M&A担当者のための「SMART M&Aナレッジ」

SMART M&Aナレッジ 特別対談

SMARTの原点をたどる ストライク創業者と語る、ゼロイチのプロダクト開発

M&Aプラットフォーム「SMART」は、インターネット黎明期の1998年に誕生しました。リニューアル公開の節目に、創業者が自らHTMLを書いた原点と、プロダクトづくりの思想を特別対談で紐解きます。

2026.07.11

荒井邦彦と山本新の特別対談の様子
荒井 邦彦株式会社ストライクグループ 代表取締役社長 山本 新株式会社CoPalette CEO

INTRODUCTION

株式会社ストライクが展開するM&Aプラットフォーム「SMART」が、本日、待望のリニューアル公開を迎えました。あらゆる情報がオンラインで行き交う現代にあって、「SMART」の誕生はインターネット黎明期の1998年にまで遡ります。国内のM&A市場においていち早くオンライン化を実現したSMARTサービスは、外部の制作会社ではなく、創業者である荒井邦彦の手によって産声を上げました。

新生「SMART」が幕を開けたこの節目に、あらためて紐解きたいのは、その原点に宿る「思想」です。本記事では、株式会社ストライクグループ 代表取締役社長の荒井邦彦と、CraftStadiumを運営する株式会社CoPalette CEOの山本新氏による特別対談をお届けします。創業期における「SMART」誕生秘話をはじめ、情報設計、セールス、CI、そして次世代を担う若者たちへのメッセージまで、余すところなく語り合っていただきました。

また、記事の末尾では、今回のリニューアルについて、ストライク担当者からのご挨拶を掲載させていただいています。ぜひ最後までご覧ください!

話し手プロフィール

荒井 邦彦の顔写真

荒井 邦彦

株式会社ストライクグループ 代表取締役社長

公認会計士として監査法人に勤務した後、1997年にストライク(現ストライクグループ)を創業。中堅・中小企業を中心としたM&A支援を軸に事業を拡大し、現在は大企業案件にも領域を広げている。創業初期には、「SMART」の初代Webサービスを自ら制作した。

山本 新の顔写真

山本 新

株式会社CoPalette CEO

学生・若手エンジニアが実践を通して学べる場づくりに取り組み、CraftStadiumを運営。ハッカソンやコミュニティ活動、コンテンツ制作を通じて、ものづくりの哲学と実践知を次世代に届けている。

手を動かすことから始まった、創業期のものづくり

山本 新(以下、山本)今日は、ストライクの最初のサイト、つまり「SMART」の原点について伺いたいです。CraftStadiumでは、学生がゼロから手を動かしてプロダクトをつくる姿を日々見ています。だからこそ、創業者自身がサイトをつくったという話に強く惹かれました。

荒井 邦彦(以下、荒井)よろしくお願いします。いま見ると本当に時代を感じるサイトですよね。ただ、当時はそれが精一杯でした。会社をつくったのは1997年ですが、実際に「SMART」のようなウェブサイトをつくったのは1998年ごろです。まだ監査法人に在籍していた時期とも重なっていて、今思えばかなり綱渡りでした。

初代SMARTの説明ページ画面
1998年当時のストライクのWebサイト/出典:Internet Archive Wayback Machine
1998年当時のSMARTトップ画面
1998年当時の初代「SMART」トップ画面/出典:Internet Archive Wayback Machine

山本しかも、外注ではなくご自身でつくられたのですよね。

荒井そうです。当時はホームページ制作ソフトも高かったのです。いまのように気軽に試せる時代ではありません。本屋で本を買ってきて、自分でHTMLを勉強して書いていました。たしか本は2,000円くらいで済みましたが、業務用の制作ツールは何十万円もするものがありました。創業したばかりの会社にとって、その差はとても大きかったです。

山本その発想がすでにプロダクト創業者らしいですね。必要なら自分でつくるという姿勢がある。

荒井そうですね。起業したばかりの人に最初からあるものは、せいぜい時間と体くらいです。お金もない、人脈もない、経験もない。だから、自分の労働時間をどう使うかが重要になる。私は営業経験もなかったので、ウェブサイトをつくって、そこから問い合わせを集めるしかありませんでした。強みを生かしたというより、これしかなかったというのが本音です。

対談中の荒井邦彦と山本新氏
左から 株式会社ストライクグループ 代表取締役社長 荒井邦彦、株式会社CoPalette CEO 山本新氏

山本その、これしかなかった、という選択が、結果として大きな先行優位になっているのが面白いです。

荒井もし私に営業経験があって、ネットワークも豊富だったら、たぶん別の始め方をしていたと思います。ウェブにここまで賭けていなかったかもしれません。けれど、営業が得意ではなかったからこそ、「SMART」が早く生まれた。そう考えると、弱みがそのまま事業の形になることもあるのですね。

時代を先取りしていた、M&A市場のWeb化という挑戦

山本初期の「SMART」を見ていると、デザインそのものより、情報を整理して届けようという意思が伝わってきます。情報設計の発想が最初から入っていたように感じます。

荒井そう言っていただけるとうれしいですね。当時、日本でM&Aの情報をウェブに出している会社はほとんどありませんでした。だからこそ、まずは「M&Aとは何か」から説明しなければならなかったのです。今でこそSEOだ、AI検索だという話になりますが、当時はYahoo!ディレクトリの時代でした。きちんと整理されて掲載されることが重要だったのです。

山本時代の前提がまったく違いますね。

荒井通信環境もまるで違いました。画像1枚でも読み込みに時間がかかる。動画なんて、ほぼありえない。だからサイトは軽く、シンプルにする必要がありました。派手さではなく、必要な情報にたどり着けることが大事だったのです。

情報整理の重要性について語る荒井邦彦
限られた通信環境の中で、いかに情報を整理して伝えるかを語る荒井

山本いまのプロダクトづくりでも、本質は同じかもしれません。技術が進んでも、ユーザーが迷わないことが大事です。

荒井その通りです。私はよく、「新しく見えて古臭いものと、古く見えて新しいものが世の中にはある」と話します。たとえばSaaSやサブスクという言葉も、見方を変えれば昔からある仕組みです。一方で、昔の見た目をしていても、情報がよく整理されていて、本質的に新しいものもある。大事なのは、見た目の新しさではなく、何を解決しているかなんです。

山本「SMART」もまさにそうですね。M&Aの情報は、全部をきれいに標準化できるものではありません。売り手も買い手も、それぞれ事情があります。

荒井M&Aの案件情報は、決める前の段階にグラデーションがある。どこまで出せるか、何を伏せるか、どう載せたらどの会社か特定されないか。その設計が難しいのです。あまり細かく書けば、面白半分で特定する人も出てきます。匿名性と有用性のバランスは、今も変わらず重要ですね。

山本その意味では、「SMART」は単なる案件一覧ではなく、実務の繊細さをどう扱うかというプロダクトでもありますね。

プロダクトづくりの本質を語る山本新氏
「技術が進んでも、ユーザーが迷わないことが大事」とプロダクトづくりの本質を語る山本氏

荒井そうですね。だから私は、プロダクトは見た目だけで成立するものではないと考えています。どういう思想で情報を扱うのか、どういう配慮をするのか。そこまで含めて設計です。

良いプロダクトを届けるために必要だった営業の力

山本ここは、学生エンジニアや若手エンジニアに特に聞いてほしい部分です。荒井さんは、当時の自分に足りなかったものを一つ挙げるとしたら、何になりますか。

荒井間違いなくセールスですね。技術はもちろん大事ですし、プロダクトの質も大事です。けれど、それと同じくらい、どう届けるかが重要です。いいものをつくれば自然に売れる、という考え方には魅力がありますが、現実にはセールスの力がなければ広がらないことが多い。

山本とても実践的な話です。

荒井エンジニアの方は、開発に時間も愛情も注ぎますよね。それ自体は素晴らしいことです。ただ、そこに寄りすぎると、届ける力が足りなくなる。すると、類似の製品があとから出てきて、そちらに持っていかれることもあります。だから、特にプロダクトを自分でつくる人こそ、セールスに時間を配分した方がいいです。

若手エンジニアへメッセージを送る荒井邦彦
「プロダクトをつくる人こそ、セールスに時間を」。若手エンジニアへ熱いメッセージを送る

山本耳が痛い人も多いかもしれませんね。

荒井私自身がそうでしたからね。最初のお客様を獲得するまでに半年、そこから成約までさらに一年半かかりました。最初の案件は、社長が病気を患い、後継者もいない。ネットで調べて、うちにたどり着いてくださったのです。今ならもっと早く進められたかもしれませんが、当時は営業力が足りなかった。会社の魅力を伝えきれていなかったのでしょうね。

山本その苦労の末に成約した案件だったわけですね。

荒井そうです。そして譲渡が決まった時、奥様が涙を流して喜んでくださった。ご主人は余命宣告を受けていて、会社を残したまま亡くなるわけにはいかなかった。だから、これで安心できる、とおっしゃったのです。その後、社長は亡くなられましたが、会社はきちんと引き継がれ、今でも残っています。しかも、会社の規模は当時の何倍にもなっている。そういう話を聞くと、この仕事は単に案件をまとめるだけではなく、企業や人の時間をつなぐことなのだと感じます。

山本プロダクトが事業を支え、その事業が人を支えている。とても重みのある話です。

「デザインは見た目だけではない」企業の芯を形にするCI

山本創業時の「SMART」も印象的ですが、ストライク全体のロゴやブランドの話にも通じるものがありますよね。特に上場のタイミングでの見直しは、プロダクトをつくる人にとっても学びが大きい気がします。

荒井創業20年と東証一部上場(現東証プライム)のタイミングでCI(コーポレートアイデンティティ)を見直し、その時に強く学んだのは、「デザインは最後に削り出されるものだ」ということでした。ロゴだけ変えればいいわけではない。会社は何のために存在するのか、何を価値として提供するのか、その思想が先にある。そこから行動が生まれ、最後に視覚として定着するのです。

山本見た目だけ整えても、芯がなければ長続きしないわけですね。

荒井そうです。マインドがあり、ビヘイビアがあり、最後にビジュアルがある。エンジニアの世界でも同じではないでしょうか。コードだけ書けばいいわけではなく、なぜつくるのか、どんな体験を届けたいのか、そこがなければ設計はぶれます。

山本まさにプロダクト思考の話です。

荒井会社もプロダクトも、最初は創業者の色が濃いものです。けれど、社員が増え、社会との接点が増えるほど、個人のものから社会のものになっていく。その時に必要なのは、誰が見ても伝わる芯です。そこがあると強いですね。

「行動が未来をつくる」創業者から若い世代へのメッセージ

山本最後に、これからプロダクトをつくる学生や若手エンジニアに、一つだけ伝えるとしたら何でしょうか。

荒井行動です。考えることはもちろん大事です。でも、考えているだけでは時間が過ぎていきます。気がついたら本当にあっという間です。ですから、まず動くこと。これに尽きます。

思想の重要性を説く荒井邦彦
会社は何のために存在するのか。視覚の根底にある「思想」の重要性を説く荒井

山本シンプルですが、一番難しいことでもありますね。

荒井そうですね。私は、変化が大きい時代ほど、何が変わらないかを見極めることが大事だと考えています。AIもそうです。AIはこれから確実に定着するでしょうし、業務にも取り入れた方がいい。けれど、だからといって人間の営みの本質まで全部変わるわけではありません。何が本質で、何が流行なのか。それを見極めたうえで、自分はどう動くのかを決める。そこが大切です。

荒井新しいものに飛びつくこと自体が悪いわけではありません。ただ、芯がないまま飛びつくと、自分の時間もお金も浪費してしまう。だから、自分の立ち位置を持ったうえで行動する。すると、流れを使えるようになります。

山本今日は、創業者が自分でHTMLを書くところから始まり、情報設計、セールス、ブランド、行動まで、すべてが一本の線でつながっていると感じました。

荒井ありがとうございます。結局のところ、プロダクトづくりも経営も、最初は自分でやってみるしかないのですよね。完璧になってから始めるのではなく、動きながら整えていく。その繰り返しです。

山本僕自身も、行動し続けようと改めて感じました。本日はありがとうございました。

荒井ありがとうございました。

取材・文・撮影:市橋 明季

M&Aプラットフォーム「SMART」リニューアル
「SMART M&Aナレッジ」創刊のご挨拶

SMARTの原点は、創業者が資金も人脈も限られたなかで、自ら学び、自ら手を動かしてつくった、必要から生まれたプロダクトでした。そしていま、そのSMARTは次の段階へ進もうとしています。

SMARTが誕生したのは1998年のことでした。時代が進み、M&Aを取り巻く環境は変わりました。2025年のタナベコンサルティングの調査データによれば、上場企業の過半数で「M&Aの専門人材を配置している」と回答するなど、成長企業において、M&Aとその担当者の重要性はかつてないほど高まっています。

そのような時代において、今回のリニューアルでは、M&A担当者のためのナレッジメディア「SMART M&Aナレッジ」を創刊しました。ストライクの29年以上のM&A仲介サービスと3,600件を超える成約案件から得た知見をもとに、M&A担当者の皆様に向け、様々な業界の最新動向やM&A実務に直結する専門情報をお届けしていきます。

新しい時代の中で変わりゆくもの、そして変わらない「人の想い」に向き合い、これからも手を動かし学ばせていただきながら、SMARTは確かな決断に近づくための総合M&Aプラットフォームへ進化していきます。

2026年7月11日
株式会社ストライク M&Aプラットフォーム「SMART」運営事務局