不動産業界の動向

(更新日:2019年1月)

業界定義
主として不動産の売買、交換、賃貸、管理又は不動産の売買、貸借、交換の代理若しくは仲介を行う事業所が分類される。主として自動車の駐車のための場所を賃貸する事業所も本分類に含まれる。 (日本標準産業分類より)
業界シェア
業界首位は三井不動産で売上高は1.7兆円。二位は飯田グループホールディングスで売上高1.3兆円、三位は三菱地所で売上高1.1兆円。

市場規模 約5.3兆円

(不動産流通推進センター「不動産業の概況」より)

成長率24%

(不動産流通推進センター「不動産業の概況」より)

関連法規
都市計画法/国土利用計画法/建築基準法/長期優良住宅の普及の促進に関する法律/宅地建物取引業法/不動産の表示に関する公正競争規約/民法/借地借家法/消費者契約法/マンションの建替えの円滑化等に関する法律/区分所有法/不動産登記法/住宅の品質確保の促進等に関する法律/特定住宅瑕疵担保の履行の確保等に関する法律

業界分析

不動産業界が意味する言葉の範囲は広く、ショッピングモールやビルの開発、住宅の建設、販売や賃貸仲介など様々な業者が存在する。これらは、以下の4つの産業に分類することができる。

(1)開発(2)賃貸(3)流通(4)管理

(1)開発
不動産開発は用地を取得し、インフラ整備を行うとともに、土地に住宅や事業用施設等を建設し、価値創造・向上を行う業務である。収益としては開発した不動産の売却・分譲や賃貸事業の展開がある。近年では2020年のオリンピックに向け、会場周辺や駅周辺の再開発などの特別な需要が増加している。

今後の不動産業が直面する社会構造の変化としては、人口・世帯数の減少、高齢化の進展、日経企業の海外移転が挙げられる。

中長期的に見た場合、上記の要因から不動産価格は低下していくと考えられるが、各社は様々な施策を打ち不動産価格を維持・向上している。大手デベロッパーの強みは、競争力の高いコアエリア・コア物件を保有していることだ。すでに所有している物件の価値を維持・向上することが安定的な収益のために必要不可欠である。例えば、三菱地所は「丸の内地区の価値最大化」を掲げ、大手町、丸の内、有楽町エリアの再生計画を始動、商業施設のリニューアルを行っているほか、シェアオフィス等の環境を整備し、セミナーを開催できるサロン等を備えた交流拠点施設が運営されるなど、新しいビジネスが創出される環境を作り出している。

(2)賃貸
不動産賃貸は、自ら所有する不動産を賃貸し、賃料を得る事業である。賃貸の対象は住宅からオフィスビル・商業施設・ホテル・物流施設など多岐にわたる。不動産の賃貸業務においては、その管理運営を自ら行う場合と、一部または全部を外部に委託する場合がある。不動産証券化の進展等による不動産の「所有と経営の分離」が進行するとともに、運営の複雑化が進む中で、不動産の投資家に代わって資産管理・運用等や、不動産の所有者に代わって不動産の運営管理等を行う外部の会社に業務を委託するケースも増加している。

(3)流通
不動産流通事業とは、土地や建物の売買・賃貸借などの契約の仲介を行う事業である。地域との繋がりが大切であり、昭和40年代以降、大手不動産業者が参入するまでは、地域密着型の小規模者の独壇場であった。宅地建物取引業法に基づく免許を受けている業者は約13万であるが、現在でもその大半はこの仕事を専門的に行っている中小業者である。取扱業務は、既存住宅の売買とアパートなど集合住宅の賃貸借の仲介が大部分だが、大手の流通業者を中心に、大規模ビルの売買の斡旋や、デベロッパーが建設した新築戸建住宅やマンションの販売代行なども行う。

(4)管理
不動産管理業者は、ビルやマンションの所有者(管理組合含む)から委託を受け、会計業務や設備の保守・清掃といった保全業務を実施することで管理収入を得ている。管理件数の増加が売り上げの増加につながるため、建築物や住宅物の着工状況と密接な関連がある。参入障壁が高くなく、類似・模倣が発生しやすい業種であるため、サービスの差別化など業界内の競争は激しい。不動産管理業と関連が深いマンション発売戸数は、首都圏と近畿圏の二大都市圏で全販売戸数の約8割を占めているため、首都圏が業界の動向を左右しているといえる。不動産管理業は大手マンション事業者の関連企業が事業展開しているケースが多く、買収や合併が繰り返され、大手企業による寡占化が進んでいる。

国内銀行の貸出先別貸出金の伸び率推移

図:不動産業向け貸出金の推移
出典:ニッセイアセットマネジメント

M&A動向

不動産業界は競争が激化しており、業務の効率化が進まない企業は、今後淘汰されてしまう可能性が高い。

不動産業界で、特にM&Aを活用して事業を拡大してきた企業の代表例が「東京に、家を持とう」をキャッチフレーズに一躍知名度を上げた「オープンハウス」である。

オープンハウスが発表した2018年9月期決算によると、売上高は28.3%増の3,907億円、営業利益は25.8%増の473億円と、いずれも6期連続過去最高を更新。上場時の2013年9月期と比べ、売上高は4倍、営業利益は4.7倍に拡大している。
同社は、2019年9月期までに売上高30.5%増の5,100億円、営業利益14.2%増の540億円を見込む。この「5,000億円企業」の実現をけん引するのがM&A戦略だ。その一環として同社は、2018年10月1日同業のホーク・ワン(東京都杉並区)を取得価格200億円で完全子会社化している。

地方には、今も中小の不動産会社が多数存在しており、これらの企業が今後オーナーの高齢化に伴いM&Aをリタイアの選択肢とする流れが進むことが予想される。また、規模を拡大したい企業がそれらを買収し、業務を分業化・効率化していくことが、今後の業界トレンドとなるだろう。

企業価値の目安

不動産業界は自社で不動産を所有する場合、物件の価値が反映されるため、企業価値が実態より大きくなることが多い。近年の不動産価格の高騰も、それを加速させている。 そのためEV/EBITDAでは他の業界と比較した場合、高い倍率となっている。企業価値では、今後の不動産価格と連動するため2020年以降の不動産価格に最も注目が置かれることだろう。

企業価値