2025年5月時点

製造業の最新動向や課題、M&A事情について、M&A仲介のプロであるストライクの専門コンサルタントが解説いたします。
監修者
鈴木 悦也
大卒後、財閥系大手不動産会社へ入社。個人・法人向けに不動産評価・開発・資産運用・売買等のコンサルティング業務に従事。その後、ストライクに入社しM&Aコンサルタントとして、製造業・建設業・介護業界等複数の成約に関与。中堅中小企業の事業承継型M&Aから成長戦略型M&Aまで、様々な案件に携わる。
製造業とは
製造業は、原材料や素材などの物質を加工することで新たな製品を製造し販売する産業です。幅広い産業が含まれるため明確な区分けは難しいですが、具体的には以下の23業種が挙げられます。
- 1. 食料品製造業
- 2. 飲料・たばこ・飼料製造業
- 3. 繊維工業
- 4. 木材・木製品製造業(家具を除く)
- 5. 家具・装備品製造業
- 6. パルプ・紙・紙加工品製造業
- 7. 印刷・同関連業
- 8. 化学工業
- 9. 石油製品・石炭製品製造業
- 10. プラスチック製品製造業(別掲を除く)
- 11. ゴム製品製造業
- 12. なめし革・同製品・毛皮製造業
- 13. 窯業・土石製品製造業
- 14. 鉄鋼業
- 15. 非鉄金属製造業
- 16. 金属製品製造業
- 17. はん用機械器具製造業
- 18. 生産用機械器具製造業
- 19. 業務用機械器具製造業
- 20. 電子部品・デバイス・電子回路製造業
- 21. 電気機械器具製造業
- 22. 情報通信機械器具製造業
- 23. 輸送用機械器具製造業
製造業の市場規模

出典:経済産業省 厚生労働省 文部科学省 2024年版ものづくり白書
ものづくり白書の統計によると、2022年の業種別GDP(国内総生産)は総額555.9兆円となっており、うち製造業は107.6兆円で、全体の約2割を占める主要な産業といえます。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)の業況判断DI(企業の収益を中心とした業況についての全般的な判断)の推移をみると、2019年から2020年のコロナ禍による大幅な下落からは一定水準まで回復していますが、昨今は国際情勢の変化や急激な相場変動などにより慎重な見通しとなっています。
参考:第203回 日銀短観
原材料価格の上昇、主要産業である自動車製造業の業績悪化にともない、2024年4~9月期に最終減益・赤字となった製造業企業の割合は4年ぶりに5割を超えるなど、苦戦が目立っている状況です。
現在の製造業が抱える課題
現在、製造業の多くは経営面・事業面でさまざまな課題を抱えています。
- ・後継者不在
- ・資本の承継課題
経営の課題
事業の課題
- ・技術者・設計者不足
- ・原材料の高騰
- ・DX・IT化
- ・固定顧客への依存
- ・国内需要の減少
技術者・設計者不足
製造業の課題として特に挙げられるのが、技術者・設計者の不足です。近年は大学進学率が上昇しており、大学卒業後に製造業の技術職、設計職といった自ら手を動かす職業を希望する人が少ないことが背景にあります。技術者・設計者の不足によって、技能継承が難しいばかりか事業の継続にも影響しています。
また、製造業に対して「3K」といったネガティブイメージを持つ人が多いことも要因といえるでしょう。
原材料の高騰
コロナ禍の影響に加え、自然災害や天候不良、国際情勢の悪化などにより原材料が高騰しています。モノづくりの材料費だけでなく、運搬費用や工場稼働のための光熱費も上昇しており、数百万円規模でコストに影響が出ることも少なくありません。
DX化・IT化の遅れ
製造業においては特に中小企業でのDX化、IT化の遅れが顕著にみられています。多くの企業では機械投資が優先されるため、費用のかかるDX化は後回しになっている実情があります。また先行き不安な状況が続いていることから、設備投資へ踏み込みづらいことも一因です。
そもそも製造業は自分で手を動かすことにこだわりのある、いわゆる「職人肌」の方が多いため、IT技術の導入による効果を具体的にイメージすることが難しく、DX化・IT化が進まない傾向にあります。
製造業におけるM&Aの状況
製造業が抱える課題の解決方法としてM&Aを検討する企業は多く、近年はM&Aが活発になってきています。
M&A Onlineの統計によると、製造業をターゲットにしたM&Aの件数は2023年245件、2024年256件と、4年連続の増加となっています。
製造業は同じ業種でも加工対象が異なるなど、まったく同じモノを作っている企業は多くないという特徴があり、M&Aによってシナジー効果を出しやすいといえるでしょう。
製造業のM&Aは今後も増加していくと考えられます。
製造業のM&Aのメリット・目的
製造業のM&Aにおける譲渡側、譲受側双方のメリットや目的を解説します。
製造業のM&Aにおける譲渡側のメリット
譲渡側にとっては、上記で挙げた経営の課題、事業の課題をM&Aによって解決できるメリットがあります。
たとえば、後継者不足や技術者不足による先行き不安がある場合、M&Aによって経営が安定し、後継人材の派遣やグループ採用の実施が可能になるケースがあります。また、高度な技術を保有しているものの顧客が固定化しており利益拡大がうまくいっていない、販路拡大のための人材やノウハウが足りていないといった場合に、国内・海外に販路のある大手企業とのM&Aによって解決できます。
将来的に自社単体での利益継続に不安を感じ、手を打っておきたいというオーナー様は多くいます。
製造業のM&Aにおける譲受側のメリット
M&Aの譲受側にとって最大のメリットは、市場シェアの拡大に繋がる点です。いちから工場を建て、人出を集めオペレーションを回していく構図は大変非効率であるため、技術のある企業とのM&Aによってスピード感を持って自社の規模を拡大できます。メーカー同士のM&Aであれば、自社の持っていない技術やノウハウを取り込めるメリットもあります。
近年のM&Aは譲渡側が製造業、譲受側が商社という選択肢が多く、譲受側が営業支援や海外展開支援を行うことで、長期的な利益の獲得に繋げています。海外への販路があるものの売るものがない、という場合は、海外展開を希望する製造業との相性がよいといえます。
また製造業に特化した投資ファンド会社などが譲受側となり、資金調達や企業価値の向上に寄与するケースも多くなっています。
製造業のM&Aの注意点
M&Aは、標準的なケースでは最終契約に至るまで半年~1年程度の期間を要します。成約に至らない場合もあるため、検討期間中に製造技術を盗まれるなどのトラブルがないよう、情報漏えいに配慮する必要があります。特許権など、知的財産の扱い方にも注意しましょう。
また、製造業の場合は仕入れ値や売値を取引先との関係値に基づいて定めているケースが多くあり、株主が変わった場合には取引契約を見直す文言が取引先との契約書に記載されていることがあります。これは「チェンジオブコントロール条項」というもので、M&Aの際には取引先との契約書にこの文言がないか確認が必要です。
なお、M&Aの交渉時には譲渡側の要望を伝えにくい場面があるかもしれません。このような場合は、仲介会社が間に入ることで公平な立場で交渉を進めていくことができます。
創業から27年以上、M&Aコンサルティングに携わってきたストライクは、信頼できる提携先企業のご紹介や、契約書のチェック、要望の交渉などのサポートが可能です。
製造業のM&A事例3選
ストライクでご成約となった製造業のM&A事例をご紹介します。
製造業のM&A事例①
譲渡会社 日興高熱工業株式会社
譲受け会社 ニイミ産業株式会社
ともに工業炉を扱う愛知県の企業で、約4カ月というスピードでM&Aの成約に至った事例があります。工業炉やバーナーのアフターメンテナンスを強化したいと考えていたニイミ産業株式会社が、後継者問題に悩んでいた日興高熱工業株式会社の高い技術職と実績を評価し、スムーズなM&Aが実現。両社の強みを生かした売り上げ拡大が期待されています。
製造業のM&A事例②
譲渡会社 入船プラスチック工業株式会社
譲受け会社 旭ホールディングス株式会社
プラスチック板加工・銘板製作販売を主な業務とする入船プラスチック工業株式会社が、税理士事務所のサポートを得て旭ホールディングス株式会社への譲渡に至りました。従業員承継の頓挫やコロナ禍の経営不振を乗り越え、M&Aへの取り組み開始から1年弱で成約が決定しました。
譲渡後も社長は留任しており、採用面のサポートなどを受けながら前向きに経営に取り組まれています。
製造業のM&A事例③
譲渡会社 株式会社高橋汽罐工業
譲受け会社 株式会社JRC
主に原子力・火力・バイオマス発電所などの工事業務を行う株式会社高橋汽罐工業が、事業継承や人手不足の課題解決のため、屋外用ベルトコンベヤ部品の設計・製造・販売を手掛ける株式会社JRCに全株式を譲渡しました。
3年前から他企業と譲渡の話が挙がっていたものの成約には至らず、その後も諦めずにストライクのサポートのもと検討を続けた結果、親和性の高いM&Aの実施に至りました。協業による事業拡大、大きなシナジー効果が両社で期待されています。
製造業のM&Aにおける今後の予測
- ・後継者不足や原価高騰により先行きが不安
- ・経営統合によって自社の規模を拡大していきたい
長期的にみて国内需要は減少していくため、儲かる企業、儲からない企業の2極化が進むと考えられます。利益が出ており体力もあるうちに、必要な動きをしていくことをおすすめします。
専門家にM&Aを相談するメリット
- 技術者や設計者の不足
- 原材料の高騰
- DX/IT化の遅れ
ストライクでは、製造業界や事業に深く精通しており、あらゆる製造業種に対応できる専門のコンサルタントが担当します。製造品や加工技術が特殊であっても、ストライクでは多くの譲受候補先からニーズ情報をヒアリングしているため、オーナー様のご希望に沿う相手先候補を幅広くご紹介することが可能です。オーナー様の悩みや課題に真摯に寄り添い、候補先選定から交渉、契約締結まで真摯に支援いたします。
ストライクのM&Aコンサルタント
橋口 和弘
大学卒業後、事業会社にて法人営業に従事し中小企業の課題解決に向けて取り組む。2010年にストライクに入社、M&Aコンサルタントとして製造業を中心に事業承継型や成長型のM&Aで多数の成約実績あり。現在、当社における製造業、建設業の統括責任者として、M&Aを通じて全国の経営課題解決に向けて活動している。
小牧 成宜
大手証券会社、独立系ベンチャーキャピタルを経て、ストライクへ入社。ストライク入社後は、ベンチャーキャピタルで培った投資先企業の株式上場やM&A支援経験を活かしながら、様々な業種の企業のM&Aを支援。全国の製造業、建設業等の事業承継課題の解決、成長支援、業界再編を目的としたM&Aに数多く携わっている。
小黒 航平
大学卒業後、2019年に新卒でストライクに入社。M&Aコンサルタントとして、これまでIT業界、食品業界、建設業や建設資材卸売業、製造業において複数の成約実績を誇る。直近では、売上30億円のハウスメーカーの成長発展の手段としてM&Aを支援。業界に対する深い知見をもとに事業承継型のM&Aだけでなく成長戦略型のM&Aにも携わる。
鈴木 悦也
大卒後、財閥系大手不動産会社へ入社。個人・法人向けに不動産評価・開発・資産運用・売買等のコンサルティング業務に従事。その後、ストライクに入社しM&Aコンサルタントとして、製造業・建設業・介護業界等複数の成約に関与。中堅中小企業の事業承継型M&Aから成長戦略型M&Aまで、様々な案件に携わる。
小幡 勇人
大学院にて白色LEDの研究を専攻。卒業後、ストライクに新卒入社。学生時代は学業の傍ら、ECサイトで生活雑貨を販売し、月間50万円以上の売り上げ実績を出す。ものづくりの業界そのものを変革させる製造業のM&Aにひかれてストライクに入社。現在は、M&Aコンサルタントとして製造業や建設業を中心に、多数の案件に携わる。お客様の想いに寄り添った提案を心掛けている。
秋吉 洋斗
大学卒業後、新卒でストライクに入社。大学時代には射影幾何学を専攻。現在は、M&Aコンサルタントとして、建設業界、製造業界、卸売業界、教育業界などを中心に複数の案件に携わる。直近では年商2億円程度の工業用製品を扱う製造業の成長支援型M&Aを支援。
山田 瞬
大学卒業後、大手監査法人に入所。主に総合商社の会計監査・内部統制監査業務に従事。その後、事業会社にて経理財務業務、ベンチャー投資、M&A業務などを経験し、ストライクに入社。会計・税務・バリュエーションの専門家として多数の案件を支援。
製造業におけるストライクの実績
成約インタビュー

M&Aで加速させる成長:
高洋電機の戦略と佐藤商事の決断
M&Aは、後継者問題や不採算部門の整理など、企業の課題を解決するための有効な手段ですので、自社の課題と目的を明確した上で検討することが重要です。

製造からメンテナンスまで一気通貫の価値提供へ
プラント工事のプロフェッショナルが描く、大手コンベヤメーカーとの新たな挑戦
経営者として社員が活躍できるところを見極めることが一番だと思います。

従業員承継が頓挫し、後継者不在に
「M&Aは難しい」と考えるも税理士事務所の助力で無事に成約
顧問税理士事務所等との信頼関係を深め、いざというときサポートが得られるようにしておくことも必要だと思います。

わずか2日の意思決定
技術力と販路拡大のシナジーで
工業炉事業の成長を目指す
お客様への責任を果たしつつ、会社の未来を託せる相手に出会えたことを嬉しく思います。
成約実績
2025年2月
譲渡会社
製造業
所在地:関東
譲受け会社
金融・リース
所在地:中部・北陸
譲渡理由事業の成長と発展のため
M&Aスキーム株式譲渡
2025年2月
譲渡会社
製造業
所在地:関東
譲受け会社
金融・リース
所在地:関東
譲渡理由後継者不在
M&Aスキーム株式譲渡