INTERVIEW

医療のトータルサポートを行う新進企業
明治創業の産婦人科・小児科病院の
経営・運営支援に乗り出す

  • #後継者不在
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  • #企業再生
  • #老舗
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セントラルメディエンス グループ 代表取締役 中川 隆太郎 氏

セントラルメディエンス グループ 代表取締役 中川 隆太郎 氏

心と体のヘルスケアサポート事業を展開する株式会社セントラルメディエンス(東京都港区)は2023年4月、医療法人財団小畑会 浜田病院 (東京都千代田区)がグループ傘下に入ることを発表した。同社は医療人材紹介、医療資材の調達、バックオフィス強化などさまざまなリソース、ノウハウを提供することで病院の収益構造の改善をサポートしており、浜田病院についても経営・運営支援を行い収益化を図っていく。同社代表取締役の中川隆太郎氏に事業の特長や今回の譲受の目的、今後のM&A戦略などについてお話を伺った。

人材から医療資材まで
ベストプライスで提供
病院の収益化を実現

起業の経緯や御社の事業内容を教えてください。

セントラルメディエンス 取締役 院長 竹村 誠一 氏
今回、お話を伺ったセントラルメディエンスグループ代表取締役の中川 隆太郎氏。

私は医学部卒業後、海外の大学で予防医学の研究をする中で健康診断データの有用性に気づき、2018年、帰国を機に産業医の紹介事業を行うヴェリタス社と、健康診断などのデータ解析を行うメレコム社を設立しました。2021年1月、2社を1つにする形で生まれたのがセントラルメディエンス社です。現在は医師や看護師の人材紹介、医療機関のバックオフィスのマネジメント、医薬品・医療資材の卸販売、関連会社では広報・プロモーションを行うなど医療サポートを一貫して行える事業を展開しています。

事業の特長は?

我々が目指すのは医療の最適化であり、人材から医療資材・プロモーションまでベストプライスで提供する体制を整えています。日本の診療報酬体系は、経営がきちんと行われていれば収益が出るようできているのに、赤字の病院が存在する。その問題を解決するためです。医薬品や医療資材は価格がブラックボックスの業界と言われています。同じ医療機器をA病院は2000万円、B病院は1000万円で仕入れている、というようなことがよくあります。人材採用も病院の経営を圧迫する要因の一つで、人材紹介会社に年間数千万円を支払っている病院が少なくありません。それでは経営は傾いてしまいますし、逆に言えば、その部分を効率化できれば黒字になります。特に人材紹介は我々の得意分野で、現在、医師1500人、看護師5000人の登録があり、ベストプライスで最適な人材をアサインすることが可能です。

病院のM&Aを行うようになったきっかけは?

我々はM&Aにより病院グループをつくろうとしているわけではありません。ただ、病院の永続的な経営、収益化のためにやるべきことは多く、長年の慣習、しがらみを変える必要も出てきます。「この業者は断れない」といった問題にぶつかることが少なくないので、我々がその医療経営に加わることで削るべきものを削り、クリーンな経営環境にしていく。そのために譲受を行い経営に参画しています。人材採用や資材調達、DX化なども含めバックオフィス業務を任せてもらって、業務改革を進めていくイメージですね。医療と経営の分業を図ることで医師が医療に集中できるようにしたいので、診療方針・体制を変えることは基本的にはありません。ご勇退される場合は別として、理事長・院長先生にそのまま診療を続けていただくのが理想だと思っています。実際、医師が経営から実務まで担うのは負担が大きすぎます。保険点数制度ひとつとっても改訂が頻繁で、把握しきれずに過剰請求や過少請求が起き、取り漏れが生じている病院が多いことも事実です。

業務改善やコスト削減は
経営状況・課題の“見える化”がカギ

浜田病院様の譲受の目的を教えてください。

浜田病院
JRお茶の水駅からすぐの場所にある浜田病院は明治時代から約120年続く歴史ある病院。

浜田病院は、明治時代からおよそ120年続いている歴史ある病院で、年間4万人の患者さんを抱え、地域の産婦人科、健診業務を担っています。特に産婦人科領域においては、多くのお産を取り扱っているだけでなく、不妊治療にも力を入れています。女性にやさしい病院は必ず地域にとって必要な病院です。我々のサポートが必要ならと事業承継のご相談を受けて、ぜひ一緒にやっていきたいと思いました。これからのよりよい女性医療のために、そして患者さんのために残していくべき病院だと思い、譲受を決めました。

M&A後、変化はありましたか?

温かみのある院内の様子
温かみのある院内の様子。

理事長はご勇退されましたが、診療体制は変わっていません。今後は産婦人科だけでなく、小児科や女性外来も充実させる方針です。いずれ病児保育もやってみたいですね。女性が「困ったときは浜田病院へ行けば大丈夫」と思える病院にすることが目標です。将来的には皮膚科などの設置も考えています。

コスト削減は進んでいますか?

浜田病院に限らず、最大の問題は職員が病院の経営状態を知らないことです。部長クラスの人でも赤字とは知らずに「うちの病院は安定しているから経費削減なんて必要ない」と考えていたりするので、運営会議に部長や師長に出席してもらい、病院や各部門がいくら売り上げているのか、コストは何にいくらかかっているのか、まずは数字を明確に示して把握してもらいます。現場のコスト削減も“見える化”がカギです。例えば病棟によって種類も発注先も異なっていたグローブを、まとめて発注することでコストを下げるとき、「グローブをA社からB社に変えれば年間○○円のコスト削減になる」とはっきり伝えます。そうすると「A社のほうが使いやすかったけれど、それならB社でもいいね」というように、皆さん抵抗なく受け入れてくれるものです。

グループの力で
継続的な投資を可能にし
医療の質をアップデート

グループ参画の対象になるのは、どのような病院でしょうか。

病院であれば、すべて対象になりえます。場所も問いません。むしろ地方の病院こそ、当社のサポートが活きるのではないでしょうか。私は、M&Aは先方のキーパーソンと会って話をするところから始まると思っています。どんな思いで診療をしてこられたのか、地域でどんな存在の病院なのか。今後どのような病院にしていきたいのか。いろいろなことをお聞きします。借入金があって経営が厳しくても、地域にとって欠かせない病院や、真摯に医療を行っている病院なら、我々ができるサポートを考えたい。逆に、資料を見てシナジーが期待できると思っても、お会いしてみると一緒にやっていくのは難しいと思うこともあります。一番大切なのは、患者さんのために医療を行っているかどうかです。

病院経営に関して、今後の目標を教えてください。

バックオフィス業務全般を一気通貫でサポートできる体制をつくって、グループ病院だけでなく、アライアンスを組んだ病院にもそのノウハウ、リソースを活用してもらえるようにしたいです。その一つの案が、各病院の電話対応の集中化です。通常、病院にかかってきた電話は受付の人が出ますが、わからないことがあるとすぐ看護師さんにつなぎます。でも、看護師さんは自分の業務で忙しいので、結局、受付の人も看護師さんも電話をかけた患者さんもストレスを感じてしまうことになる。そこで、当社にグループ病院の電話すべてに対応するコールセンターをつくり、必要な問い合わせのみ病院にフィードバックする仕組みを考えています。予約システムともつなぎ、予約対応もできるといいですね。病院で働く人たちが目の前の患者さんの対応に集中できる環境をつくることが目標であり、そのためにはグループを大きくすることも必要だと考えています。

グループ化のメリットを最大化していく?

はい。各病院を継続的に投資ができる体質にすることも重要です。病院の投資は額が大きく、検査機器などは億単位の費用がかかるので、グループの力で融資額を上げ、投資して収益を上げ、さらに良い病院になる――というサイクルをつくっていく。投資ができないと医療の質をアップデートできません。患者さんのためにも継続的に投資し医療の質を上げていくことは必須です。

規模拡大の目標はありますか?

セントラルメディエンス中川氏、ストライク浅見
セントラルメディエンス社のオフィスエントランスにて(写真右はストライクの浅見)

ある大手病院グループは年間、数億円規模の資金を地域医療や離島医療に投入しています。それができるのはグループで大きな医業収益を上げているからです。必要としている人たちに医療を届けるには資本力が欠かせないので、業界トップを目指し規模の拡大を図りたいと考えています。

最後に経営課題を抱える医療法人様へのメッセージをお願いします。

一つの病院だけで成長していくのは非常に難しい時代です。中小企業もそうですが、伸び率が見えなくなった時点でM&Aは有効な選択肢となります。グループの傘下に入り、サポートを受け資本施策や成長戦略を計画・実行していくことが、職員や患者さんをハッピーにする一つの方法ではないでしょうか。最初にお話ししたように、患者さんのためにきちんと診療をして、きちんと診療報酬を請求すれば必ず黒字になります。赤字になるのは何か問題があるからで、その問題を“見える化”して解決に導くのが我々の仕事です。地域のため、患者さんのために「病院を存続させよう!」という意気込みと目標を持つ病院の皆さんと、30年先、50年先、100年先の医療をぜひ一緒に考えていきたいです。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(浅見 雄人・事業法人部アドバイザー談)

ストライク浅見

浜田病院様は、明治27年に開業をして以来、御茶ノ水の地で100年以上の歴史を持つ産婦人科病院です。理事長の後継者不在を理由にM&Aのご相談をいただきました。日本でも有数の歴史ある病院ということで、業界でも非常に重要な事業承継になると思いました。セントラルメディエンス様はいち早く関心を示していただき、中川社長には何度も病院に足を運んでいただきました。最終的には中川社長の浜田病院様に対する真摯な姿勢とセントラルメディエンス様のグループ力が決め手となり、無事にご成約に至りました。歴史ある病院の浜田病院様と成長企業のセントラルメディエンス様の良いご縁であると感じております。双方の強み・ノウハウを活かし、共に更なる成長・発展を遂げていただきたいと願っております。

株式会社セントラルメディエンス

2018年創業。経営理念「革新的な医療サービスの創造」のもと、医療機関の最適化を医療従事者と共に追求し、変革に向けた各種のメディカルサポート事業を展開。クリニック・病院の運営も行っており、現在は自社で立ち上げた都内の美容クリニックと、M&Aでグループに加わった複数の病院を運営している。2023年8月1日より、出版メディア「からだにいいこと」を主体とした「株式会社セントラルメディエンス コミュニケーションズ」を設立、メディア・コンテンツ制作にとどまらず、制作・マーケティング・PRまで一貫して健康・医療に貢献する組織を目指す。

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