ご成約インタビュー No.120
INTERVIEW
保育ニーズに応え、社会課題を解決
M&Aによる事業成長と、地域を支える保育・福祉の未来
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株式会社Branches 代表取締役社長 権藤 光枝氏
福岡市を拠点に、小児に特化した訪問看護、重症心身障害児向けの放課後等デイサービスや児童発達支援、就労継続支援事業など、多岐にわたる保育・福祉事業を展開する株式会社Branches(福岡県福岡市)。自身の経験から「いつでも預けられる保育園を作りたい」という強い想いを胸に起業した権藤社長に、関東エリア進出の足がかりとなった株式会社キッズわん(神奈川県川崎市)のM&Aについて伺った。
保育・福祉への強い想いと事業の多角展開
まずは事業内容や特徴についてお聞かせください

当社は小児に特化した訪問看護事業、重心型といわれる重度の身体障害と知的障害を併せ持つ重症心身障害児を対象とした放課後等デイサービス、児童発達支援事業を展開しています。会社の約7割が保育事業ですが、訪問看護や重心型放課後等デイサービスの運営などを含めて当社のコアな事業となっています。
それ以外に、看護師、保育士、理学療法士といった専門職に特化した有料の職業紹介も行っています。訪問看護事業の運営のお手伝い、開設サポートも手がけていますね。こちらは、小児や母子に特化した訪問看護事業を始める方へのサポートが中心です。
事業の特徴や強みにはどのようなことがありますか?
まず、保育園では通常預かれない病気の子どもさんを、一時的にお預かりする病児保育を行っている点が挙げられます。それから、医療的ケアが必要なお子さんや、国の指定難病のお子さんの在宅支援にも力を入れています。福岡市では、当社が民間で初めて医療的ケア児を受け入れ可能な保育園を開設しました。兵庫県でも事業を展開していますが、同様の保育体制を整えています。訪問看護との連携が強みになっていますね。
重心型のデイサービスも特徴的だと伺っています。
重心型の放課後等デイサービスは、採用や設備の関係で、民間の参入が少ない分野です。看護師や理学療法士などの専門職が必要になりますし、福祉車両も特殊なものが必要になるので、どうしても参入障壁が高くなってしまいます。ですが、お子さんを預けたくても預けられないご家庭が多いので、少しでもお役に立てればと思っています。
権藤社長が保育事業を始められたきっかけについてお聞かせください。

私は元々美容師として働いていたのですが、土日祝日に子どもを預けられる保育園が少なく、本当に苦労しました。女性が子どもを産むと、キャリアを諦めざるを得ない状況に違和感を覚えて、「いつでも預けられる保育園を作りたい」と思ったのがきっかけです。
創業当初は深夜や早朝に仕事をしているお母さんにとって、少しでも助けになればと思って、お子さんを24時間預けられる体制にしていました。
M&Aによる関東進出と今後の事業戦略
今回、譲受されたキッズわん様は関東エリアの会社です。譲受された経緯や狙いについてお聞かせください。
当社は福岡県内と、関西エリア(兵庫県)で事業を展開していますが、実は以前から関東エリアへの進出を考えていました。ただ、保育事業というのは用地取得が難しかったり、地元の業者さんが強かったり、という課題もあり難航していました。M&Aを活用した進出も検討はしていたのですが、なかなか良い案件に巡り合えない状況でした。
今回、キッズわんのM&Aに至ったのは複数の事業所を近接したエリアで運営されており、自走も出来ているからです。事業所が点在していると管理の手間を考えて躊躇してしまうこともあるのですが、川崎市内を中心にある程度まとまったエリアで複数の事業所を展開し、しっかりと実績もある点が決め手になりました。
エリア選定はどのようにされたのでしょうか?
保育園事業は、自治体の公募があるエリアに進出するので、実はエリアを絞る必要があまりないんです。自治体が募集をかけているということは、保育園が足りていないということなので、募集がかかった時点でニーズがあることがわかりますから。
今回のM&Aでご苦労された点などはありましたか?
そうですね、今回のM&Aは、事業譲渡を実施した設立間もないキッズわんを譲り受けるという手法でした。キッズわんが設立直後だったということもあり、資料の読み解きには時間がかかりました。当社の経理や総務の担当者は苦労していたようです。M&A後は共通の管理資料を整備していくのが大変だな、と感じています。
キッズわん様の従業員の皆様のご印象はいかがでしたか?

従業員の皆さんは、現場中心で事業運営を行ってきたこともあり、「自分たちで会社を大きくしてきた」という自負とプライドを持っていました。
経営を任せられるという安心感があり、自分たちで事業を運営していくという意識が高いと感じました。一方で、現金管理など、今後改善が必要な点は、Branchesの事例も交えながら適切な方法を提言しています。採用や求人に関しても、自分たちで判断して進めているので、信頼しています。次の展開の話など、キッズわんのメンバーと話していると「こういうものを作りたい」という要望や、「Branchesのノウハウでこういうことができないか?」という話が出てきます。成約して2カ月くらいの段階でこういった話が出てくるのはいいスピード感だと思います。
会社の成長を支える「人」と「理念」
今後の両社の協業や事業展開についてお聞かください。
まずは、関東エリアでの事業展開を視野に入れつつ、18歳以上の障害者の就労支援など、新たな事業の可能性も模索しています。具体的には、就労継続支援B型事業所や、日中の活動の場である生活介護事業所の開設も視野に入れています。今回のM&Aで福岡・関西・関東と複数のエリアで事業を展開できるようになったので、地域間で研修を行ったり、それぞれの地域での事例を共有したりすることで、サービスの質を高めていきたいと考えています。こういった事例の共有は従業員のキャリア形成にも繋がると思うので、良い効果があるのではないかと期待しています。
今回のM&Aでどのような相乗効果を期待されていますか?
エリアごとに、いわゆるドミナント戦略という形で福岡県内を中心に少しずつ規模を増やしていく傾向にありました。関西も同様で、エリアごとに事業所の数を増やしてきたので、関東も同様に規模を拡大していく予定です。当社はエリア同士の横の繋がりを大事にしているので、どこの事業体も似たような仕事と職種については研修など取り入れています。特に理学療法士・作業療法士は一事業所あたりの人数が少なく、相談相手がいないという状況になるのですが、エリア間の横の繋がりがあることでお互いケーススタディになりますから、ここは注力していきたいと考えています。事例の比較対象が増えるので、スタッフの底上げに繋がるといいですね。当社ではエリア間で異動する場合もあるのですが、今後は関東という選択肢も増えます。様々な事情があっても異動で済むならキャリアを続けていくことができます。
今後のM&A戦略についてお聞かせください。
当社の直営による保育園の展開は、一旦落ち着くかなという感じなので、M&Aも視野に入れて、事業規模の拡大を目指していきたいと考えています。実は、2025年6月にも福岡市内の放課後等デイサービスを3ヶ所譲り受ける予定です。
ストライクのサービスや担当者についてのご感想をお願いいたします。

担当の渡邉さんは数字面で的確でしたし、キッズわん側の要望だけでなく、当社との落としどころになる点についてプラスになるご意見をたくさんいただけて助かりました。
最後に、経営者に向けたメッセージをお願いいたします。
会社の成長には、やはり「採用・教育・育成」が不可欠だと思います。どんな人を採用して、どのように育てていくのか。それが会社の成長を大きく左右すると考えています。
私は、「儲かりそうだからやる」という事業はやらないようにしています。世の中に必要とされているか、誰かのためになるか。そこを重視して事業を展開していくことが大切だと思います。また、会社の理念をしっかりと浸透させることが、従業員の主体性を育む上で非常に重要だと考えています。理念が浸透していれば、従業員は自分で考えて行動できるようになりますから。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(渡邉 拓己・法人戦略部アドバイザー談)

キッズわん様は神奈川県で放課後等デイサービスを5拠点営む企業でございます。
後継者不在を理由に弊社にご相談をいただいたのですが、非常に社会的意義の強い企業ですので、この事業を途切れさせるわけにはいかない、是非とも理想のお相手をお探ししたいと考えておりました。
その中で、関東進出を検討されていたBranches様とのご縁をお繋ぎすることができました。 Branches様は福岡を拠点に、兵庫・沖縄で多岐にわたる保育・福祉事業を展開されており、かつ、重心型の放課後等デイサービスも営まれていることから、同じく重心型も営まれているキッズわん様の事業を非常にスムーズに理解いただきました。
最終段階で行われた従業員の皆さまへの説明会では、権藤社長のお言葉に私も非常に感銘を受けました。
キッズわん様を新たに仲間に迎え入れられたBranchesグループ様の今後の更なる発展を願っております。
2025年6月公開
本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
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