2025年5月時点

食品業界の最新動向やM&A事情について、M&A仲介のプロであるストライクの専門コンサルタントが解説いたします。
監修者

小牧 成宜
大手証券会社、独立系ベンチャーキャピタルを経て、ストライクへ入社。ストライク入社後は、ベンチャーキャピタルで培った投資先企業の株式上場やM&A支援経験を活かしながら、様々な業種の企業のM&Aを支援。食品製造、食品卸、小売など食品業界全体における、事業承継課題解決、成長支援、業界再編を目的としたM&Aに数多く携わっている。

山口 剛史
大学卒業後、大手卸売会社へ入社。食品・酒類問わず、国内外のメーカーが作る商品の販売に従事。担当メーカーの廃業を複数目の当たりにしたことから、企業支援を希望し、ストライクへ入社。M&Aコンサルタントとして、食品製造・卸売・小売・包装資材等、食品関連企業の成約に複数関与。中堅・中小企業の事業承継型M&Aから成長戦略型M&Aまで、様々な案件に携わる。

武井 恭兵
大学卒業後、大手卸売会社に入社し、国内外で製造された食品の販売や物流等に従事。取引先の経営課題に直面する中で自身の影響力の低さを痛感し、経営者目線での仕事を志してストライクへ入社。M&Aアドバイザーとして、食品業界を中心に企業の成長戦略や承継課題を支援し、複数の案件に携わる。
食品業界とは
食品業界は私たちの生活を支える根幹となる産業であり、その範囲は非常に広範囲に及びます。農業・酪農畜産・漁業といった一次産業だけでなく、製造加工メーカー、小売業、食品トレイやパックなどの包装資材卸などさまざまな企業が含まれます。サプライチェーン上では給食事業や配食サービス、外食産業なども食品業界に分類されます。
川上(生産)
- 農業
- ・米
- ・野菜
- ・果樹
- ・いも類
- ・工芸農作物
- ・酪農
- ・肉用牛
- ・養豚
- ・養鶏
- 漁業
- ・天然
- ・養殖
川中(製造加工)
- ・食肉
- ・水産
- ・冷凍食品、レトルト食品
- ・缶詰、保存食
- ・調味料
(味噌、醤油、ソース等) - ・糖類
- ・製穀、製粉
- ・パン、菓子
- ・惣菜
- ・寿司、弁当、調理パン
- ・動物性油脂
- ・飲料
(清涼飲料、酒、コーヒー等)
川中(卸)
- ・農産物卸
- ・畜産物卸
- ・水産物卸
- ・食品卸
- ・飲料卸
- ・食品包装卸
川下(販売)
- ・野菜、果実、食肉、鮮魚
- ・飲食店、喫茶店、居酒屋
- ・スーパーマーケット
- ・ドラッグストア
- ・ディスカウントストア
- ・給食
- ・テイクアウト、デリバリー
- ・健康食品
- ・EC販売
食品業界の市場規模

出典:農林水産統計 令和4年農業・食料関連産業の経済計算(概算)
食品業界の市場規模について、農林水産省の令和4年度の統計によると農業・食料関連産業の国内生産額は114.2兆円となっており、全経済活動の10.2%を占めています。内訳を見ると一次産業の農業や畜産、漁業は12.7兆円、食品製造業38.4兆円、関連流通業36.4兆円、外食産業が21.3兆円です。全体の国内生産額は令和3年の109.1兆円から4.7%増加しており、米や野菜、水産物の価格上昇、卸売業のマージン額の増加、外食支出の回復などが増加の理由です。
「関連流通業」にはスーパーマーケットなどの小売店が含まれます。日本チェーンストア協会(会員企業47社、9,442店舗)の販売統計(チェーンストア販売統計)によると、令和6年の売上は9億1,200万円で前年比104.4%の伸びでした。物価高の影響による節約志向はみられるものの、店頭価格の上昇や農産物の相場高騰によって売上が伸びていると考えられます。
また、日本フードサービス協会の令和6年の年間データ(JF外食産業市場動向調査)によると外食産業の売上は前年比108.4%となっています。コロナ禍のダメージからの回復傾向がみられ、訪日外国人の客数増加なども影響しています。物価高に伴う消費者の節約志向が一部客数に影響したものの、単価の上昇もありファーストフード、ファミリーレストランなどすべての業態で前年の売上を上回っています。
食品業界の市場規模は前年に比較して全体的に増加していますが、長期的には人口減少により食料消費量は減るため、業界全体の総売上は下がっていくと見込まれています。国内での利益確保だけではなく、海外への進出を検討しM&Aを実施している企業も多くなっています。
参考:日本チェーンストア協会 2024年1月~12月度(暦年)チェーンストア販売概況について
日本フードサービス協会 外食産業市場動向調査 令和6年(2024年)年間結果報告
現在の食品業界が抱える課題
現在の食品業界が抱える課題は多くありますが、主に挙げられるのが以下の3つです。
- 人手不足
- コストの増加
- 設備投資
食品業界の課題➀人手不足
食品業界に限った話ではありませんが、食品業界においても人手不足が大きな課題となっています。労働人口減少により求職者が減少し、人員の募集を行っても応募者が来ないことも多いようです。また、残業規制や賃金上昇により人件費が上がり、業務量に応じた人員が確保できないという悩みをよく耳にします。食品生産、製造加工の現場では作業員の高齢化、後継者不足の問題から独自に経営を続けていくことが難しいと感じている企業経営者の方も増加しています。
食品業界の課題➁コストの増加
食品業界は自然災害や天候に左右されやすく、異常気象による農作物の不作がコスト増の原因となっています。また昨今は国際情勢が一部不安定な状況にあることから、海外からの輸入に頼る原料や食品については、輸入価格や燃料費の高騰が大きく影響しています。
食品価格の値上げは避け難い状態ではあるものの、消費者は安価な商品を求める傾向にあるため、コスト増加の影響をすべて価格に反映することは難しいのが現状です。
また小売業もコストの増加に苦しんでおり、仕入れ値の上昇に加えて冷凍ケースなどの電気代の上昇も利益を圧迫しています。
食品業界の課題➂設備投資
人手不足や原材料費高騰の打開策として、自動化などの設備投資に意欲を示す企業が増えています。しかし、設備投資をしたくても資金がないという悩みも多く聞かれます。食品メーカーの場合、工場のラインをひとつ増やすために1億円程かかることもあり、設備投資に踏み切れないケースも多い状況です。
業務のデジタル化やDXの推進も含めた設備投資も求められていますが、特に卸業界などはIT化が進んでいない企業も多く、いまだ紙の伝票での処理など、業務効率化が目下の課題となっている企業もあります。
食品業界におけるM&Aの状況
食品業界が抱える課題の解決方法としてM&Aを検討する企業は多く、近年食品業界ではM&Aが活発になってきています。また海外企業とのM&Aも増加しており、譲渡企業、譲受企業双方のケースが発生しています。市場の動向を見ると食品業界のM&Aは今後も増加していくと予想しています。
食品業界のM&Aのメリット・目的
食品業界のM&Aにおける譲渡側、譲受側双方のメリットや目的を解説します。
食品業界のM&Aにおける譲渡側のメリット
譲渡側にとっては、上記に挙げた3つの課題
- ・人手不足
- ・コストの増加
- ・設備投資
の解決に繋がることが大きなメリットです。
オーナー経営の中小企業が大手企業とM&Aを行うことで、採用の強化や給与水準の引き上げが可能になり、またコスト面についてもスケールメリットを発揮しやすくなります。それらのメリットを含め、課題に直面した経営者が代々続く屋号やブランドを守るためにM&Aを選択するというケースが多くなっています。
また中小規模の食品メーカーなどの場合、金融機関への借り入れを個人で行っているケースがありますが、M&Aによって個人保証が解消される点もメリットです。
食品業界のM&Aにおける譲受側のメリット
譲受側にとっての最大のメリットは、市場シェアの拡大に繋がる点です。同業他社とのM&Aの場合、売上を増やせるためシェア率の向上に直結します。
M&Aによって新規事業に進出できる点もメリットです。ブランド力のある企業であっても、製造や物流のコストが上昇しているなか新期事業を一から始めるのはリスクが高いといえます。M&Aによって自社が持っていないノウハウを取得でき、新規事業への進出が可能になるのは、時間、コスト両面でメリットとなります。
食品業界は、国内市場の需要が伸び悩んでおり、パイの奪い合いになりつつある状況です。小売業においては、ドラッグストアやコンビニエンスストアなどの参入も競争激化の一因として挙げられます。そこで大手スーパーがメーカーとM&Aを行い製造加工の内製化を図るなど、同業種ではなく他業種とのM&Aによってコスト削減や事業力の強化につなげています。なかには食品卸企業がIT関連企業を買収しデジタル化をすすめるなど、他業界とのM&A事例も出てきています。
さらに、海外企業とのM&Aによって海外への販路開拓も視野に入れることができます。
食品業界のM&Aの注意点
食品業界においてM&Aを行う際は、デューデリジェンス(買収監査)が適切な範囲で行われるよう注意する必要があります。食品表示の記載がきちんとできていない場合や、賞味期限切れ食材を抱えているなど在庫管理の不備は、株価算定の減額要因となります。M&A後に発覚した場合は様々なリスクになり得るからです。
また、代々継いできたオーナー経営の企業が大手企業とM&Aを行う際、従業員の戸惑いや不安も出てくるため、従業員への説明やフォローも段階的に行うなど配慮が必要です。
食品業界のM&A事例3選
近年はコロナ禍の影響から健康志向の高まりがみられ、食品業界でも健康志向の消費者に対応するためのM&Aの動きがあります。また多様なユーザーニーズへの対応、品揃えの拡充などのためにM&Aが活用されています。
食品業界のM&A事例①
譲渡会社 玄米加工食品会社
譲受け会社 大手菓子メーカー
主に米菓を扱う大手菓子メーカーが健康志向への高まりを受け、玄米加工食品会社とのM&Aを行った事例があります。M&A後は玄米などを使用した新商品や植物性原料の食品開発を行っています。M&Aによって製造ノウハウや販路の共有も実施し食品事業の強化を図っています。
食品業界のM&A事例②
譲渡会社 製麺会社
譲受け会社 大手洋菓子メーカー
地方の製麺会社が大手食品メーカーとM&Aを行い、リクルートを強化した事例です。大手食品メーカーのネームバリューを活用し、人手不足の課題を解決することで事業継続を可能にしています。
食品業界のM&A事例③
譲渡会社 洋菓子メーカー
譲受け会社 大手洋菓子メーカー
地域に根差した店舗展開、商品開発を行う洋菓子メーカーが、後継者不足や経営不振などの課題のもと、ブランドを守るために大手洋菓子メーカーに譲渡を行いました。
大手メーカーの傘下に入ることで、ブランドの刷新や職場環境の改善、設備のリニューアルなどのメリットを得ています。
食品業界のM&Aにおける今後の予測
食品業界のM&Aは今後も増加が見込まれており、海外、特にアメリカや中国、シンガポールなどの企業が国内企業とのM&Aを探る動きも活発です。
また、EC会社が自社内で売る商品拡充のために食品メーカーを子会社化するなど異業種からの参入や、海外企業が自社商品の販売経路を日本で拡大させるため、日本の輸出入会社を探すなどのケースも出てきています。
専門家にM&Aを相談するメリット
- 人手不足が深刻化している
- コストの増加が続いている
- 設備投資が進まない
国際情勢や天候などの影響を受けやすく、トレンドの変化も早い食品業界のM&Aは、業界の知識や特性を正しく理解している成約実績豊富なコンサルタントに相談しましょう。
ストライクでは、食品業界や事業に深く精通しており、業界の慣習や風習にも理解のある業界特化した専門のコンサルタントが担当します。経歴として食品製造業や卸、小売業を経験したコンサルタントもおり、オーナー様の悩みや課題に寄り添ったご提案が可能です。マッチング力も高く、他業種も含めたより適切なM&Aの候補先をご紹介します。
ストライクのM&Aコンサルタント

小牧 成宜
大手証券会社、独立系ベンチャーキャピタルを経て、ストライクへ入社。ストライク入社後は、ベンチャーキャピタルで培った投資先企業の株式上場やM&A支援経験を活かしながら、様々な業種の企業のM&Aを支援。食品製造、食品卸、小売など食品業界全体における、事業承継課題解決、成長支援、業界再編を目的としたM&Aに数多く携わっている。

山口 剛史
大学卒業後、大手卸売会社へ入社。食品・酒類問わず、国内外のメーカーが作る商品の販売に従事。担当メーカーの廃業を複数目の当たりにしたことから、企業支援を希望し、ストライクへ入社。M&Aコンサルタントとして、食品製造・卸売・小売・包装資材等、食品関連企業の成約に複数関与。中堅・中小企業の事業承継型M&Aから成長戦略型M&Aまで、様々な案件に携わる。

青木 達也
大学卒業後、メガバンクに入行。企業規模、業種問わず幅広い法人に対して、財務・資本・事業戦略を中心としたコンサルティング営業を実施。また、M&Aファイナンスに係る審査業務に従事し、複数のM&A案件に携わる。その後、ストライクに入社し、M&Aコンサルタントとして、食品業界(製造・卸・小売)を中心にその他、周辺事業の案件成約に携わる。

相馬 峻平
大学卒業後、地方銀行へ入行。上場企業から中堅・中小企業まで多くの法人顧客を担当。企業の実態分析から融資業務、生産性向上のためのソリューション提案などに従事。事業承継、M&A支援を手掛けたのち、企業の承継課題を解決したいという想いからストライクへ入社。M&Aコンサルタントとして食品製造業や食品輸入商社など、多数の案件に携わる。

武井 恭兵
大学卒業後、大手卸売会社に入社し、国内外で製造された食品の販売や物流等に従事。取引先の経営課題に直面する中で自身の影響力の低さを痛感し、経営者目線での仕事を志してストライクへ入社。M&Aアドバイザーとして、食品業界を中心に企業の成長戦略や承継課題を支援し、複数の案件に携わる。

大石 奈央
大卒後大手保険会社、専門商社にて営業支援及びバックオフィス業務全般に携わり、ストライクに入社後は、専門性を活かしスムーズなM&Aの実行をサポートする。
食品業界におけるストライクの実績
成約インタビュー

北海道・名寄で素牛を育てる畜産農家
顧問税理士の後押しで
M&Aによる事業承継を選択
M&Aは大手企業の取引だというイメージも強く、私たちには縁のない、別世界のものだと思っていましたが、よいお相手にめぐりあうことができました。

ブランドを刷新し、新商品も開発
働き方の改善で従業員の士気も向上
~経営不振の老舗洋菓子店、M&Aからの再生
首都圏での売上をさらに拡大していくことが課題でした。

栗の加工食品製造を62年
「岩間の栗」を全国ブランドに
夢を託して会社を譲渡
~2代目社長が65歳で下した決断~
M&Aのタイミングは、まだ十分に仕事ができると思える65歳ぐらいが一番良いのかなと思います。

M&A戦略で成長を目指す飲食企業が
老舗パン工房を子会社化
シナジーを生み出す新業態に挑む
シナジー効果という点では、今回のM&Aに一番期待しています。当社としても、これまでとは異なるまったく新しい業態への進出
成約実績
2025年3月
譲渡会社
外食・食品関連
所在地:東北
譲受け会社
その他
所在地:関東
譲渡理由後継者不在
M&Aスキーム株式譲渡
2024年12月
譲渡会社
外食・食品関連
所在地:北海道
譲受け会社
外食・食品関連
所在地:北海道
譲渡理由業績不振
M&Aスキーム株式譲渡