただき、ご苦労をおかけしました。最終的に成約まで約1年かかりました。

山田:我々としても不安はありますし、買い手の会社が持続的な成長を支援してくれるかどうかを見極めたいという思いがあり、契約がまとまるまではしっかりと話をさせていただきました。フジヤマさんは我々の経営スタンスを踏まえて、本当に大事にしてもらえる会社だと感じました。

藤山:オーナーさんと経営陣が違うことによって、オービット社員に「オーナーさんが勝手に売ってしまった」というイメージを持たれてしまうと不満が残り、その後の経営がうまくいかないので、そうならないように留意して仲介いただきました。

成長戦略としてM&Aを検討している経営者の方に向けて、M&Aを成功させるためのアドバイスをいただけますでしょうか。

藤山:端的に言えば「無理せずに地道にやっていく」ということしかありません。私は短期的に業績を上げて投資資金を回収するというようなM&Aはやりたくない。長い目で見てグループ全体が成長して、みんな仲間として一緒に美味しいご飯を食べることが一番です。

静岡県浜松市にあるフジヤマ社の事業本部
静岡県浜松市にあるフジヤマ社の事業本部

直也:業務内容、エリア、人材の3つをよく考慮してM&Aを進めていくことになると思いますが、買収先のことを「投資対象」とは捉えるべきではないと私は思います。もちろんビジネスなのでかけたお金はどこかで回収しなくてはなりませんが、相手は「会社」といってもそれは「人」。会社は人の集まりです。数字だけを見て判断するのではなく、社員1人1人とどう向き合うか。特に、我々の業界は人が財産であり商品でもあります。フジヤマグループは100人以下の規模の会社を対象にしているので、経営陣はもちろんその後ろにいる社員のみなさんの顔が見える。常に人を意識して、対象の会社のことをよく見ることが大切だと思っています。自社の社員が増えると考えればいいですね。社員みなさんの人生を背負うつもりで引き継いでいくことが大切だと思っています。

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