ご成約インタビュー No.71
INTERVIEW
50代での事業承継は早くない!
人気の家づくりを行う住宅グループのオーナーが
グループ6社をファンドに譲渡
- #後継者不在
- #創業者
- #成長加速
- #セカンドライフ
- #投資ファンド
- #住宅・不動産
株式会社ハートグループホールディングス 顧問 山口 秀明 氏
神奈川県湘南エリア、特に茅ヶ崎市や藤沢市で高い人気を誇る「ハートフルの湘南の家」。手掛けるハートグループは創業1997年、不動産仲介・分譲、住宅の企画・設計・施工・販売、リノベーションなど、住まいにまつわるあらゆる事業を展開するグループだ。創業オーナーである山口秀明氏は2023年9月、グループ7社のうち6社を投資ファンドのエンデバー・ユナイテッド株式会社(東京都千代田区)に譲渡した。湘南らしい家づくりをテーマに地域密着でグループを育ててきた山口氏に50代で譲渡を決断した背景や譲渡先にファンドを選んだ理由、セカンドライフのプランなどについて伺った。
株式会社ハートグループホールディングス
ご成約インタビュー動画
お客様のニーズに寄り添い
湘南らしい家や暮らしを提供するため
事業・サービスを拡充
起業のきっかけを教えてください。
バブル崩壊後、多くの不動産会社がその影響を受け、私が勤めていた会社も業績が悪化、自分の力でやってみようと思い立ち、1997年、28歳のときに独立・起業しました。
私と従業員1名、2名のスタートで、最初の数年は不動産仲介・分譲を行っていましたが、湘南ならではのライフスタイルやデザインを形にしたいと思い、建築業の会社を設立しました。その後、マーケティング・広報の会社なども興し、ハートグループは全部で7社、不動産仲介・分譲、住宅の設計・建築、リノベーションなど、湘南の住まい・暮らしに関するさまざまなニーズに応えられるグループとなっています。
もともと不動産営業のお仕事を?
はい。高校卒業後、神奈川県内のお菓子工場に就職しました。アイスがたくさん食べられて楽しかったのですが(笑)、資格が必要な仕事に就きたいと思い、たまたま宅建という資格を知って、未経験で不動産会社に入りました。その会社の社長が「営業で経験を積みながら宅建を取ればいい」と言ってくれたので、テレアポや飛び込み営業もやりながら勉強して資格を取得しました。
設立当初から事業拡大を考えておられたのでしょうか。
事業拡大を狙っていたわけではなく、お客様のニーズにきめ細かく応えるため、「〇〇も自分たちでやろう」「△△も社内でできるといいね」と進めていたら、自然に人も事業体も増え、グループでの相乗効果も生まれるようになりました。
茅ヶ崎市や藤沢市にはハートフルの家が立ち並んでいます。
「湘南らしい家」は私たちが一貫して取り組んでいるテーマであり、強みです。私たちがつくる家の特徴の一つとして、例えば日当たりのいい2階リビングが挙げられます。リビングに開放感が出るように、屋根の勾配に合わせて天井に傾斜をつける「勾配天井」にすることも多いです。大切にしているのは、湘南を愛するお客様が1日を通して安心・快適に過ごせる家づくりです。
近年はグループのプロジェクトとして、ロケーションを生かしオンリーワンの家をつくるリノベーション事業「湘南HEART」にも取り組んでいます。家は街に直結していますので、家づくりを通して街づくり、地域貢献に寄与することも目指しています。
社長は社員に、株式はファンドに――
健全な経営や合理的な投資判断のため
「事業主≠株主」の体制に
譲渡を考えるようになったきっかけは?
考え始めたのは2年ぐらい前です。グループが大きくなるにつれ、組織づくりや社員教育、ガバナンス・コンプライアンスの重要性が増し、そうした課題に自社だけで取り組むのは難しい、外部の力を借りたほうがいいと思うようになりました。健全な経営や合理的な投資判断の観点から「事業主≠株主」の体制がいいという考えもありました。
親族承継や社内承継の選択肢はなかったのでしょうか?
息子は弁護士になりましたし、「事業主≠株主」の体制がいいと思っていたので、親族承継や社内承継は考えていませんでした。いずれにせよ、そろそろ事業は社員に任せるつもりで以前から社長候補を育てていたので、社員が社長を務めることを譲渡の条件にしました。
その他の譲渡の条件を教えてください。
私の将来設計も含めストライクの大西さんにご相談して、グループ7社のうち1社を残し6社をまとめて譲渡すること、経営や組織づくりのノウハウを持つ先を中心にお相手を探してもらうことにしました。「建築会社だけがほしい」といったオファーもあったそうですが、6社で湘南の住まいにまつわるニーズをトータルにサポートできることが大きな強みなので、6社をまとめて譲り受け成長させてくれるお相手を希望しました。
数社と面談した結果、エンデバー・ユナイテッド様を選んだ理由は?
経営ノウハウが豊富である点が魅力でした。昨年3月、横須賀・横浜から湘南にかけて事業を展開している同業のウスイホームホールディングスさんを譲り受けておられることもポイントでした。エリアが隣接しているので、2社が組めば多彩なシナジーが期待できると思っています。
トップ面談の印象を教えてください。
まさかエンデバー・ユナイテッド社から三村(智彦)代表がいらっしゃるとは思っていなかったので、びっくりしました。お会いしたいという熱意があって、来てくださったとのことでした。いろいろ具体的なお話もでき、充実した面談になりました。
成約まで悩んだことはありますか?
たくさんあります。本当に社員たちを大切にしてもらえるのか?M&Aは社会的にどう評価されるのか?譲渡後、自分の人生はどうなるのか?いろいろなことを考えました。もうやめようかと思ったときもあります。でも、自分たちだけでの成長が難しいことは確かなので、ストライクが一番いいお相手を提案してくれたはずだと信じて、前に進むことにしました。
社員の方にはいつどのように伝えましたか?
成約の1カ月ぐらい前に、まず各社長・社長候補に話しました。驚いた様子でしたが、理由を説明し、「グループの成長のために必要な決断だ」と伝えたところ、納得して前向きに捉えてくれました。
発表は成約後、全社員を集めて直接、伝えました。仕事の内容も労働条件も変わらないためか、反応は薄かったですね。株主が変わることは社員にとって、こちらが思うほど大きくはないものだと思いました。
M&A後の各社の様子を教えてください。
期待していた組織づくりはすでに着実に進んでいて、経理・財務やブランディングのプロの人材が投入されることになっています。また、ウスイホームホールディングスさんとは先日、キーマンの顔合わせの食事会がありました。これから協業が進むと思います。
私自身は顧問として1年間、残ることになっています。各社の社長とは常にコミュニケーションをとっていて、よく飲みにもいきます。皆とても前向きに頑張ってくれています。
M&Aアドバイザーより一言(大西 達也・事業法人部アドバイザー談)
ハートグループホールディングス様は、湘南エリアに特化した土地仕入れと建築物で、地元での知名度と評判が非常に高く、業績も創業から右肩上がりに成長を続けてきておりました。周りから見れば順風満帆とも思える企業様でしたが、会社や従業員、また不動産業界全体の事を考え「成長戦略」としてのM&Aを検討されました。
社内の課題解決や今後の成長性という点を見据えて検討を重ねられた結果、さらなる業績拡大を目指せるお相手としてエンデバー・ユナイテッド様との成約に至りました。成約後には、山口様が期待していた組織作りやガバナンス強化の知見、既存投資先との事業的・エリア的なシナジー創出に向けた交流など、求めていた変化が起こっているとお伺いし、担当者としてこれからの展開がとても楽しみです。
今後も両社のさらなる発展を心より願っております。
生き残り&成長のためには
M&A含め複数の選択肢を持つ必要がある
セカンドライフのプランを教えてください。
残した1社(株式会社ハートアセットマネジメント)はいわゆる“大家業”がメインで、この会社をどう展開していくか考えているところです。
故郷の宮崎・川南町で経営している「HOTEL KAWAMI-NA(ホテル カワミーナ)」をもっと盛り上げることも、これからの私の仕事です。合宿誘致などで町の経済を支えるだけでなく、町民のコミュニティの場でもあるのですが、コロナ禍で破綻、私が再建を担うことにしました。2023年3月、リニューアルオープンして、合宿のお客様も戻り始めています。ブライダルホールという大きな施設を町の交流に有効活用することが当面の課題です。
そう考えると、以前より忙しいかもしれないですね(笑)。悠々自適のセカンドライフはまだ先になりそうです。
ストライクのサービスや担当者はいかがでしたか?
レスポンス、対応の速さが素晴らしかったです。依田さん、大西さんの二人体制で、お二人の連携もよかったと思います。実は専任の仲介契約ではなく、他社にも相談できる契約にしたのですが、結局、ほかには相談しませんでした。最初から最後まで安心してお任せできました。
M&Aは交渉事ですから、中立的な立場で双方の条件を刷り合わせてくれる、信頼できる仲介のプロは欠かせないと思います。
湘南地区でも後継者問題を抱える企業は増えていますか?
増えていると思います。経営者仲間が集まったときも“オレたちどうする問題”はよく話題に上りますね。同年代で一時代を築いてきたけれど、跡継ぎがいない。いずれ事業承継はしなければならないし、私は50代でのバトンタッチは決して早くないと考えています。自分ではまだまだやれると思っていても、今の時代にマッチしなくなってきていると思うからです。年を取った人間がいつまでも自分の感覚で仕事をするのは、いいことばかりではありません。組織の存続・発展のため、次の世代に仕事をまかせ委ねていくことが必要だと思います。
最後に譲渡を検討している経営者の方にアドバイスをお願いします。
最終的には自分で決めるしかありませんが、まずは一人で悩まずプロに相談して、事を進めてみるといいのではないでしょうか。自社の価値やどんな会社が買い手候補になるのか、どんなシナジーが期待できるのかなどを知ると、成長のために自社に必要なもの・不足しているものも明確に見えてきます。会社のことを一番よく考えているのは社長ですから、会社をもっとよくするための選択肢を多く持ち、検討することが大切だと思います。
不動産業界に限って言えば、生き残りはますます厳しくなるはずです。競争は激化していますし、2025年には「省エネ基準」(建物の環境性能に関する規制)が義務化され、低炭素住宅を取り入れていくことも必要になります。中小企業が1社だけで環境問題に対応するのは容易ではありません。大手との協業は生き残り、成長の手段の一つになるはずです。
本日はありがとうございました。
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