調剤薬局の現状や課題にはどのようなことがありますか?
富岡:昔は処方箋をたくさん受け付ければその分だけ利益を上げることができましたが、相次ぐ診療報酬改定や薬価改定により、ただ薬を調剤すればいいということではなくなりました。調剤薬局の業界でも「モノからヒト」への時代になってきており、かかりつけ薬局の機能を備えたり、地域貢献に注力したりしないといけません。
今泉:病院の隣にある、いわゆる門前薬局と呼ばれるような調剤薬局はお店を開いていれば患者さんが来るので、それだけで経営が成り立ちました。
そういう薬局は○○病院の隣の薬局、というようにお店の名前を憶えてもらえません。お店の名前を憶えていただくためには薬を処方するだけでなく、薬剤師が患者さんとコミュニケーションを取れなければ印象に残りません。今後、調剤報酬点数の加算を取っていくためには薬剤師のコミュニケーション能力も問われる時代になってきていると感じます。
M&Aを検討されたのはどのような理由からでしょうか。
富岡:当社は私が経営に入るまでは私の両親が夫婦二人で経営していました。4年ほど前に母が亡くなり、父が一人になったタイミングで私がトミオカ薬局の代表取締役になりました。社内で後継者の育成が難しかったことに加え、2021年あたりのコロナ禍の影響で財務状況が厳しさを増していく中で、M&Aによる事業承継という選択肢もあるかもしれない、という話を聞いて動き始めました。
M&Aを決断して良かったと思われるのはどのようなときでしょうか。
富岡:一番は会社が継続していくということです。二つ目はグループ化したことで経営面の相談相手ができたことです。現在、人材確保の問題や財務状況、就業条件など当社の構造的な問題を今泉社長と共に変えていこうとしています。経営面での相談ができるお相手ができたことで精神面の負担が軽くなりました。経営者というのは孤独ですから、そういった孤独感を解消できたことがM&Aのメリットだと感じています。
初代の郷里である熊谷市で開業して75年超。
地域密着型の薬局として地域住民に欠かせない存在となっている。
タウンメディカル様の今後のM&A戦略についてお聞かせください。
今泉:今回のM&Aでグループ化によるスケールメリットを追う時代ではなくなったと感じました。医薬品の卸売会社とも話していますが、薬の価格は限界まで下がってきているので、グループの規模を大きくしても仕入れコストを下げるのは難しい段階に来ています。M&Aというとシェアを確保して原価を下げるというイメージがありますが、調剤薬局の場合はそうではなくなっています。ですので、今後は採用といった人材確保の部分に注力していきたいです。人の採用というのはこれからどんどん難しくなっていきます。これからは意欲のある人を10人、20人と増やしていけるようなM&Aをしていくのが良いのではないかと考えています。
経営や事業承継に課題を抱えている経営者の方に向けたメッセージをお願いします。
富岡:将来に不安を感じていたらまずは相談してみてはいかがでしょうか。ただ、仲介会社からの手紙や電話だけでは、どこの会社を選ぶのか決めるのは難しいと思います。そのような場合は、第三者に相談してみるのもいいと思います。