ドラッグストア業界の動向

(更新日:2019年1月)

業界定義
医療品、化粧品、日用雑貨(日用家庭品、文房具、フィルム、食品)を取り扱う小売店舗(日本チェーンドラッグストア協会)
業界シェア
業界トップは、ウエルシアホールディングスで売上高は6,952億円、第2位はツルハホールディングスで6,732億円、第3位はコスモス薬品で5,579億円となっている。

市場規模 約6兆8,504億円

(日経業界地図「2019年版」より)

成長率5.5%

(日経業界地図「2019年版」より)

関連法規
薬事法、薬事法施行規則、薬剤師法、医療法

業界分析

ドラッグストアは医薬品や化粧品、健康食品など健康や美容に関わる商品を幅広くラインアップしている小売りの業態である。ドラッグストアが取り扱っている医薬品はOTC医薬品と呼ばれ副作用のリスクが低く、いろいろな疾病や症状の改善に効果を発揮するものである。調剤薬局を併設で運営している場合は、薬剤師がドラッグストアに駐在しており、病院が発行する処方箋をもとに調剤を行い、代金の一部を患者から、残りを審査支払機関から受け取ることになっている。

2009年6月の薬事法改正で医薬品販売規制が緩和され、医師の処方箋を必要としない一般用医薬品がコンビニなどでも販売されるようになった。また2013年12月には医薬品の販売ルールが大幅に緩和され、一般用医薬品の中でも薬剤師による対面販売が義務付けられていた第一類医薬品、第二類医薬品のインターネット販売が可能となった。さらに2017年1月からは、スイッチOTC医薬品を1万2,000円以上購入すると税制の優遇が受けられるという制度がスタート。このような影響もあり、日本チェーンドラッグストア協会によるとドラッグストアの2017年度の売上高は6兆8,504億円で、前年度比5.5%増と2016年度に続いて5%台の成長率となった。上位各社は軒並み最高純益を叩き出しているが、細かく見ると食品部門については低価格を打ち出すもコンビニ、スーパーとの競争が激化している。また、調剤部門では専業チェーンなどと薬剤師の取り合いになっており、人件費高騰が追い打ちをかけている。こうした中、2017年にツルハホールディングスが静岡地盤の杏林堂を、ウエルシアホールディングスが東北の丸大サクラヰを買収した。また、2018年4月にはツルハホールディングスが中部ドラッグストアのビー・アンド・ディーグループを子会社化するなどM&Aによる上位各社のさらなる寡占化が進んでいる。このようにドラッグストア業界では各社はシェア拡大のため出店スピードを上げるなどしてこれまで以上に淘汰・再編が活発化するであろう。

出典:会社四季報 業界地図「(2019年度版)」:日経業界地図「(2019年度版)」

業界上位10社の市場シェア

M&A動向

近年ドラッグストア業界ではグループ上位企業が進出エリアを拡大する地域補完型のM&Aや下位企業の取り込みを加速させている。また、中国、台湾などアジア市場の開拓に乗り出す動きも目立っている。中小規模のドラッグストアはM&Aによる大手ドラッグストアチェーンの傘下に入ることで事業再生を行う企業が増加傾向である。大手企業グループに加入することで、プライベート商品の共同開発や共同仕入れによる収益力の向上と、人材経営資源の獲得、経営手法の共有による事業基盤の長期的な成長性が期待されるのであろう。

このように積極的なM&A戦略で寡占化が進むドラッグストア業界であるが、「マツモトキヨシグループ」(マツモトキヨシなど)、イオン系列の「ハピコム」(ツルハドラッグ、ウエルシア薬局、くすりの福太郎など)、「WINグループ」(ココカラファイン、コクミンなど)の3大グループが勢力を上げている。マツモトキヨシホールディングス(千葉県)は2017年10月、台湾の臺隆工業股份有限公司とドラッグストア事業展開のための合弁事業推進を目的として基本合意書を締結した。両社が持つ各種リソース・インフラ等の経営資源を活用することで、台湾における「マツモトキヨシ」店舗の展開を図ることを目指している。また、2017年12月にはウエルシアホールディングス(東京都)が、東京都内を中心にドラッグストア42店舗を展開する一本堂(東京都)の全株式を取得し、子会社化することを決議した。さらに、ツルハホールディングス(北海道)は2018年4月、中部地方においてドラッグストア事業を営むビー・アンド・ディーホールディングス(愛知県)の全株式を取得し、子会社化することを決議した。これにより同グループは持続的かつ高い成長性を追求するための戦略として、ドミナント戦略に基づく地域集中出店及びM&Aによる新規地域への進出・既存店舗網のさらなる拡充に取り組む意向である。

企業価値の目安

EV/EBITDA倍率は11社平均で13.03倍であり、分布としては12~14倍が3社、10~12倍が2社、6~8倍が2社となっている。地域密着型のドラッグストアがM&Aを進める場合、売上・利益、資産内容など財務面も大切だが、エリア、在庫を管理している情報システム、従業員の構成(資格の有無など)も重要な検討項目といえる。

企業価値の目安