ご成約インタビュー No.121
INTERVIEW
JR北海道グループに聞く、M&A戦略とインバウンド事業拡大
合同会社BASE JAPANをグループ化
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北海道旅客鉄道株式会社 開発事業本部部長 栗山恒幸氏
北海道ジェイ・アール都市開発株式会社 代表取締役社長 横山浩二氏
(※役職等は2025年5月時点のもの)
北海道旅客鉄道株式会社(JR北海道)は、北海道新幹線の札幌延伸を見据え、経営自立に向けた事業構造の変革に取り組んでいる。その戦略の一環として、北海道ジェイ・アール都市開発株式会社(JR都市開発)を通じ、2025年3月31日付で合同会社BASE JAPAN(BASE JAPAN)の全出資持分を取得し、子会社化した。 本インタビューでは、JR北海道 開発事業本部部長 栗山恒幸氏と、JR都市開発 代表取締役社長 横山浩二氏に、中期経営計画策定後の第一号案件となったM&Aの経緯や今後の展望について話を伺った。
M&A戦略の第一歩:BASE JAPANの子会社化
今回のM&Aは、中期経営計画策定後の第一号案件とのことですが、BASE JAPANの子会社化を決めた戦略的な理由についてお聞かせください。

北海道ジェイ・アール都市開発株式会社 代表取締役社長 横山浩二氏(右)
栗山:JR北海道グループでは、北海道新幹線の札幌開業を機に経営自立を目指し、長期経営ビジョンを2019年に策定しました。そのビジョン達成のための戦略の一つとして、開発関連事業の拡大を掲げています。M&Aは、2024年からの3年間の中期計画において、新たな事業領域への挑戦として位置づけられています。BASE JAPANについては、JR都市開発の不動産事業の拡大と、当社が取り組んでいるインバウンド事業の拡大、そしてJR都市開発が所有する無人ホテル「JRモバイルイン」の事業拡大につながるという観点から取り組みました。
横山:BASE JAPANは、札幌市内のホテル集積地であるすすきので、アパートメントホテル「THE BASE SAPPORO SUSUKINO」を運営しており、インバウンドのグループ客に人気があります。このホテルをグループに加えることで、インバウンド需要の取り込みを強化できると考えました。
JRモバイルインとのシナジー
JR北海道グループで運営する無人ホテル「JRモバイルイン」との協業について、具体的にどのようなシナジーを期待されていますか?
横山:JRモバイルインは千歳と琴似にありますが、千歳はラピダスなど半導体関連事業の関係者の長期利用が多い一方、琴似はインバウンドの利用が多いです。今後、JRモバイルインをさらに立ち上げる予定ですが、それぞれの客層が異なるため、「JRモバイルイン」と「THE BASE SAPPORO SUSUKINO」がプロモーションで連携し、相互送客することで相乗効果が生まれると考えています。
栗山:これまでのインバウンドへの取り組みは、「JRタワーホテル日航札幌」や「JRイン」などのJR駅近くのシティホテルや宿泊特化型ホテルが中心でしたが、「THE BASE SAPPORO SUSUKINO」を加えることで、グループ客や駅周辺以外のエリアへの進出も可能になります。
インバウンド戦略と札幌駅周辺の再開発
増加するインバウンドの需要を取り込むために、どのような戦略をお持ちでしょうか?

栗山:鉄道を基軸として、北海道レールパスやジャパン・レール・パスなどの乗り放題パスを中心に、海外向けのプロモーションを大きく展開しています。現地でのプロモーションやデジタルプロモーション、インフルエンサーの活用など、様々な手法を組み合わせています。また、二次交通としてのレンタカーや、宿泊施設、コンビニ、土産物店など、グループ会社と連携しながら、共同プロモーションや割引などの販促を行い、旅行中の様々な場面で利用していただけるような仕組みを構築しています。
札幌駅周辺の再開発との連携
北海道新幹線の札幌延伸を見据えた、札幌駅周辺の再開発とどのような相乗効果を期待されていますか?
栗山:札幌駅周辺の再開発によって、海外からの流入がさらに増え、賑わいが活性化すると期待しています。札幌駅前再開発の完成にはまだ時間がかかるため、それまでの間にできることとして、今回のホテル事業を含め、様々な需要を当社グループ内で取り込めるよう検討していきたいと考えています。
多様化する宿泊ニーズへの対応と今後の展望
「THE BASE SAPPORO SUSUKINO」は代表社員 山中利浩氏1名で運営されていたとのことですが、今後の運営体制についてどのようにお考えでしょうか?また、名称変更は検討されていますか?
横山:創業者の山中様の思いを尊重し、名称は今のところ変える予定はありません。運営は、JRモバイルインと同様に、無人運営にシフトする予定です。
今後のM&A戦略
不動産、宿泊施設につきまして、今後のM&Aの可能性をお聞かせください。

栗山:良い物件があれば、不動産・宿泊施設とも積極的に検討していきたいと考えています。
グループ戦略の中で、観光や振興に関連したM&Aも検討されていますか?
栗山:M&Aは新規事業の手法の一つと考えています。北海道では食と観光が大きなコンテンツですので、それに絡んだ形で進めていければと考えています。既存事業とのシナジーも考慮しながら、食品の製造・販売や飲食店のM&Aなども検討していきたいです。
JR北海道グループのまちづくり戦略
札幌駅周辺の再開発など、大型プロジェクトが進む中で、まちづくりに関してどのような戦略を考えておられますか?
栗山:長期ビジョンの中で、鉄道の活性化とまちづくりによって、「住んでよし、訪れてよし、北海道」というキャッチフレーズを掲げています。鉄道をはじめとする当社グループのサービスを日々の生活や旅行で使っていただくことで、沿線にお住まいの方々にとって賑わいのある住みやすい北海道にしていくことと、観光客の方々には北海道の価値を体験していただき北海道にまた来ていただくことを目指しています。
M&Aの過程とストライクへの評価
BASE JAPAN代表社員 山中利浩氏との最初の面談で、どのような印象を持たれましたか?
栗山: 非常に実直で誠実な方だと思いました。ホテルを立ち上げられた経緯や、お客様に対するホスピタリティなど、共感できる点が多かったです。今回のM&Aの成約に至った大きなポイントは、物件や業績の魅力もありますが、なによりも山中様のお人柄だったと感じています。
M&Aを進める上での苦労
M&Aを進めるにあたり、苦労したポイントはありますか?
栗山:当社にとってM&Aは久しぶりで、JR都市開発にとっては初めてのM&Aだったため、社内意思決定を含めて慎重に進めさせていただきました。社内検討・意思決定にあたっては、様々な情報収集や議論に想定していた以上に時間がかかり、山中様やストライク様にもご心配・ご迷惑をお掛けしました。
横山:他の開発案件との優先順位付けや、社内の意見をまとめるのが大変でした。最終的には社長判断で決断しましたが、新しいことにチャレンジする必要性を感じていました。
ストライクへの評価
ストライク担当者の印象、仕事ぶりはいかがでしたか?
栗山:中辻さんには、手続きやデューデリジェンス、社内意思決定など、様々な面でサポートしていただきました。中辻さんがいなければ、今回の成約には至らなかったと考えています。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(中辻 智哉・北海道営業部 シニアアドバイザー談)

JR北海道グループ様にとって中期経営計画策定後初めてのM&Aに携わることができ、大変光栄に思います。
ご縁が実現するまでに乗り越えなければならない壁もありましたが、グループ一丸となって誠実かつ熱心にご対応いただき、一段ずつ階段を登りご縁が結ばれました。
ご両社がお互いに尊重し合い、将来的な連携についてそれぞれの強みを持ち寄って前向きな構想を描かれていたことが印象に残ります。
長期ビジョンの戦略の一つとして、「開発・関連事業の拡大による事業構造の変革」を掲げられており、その一つの手段であるM&Aを通じて今後もJR北海道グループ様の更なる発展に貢献できれば幸いです。
2025年6月公開
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