INTERVIEW

経営者も会社も気力・体力に余力のある今がベストのタイミングと決断

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松井 明 氏

プロステージ株式会社 前代表取締役 松井 明 氏

八王子を拠点に、人材派遣業を中心とした総合人材サービス業を多摩エリアで展開してきたプロステージ(株)。人材派遣業としては異色の「高く仕入れて安く売る」――派遣社員には良い待遇を、派遣先企業には低廉価格を提供することをモットーに、地域密着型で多くの優良企業から愛され成長を果たしてきた。2015年9月には、創業者である松井明氏が後継者不在を理由に、大手人材関連サービス企業に会社を譲渡。今回は、会社を譲渡された経緯や当時の心境などについて、松井氏にお話を伺った。

「買い手は当社を本当に必要としてくれるのか?」
相手企業がどのような意図、意欲で買収を望むのかを重視

プロステージ創業の経緯や社名の由来を教えてください。

私は大学卒業後、大手食品会社に就職しました。42歳でそこを離れ、新しい業界として人材派遣業の立ち上げに参画しました。そこで2年間、人材派遣業についての経験やノウハウを習得、また経理の知識や経営についての知見を得ることもできました。

その経験を元に、八王子で1992年にプロステージの前身となるプロパート(株)を設立。技能の高いプロのパートタイマーを地元の中小企業に派遣しよう、という意図で名づけました。大変愛着のある名前でしたが、事業が大きくなるにつれて取引先の企業規模も大きくなっていき、派遣する人材もパートタイマーからフルタイムの派遣社員へと変遷しました。業容拡大に伴う本社移転を機に、社員たちからも社名案を募り、2003年に現在のプロステージへと社名変更いたしました。

サービスの特長は?

創業当時の人材派遣業は、今よりもマージンを大きくとる会社が多かったんですね。でも、私は派遣される人たちもハッピーにしたくて、創業当時から「高く仕入れて安く売る」、つまり派遣社員には良い待遇、派遣先企業には低廉価格というのを企業コンセプトにしてきました。“人を仕入れる”という表現は適切ではないかもしれませんが、要は、できるだけスタッフには高く払ってあげたい。そこで、フルタイムの人は社会保険にきちんと入れたり、通勤交通費を支給したりしていました。

そんな待遇の派遣会社は珍しかったので、口コミでどんどん良い人材が集まってきてくれました。一人あたりのマージンは薄くとも、良質なスタッフが安定して働いてくれるので、優良な取引先と長くお付き合いいただけるようになりました。

M&Aをご検討されたきっかけや背景は?

私には娘が二人いまして、その娘婿であったり、社内の人間への承継を検討したりしていましたが、2008年秋からのリーマンショックを発端とした人材派遣業全体の業績悪化、またその後の人材派遣業への規制強化などがあり、それらの話は立ち消えになってしまいました。

そうした経緯がありましたので、事業承継の選択肢としてM&Aの検討は自然な流れでした。そのためにストライクさんなどのM&A仲介会社の方とも定期的にお会いし、情報交換を図るようにしました。あとはタイミングだけでしたね。

譲渡に際し、どのような条件を希望されましたか?

松井明氏とストライク橋口
松井氏のご自宅にてお話を伺った。写真右はストライクの橋口。

経済的な条件もありましたが、個人的に重視したのは「買い手はプロステージを本当に必要としてくれるのか?」という点でした。その想いを相手が強く持ってくれていないと、M&Aの交渉途中で破談になってしまうのではないかという不安もありましたし、私も20年以上やってきた会社を譲渡するのですから、相手に喜んでもらって達成感みたいなものを得たかった。それで相手がどのような意図で買収を検討し、どれだけ必要としてくれるかという点を重視しました。

お相手の決め手は何だったのでしょうか?

今回、ストライクの橋口さんからは、私の希望を鑑みて2社の買い手候補企業をご紹介いただきました。そして、どちらの企業も「あ、プロステージを本気で必要としてくれる」ということがわかりました。買い手企業がいろいろと会社の状況をヒアリングしてくるのですが、両社とも人材派遣業を経営する上で鋭いポイントを突いてくるのです。そこまで聞いてくるのかと思いましたが、逆に相手の本気度合いがよくわかって、うれしかったです。

同時期に他のM&A仲介会社からも買い手企業をご紹介いただきましたが、そちらは情報をあまり欲しがらなかったり、提示された買収金額は高かったけれども後で値下げされそうな雰囲気が感じられたりしました。当社を知りたい、買いたいという意欲が伝わってきませんでしたね。

あとは橋口さんが人材派遣業界に精通していたこと、また買い手企業とも非常に強い信頼関係を築かれていたことは、M&Aを進めていく上でとても安心感がありました。私たちからすると、橋口さんが「買い手企業に売り手の意向をきちんと伝え、説得できる関係なのか」というのもポイントになるんですね。ですから、最後の決断は「橋口さんのお勧めだったら」と参考にした部分もありました。

経営者も会社も気力・体力に余力のある今がベストのタイミングと決断
あせらず余裕を持ってM&Aに臨めた

M&A後の会社の状況はいかがでしょうか。

譲渡した企業は人材関連の事業を手がけておられますが、派遣業はメインでやって来られませんでしたので、プロステージをとても大切に扱ってくれています。また、すでに全国に事業所を展開されていますので、そこにプロステージの支社を開設することで、スピーディーな事業エリアの拡大を実現されています。これまで多摩エリアを中心としてきましたので、新しい取り組みと事業シナジーの可能性を頼もしく思っています。

 

最後に、M&Aを検討されている企業オーナー様へのメッセージをお願いします。

会社の業績も順調でしたので、あと2年の創業25年を一つの区切りと考えていましたが、やや守りの姿勢であることを自分自身が感じ始めていました。従業員のことも考えると、私個人も会社も気力、体力に十分に余力のある今がベストのタイミングと決断しました。あせらずに余裕を持ってM&Aに臨めたことが良かったと思っています。

本日はありがとうございました。

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