INTERVIEW

譲渡した事業が成功すれば信用が生まれ、
その信用が経営者としての貴重な個人資産になりうる

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池田 朋弘 氏

株式会社MIKATA 前代表取締役、株式会社ポップインサイト 代表取締役CEO 池田 朋弘 氏

不特定多数の技術力のある個人と業務発注をしたいクライアント企業をインターネット上で結び付ける「クラウドソーシング」ビジネス。在宅ワークなど働き方の多様化と新しい人材との出会いやコスト抑制を図りたい企業のニーズを背景に、近年大きな広がりを見せている。
2015年に設立されたMIKATAは、そのクラウドソーシングを手がける会社として急速に発展。そして、設立2年後の今秋には売却が成立した。
拡大する市場において的確にビジネスシーズ(種)をとらえ、次々と新事業を立ち上げる気鋭の起業家にその事業観やM&A観を伺った。

大手が取り組みにくい事業の種を見つけ、育てる
社会的役割分担としてのM&Aとは

池田様のご経歴やMIKATAの設立経緯について教えてください。

在宅ワークス
在宅ワークスhttps://zaitaku-workers.com

私は現在32歳ですが学生時代から含めると4社の立ち上げに携わりました。1社目は大学在学中で、1つ上の学年の優秀な方と一緒にCTOとして起業しました。地域のクーポンサイトから始まり途中から近隣の店舗にフリーペーパーを置いてもらう事業などを展開、その後は中小企業向けCMSを開発しました。その会社は大学4年のときに上場企業に売却しました。これが最初の起業と売却の経験です。

卒業後はWEBコンサル会社に入社したものの、学生時代に一緒に起業した方がまた立ち上げた新しい会社のマーケティングを手伝ったりしていました。これが2社目です。周囲では起業が普通の選択肢としてあって、しかも彼らはワクワクしながらビジネスをやっている。そこで私も海外で取り組まれていた「リモートユーザテスト」という仕組みを自分で作り、それをもっと広げるため2013年に独立して(株)ポップインサイトというリサーチ会社を設立しました。これが3社目の立ち上げです。

ポップインサイトでは、リサーチに協力してくれるモニター人員を集める必要がありました。そこで、信頼できる口コミレビューサイトがあればモニターを誘導できるのではないかと考えて個人事業として口コミサイトを開設しました。そうしたら、これが見事に当たりましてモニター人員の余剰も生まれました。ポップインサイト以外の受け皿としてクラウドソーシングサイト「在宅ワークス」を作りクラウドソーシングビジネスの市場が拡大する時流にうまく乗る形で一気に業績が伸長しました。2015年1月には個人事業主から法人に切り替え、4社目となる(株)MIKATAを設立しました。

会社の譲渡を検討されたきっかけは?

池田朋弘氏ストライク永岡
「M&Aは起業家にとって重要な選択肢の一つです」と話す池田氏(写真右)。
写真左はM&Aを担当したストライクの永岡。

もともと会社を起業して売却する人が周囲に多くいたので会社の売却は特別なことではありませんでした。売却を前提に事業を行なうことに良くない印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、感覚としては大手企業がなかなか取り組みにくい事業の種を見つけてきて育てる、その新規事業開発を代行しているようなもの。社会的な役割分担のようなイメージではないでしょうか。

また、これまでの経験から私自身は一つの企業を大きく育て上げるというよりも起業家としてさまざまな事業をスモールスタートで立ち上げていくことに面白みを感じるタイプだとわかってきましたので、今後の選択肢の一つとしてM&Aという手段を熟知しておく必要があると感じていました。このような背景の中でMIKATA事業が順調に成長してきたことと、一方でメインで行っていたポップインサイトも成長ストーリーが見え、さらに集中して取り組む必要があったことから今回のご相談に至りました。

当然ながらMIKATAはせっかく時流に乗り成長もしているので売却する必要はないと考えることもできました。手放すのはもったいない、と。そのためM&Aありきではなく、あくまで一つの選択肢としてM&Aの可能性を探りつつも一方では自ら成長させていくような体制も検討していました。

譲渡した事業が成功すれば信用が生まれ、
その信用が経営者としての貴重な個人資産になりうる

譲渡を検討する中で、特に優先順位の高い条件は何でしたか?

経済的条件を除くと、一番重視したのは新しい株主の元でMIKATAが成長できるイメージが持てること、つまり相手の会社に買収が有益だと思ってもらえるかどうかという点でした。後継者不在で会社を譲渡される経営者の多くは会社の譲渡がすなわちビジネスからの引退になりますよね。一方、私はこれから数十年に渡るビジネス人生のスタート地点に立っているという認識ですので、今回の譲渡がうまくいかず悪評が立ってしまうと、今後のキャリアに影響を及ぼします。逆に新しい株主の元で成功したとなれば、その信用が経営者としての貴重な個人資産になると思います。実際、今回のM&Aの相談を通じ譲渡先のインググループ様とはポップインサイトも含めたより広範囲の協業関係を構築中ですし、最終的に事業譲渡には至らなかった別の企業様とも別件で協業締結を相談中です。「売却ありき」ではなく、「自分の事業、相手先の事業、双方のさらなる成長ありき」で考えることが重要ですし、誠意だと思います。

またMIKATAの各ステークホルダーにとってもM&Aによって事業価値が下がったり、働き方に悪影響が出てはなりません。多角的な視点でより良い状態に成長・進化できるイメージを持てるかどうかが重要だと思います。

 

同じような立場の経営者に対して一言お願いします。

ベンチャー起業家が会社を譲渡したというと華々しい話が多いですよね。ものすごく斬新なアイデアや技術があって大金で取引されるようなM&Aはニュースになりやすい。でも、実際にはもっと普通に起業をしている経営者がたくさんいらっしゃいます。そのような経営者達が早い時期からM&Aという選択肢を知っていれば今後の判断が変わってくるのではないかと思います。一つでも事業譲渡が成功すれば資金的な余裕を持てますし、次の投資も余裕を持って判断することができるようになるはずです。

私と同年代の若い経営者でもM&Aについて知らないから選択できないという方はいると思いますが、知らないことのほうがリスクが高いと思います。M&Aを恐れることはありません。ぜひ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

本日はありがとうございました。

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