ご成約インタビュー No.153
INTERVIEW
株式会社フード・フォレスト 代表取締役 ※現在は退任 森口 愛氏
創業以来35年間にわたり、地域に根ざした独自の食文化を育んできた株式会社フード・フォレスト(静岡県浜松市)。しかし、後継者不在、中規模ゆえの身動きの取りづらさ、そして経営者の心身の限界という現実に直面し、創業者である森口 愛氏はM&Aを決断されました。森口氏の決断は、多くの経営者が抱える「孤独と終活」の問いに深く向き合った結果だといえます。経営の重圧から解放され、安堵の表情を見せる森口氏の率直な言葉を通し、理想のパートナー「まん福ホールディングス株式会社」との出会い、そして従業員の幸せを最優先した事業承継の真意に迫ります。
株式会社フード・フォレスト
ご成約インタビュー動画
35年の重荷 経営の岐路で直面した後継者問題と将来への不安
M&A検討の経緯と動機は何ですか?
私が最初に直面したのは、M&Aの検討というよりも「後継者をどうすべきか」という切実な悩みでした。22歳で店を始めた当初から「55歳で引退する」と夢を語ってはいたものの、実際にはそれに向けての準備は何もできていませんでした。50歳を過ぎてからようやく後継者について考え始め、当初は社内承継を模索しましたが、なかなか進展しませんでした。
その後、母の介護が必要になったことや、コロナ禍のような予期せぬ事態が重なり、「もし私が不在になったら、この会社の未来はどうなるのか」という不安が募り始めました。当時、社内承継を打診していた人物の決断をただ「待つしかない」という状況は、私にとって先が見えない大きなストレスとなっていたのです。
そんな折、コロナ禍の少し前、約6年前にM&A仲介会社からアプローチを受けたことで、初めてM&Aという「選択肢」を認識しました。当初はM&Aに対して「怖そう」という漠然とした印象を抱いていましたが、同時に「自社の価値は世間的にどれほどあるのだろうか?」という思いも湧いてきました。まさか、うちのような小さな会社を必要としてくれる企業があるとは想像もしていなかったので、「とりあえず一度、話を聞いてみるか」という軽い気持ちからのスタートでした。
中規模ゆえの経営の苦悩
8店舗抱えていて苦悩はありましたか?
「和ごはん とろろや 佐鳴台本店」
当時は8店舗を経営していましたが、さらなる出店を計画していた矢先にコロナ禍に見舞われ、5年もの停滞を余儀なくされました。スタッフの士気の低下や退職者の発生など、苦しい時期が続きました。コロナ明けには売上・利益ともに以前の水準に戻ったものの、今度は人件費や原材料費の高騰、業界全体の人手不足という新たな壁が立ちはだかり、将来をどう描くべきか悩み続ける毎日でした。
特に大きな不安の種は、後継者が決まっていない中での「新規出店」でした。飲食店の出店には1店舗で数千万円の借入が伴います。後継者が決まっていれば、それは未来への希望ある「投資」となりますが、不在の状態では、その大金がただの「負債」というリスクにしか思えなくなってしまったのです。そんなリスクを負ってまで拡大すべきなのかと、一歩踏み出すことが非常に怖くなりました。
もし出店を諦めて現状維持を選べば、経営は自ずと「将来」ではなく「目の前の対策」に追われる守りの姿勢になってしまいます。店舗規模の縮小すら視野に入れざるを得ない中で、「こんな後ろ向きな考えの社長で、会社の成長はあるのか」という葛藤が2年ほど続きました。
先が見えない不安の中で、次第に経営への意欲も失われていきましたが、それと同時に、後継候補がなぜ承継を決断できないのか、その重圧も痛いほど理解できました。自分自身の限界と、次の世代が抱えるであろう不安。その両方に向き合った結果が、M&Aという選択肢へとつながっていったのです。
創業者として変えられなかったこだわりと変革
創業35年で培った「こだわり」を、なぜ手放す決断をされたのですか?
そもそも、社内承継であっても家族への承継であっても、私以外の人間が経営を担うことになれば「こだわり」は変わるものだと思っていました。人だけでなく、時代と共に変化していくのは当然のことです。ですから、次の経営者には、これまでの私のこだわりによって「何を得て、何を失ったのか」を冷静に判断し、それを次へ活かしていただきたいと考えていました。
私自身、時代に合わせて変革をしてきたつもりですが、創業者だからこそ思いが強すぎて変えられずにいたものもたくさんありました。例えば、材料の鶏肉一つをとっても国産にこだわり続けた結果、原価が高くなるという課題を抱えていました。また、店内手作りを貫くことで、仕込みや調理の段階でスタッフに多くの手間をかけ、負担を強いていた面もあったかもしれません。
国産でなくても安全な材料を確保することや、美味しく簡単な調理オペレーションの導入など、次の経営者には「会社の売上が上がり、従業員が楽になるような合理化」をぜひ進めてほしいと望んでいます。こだわり抜いてきた私自身が方針を変えようとすると、スタッフにとっては「前言撤回」と映り、受け入れがたい部分もあるでしょう。しかし、承継を機に新しい視点で改革が行われるのであれば、皆もそれを前向きに捉えてくれるはずだと考えたのです。
譲渡先に求めた条件と、まん福ホールディングスを選んだ決め手は何ですか?
譲渡先に求めた条件は二つありました。
一つは、オーナー社長のいる会社や同業他社を避けることです。色が濃い会社同士では、お互いにやりにくいだろうと懸念しました。
もう一つは、飲食の「川上」、つまり農業や漁業など、原材料を持っている会社が良いと考えていました。「まん福」という社名も縁起が良いと感じたことも、直感的な決め手の一つになりました。
私たちの課題は、常に原価と材料の安定調達でした。この弱点を克服できるまん福ホールディングスさんが、水産加工会社などを傘下にお持ちで、川上を押さえている点は、私たちの理想に限りなく近かったのです。
また、弊社は私と従業員の距離が近すぎるために、属人的な運営から脱却できていないという課題もありました。その点、まん福ホールディングスさんは、組織としてのガバナンスが確立されており、管理体制が非常にしっかりしていると感じました。彼らのもとであれば、従業員は「普通の会社」の組織運営を学べると期待しています。
孤独からの解放 プロのサポートが導いた決断
M&A実行から1ヶ月経ち、心境にどのような変化がありましたか?
「すごく楽になった」「スッキリした」の一言に尽きます。常に張り詰めていた重圧から解放され、夜もぐっすり眠れるようになりました。
以前は、現場からの最終判断を仰ぐ連絡が絶え間なく寄せられ、息つく暇もありませんでした。現在はそうした緊張感から解放され、心穏やかな日々を過ごせています。
一方で、従業員の今後はやはり心配していました。しかし、譲渡先がすぐに全体会議を開くなど、組織的な行動力を見せてくれたことで、その心配は期待に変わりました。私のこの決断は、35年間、仕事優先で自分のことを後回しにしてきた人生の中で、初めて「自分のこと」を一番に考えられる選択肢を選んだということでもあります。
最も大切なのは、M&Aの結果として、「従業員が幸せになって、地域のお客さんが喜んでくれるお店」になることです。私は次の経営者に、その全てを託しました。
M&Aプロセスで最も大変だったことはありますか?
M&Aのプロセス自体はスピーディーで、あっという間に進みました。あっという間すぎて悩む暇がありませんでした。
ただ、デューデリジェンス(DD)の作業は大変でした。幸い、日頃から会計士による会計監査をしっかり行っていたおかげで、書類提出は比較的スムーズに完了しました。この経験から、日頃の会計管理の重要性を痛感しました。従業員には秘密にしていたのでM&Aの過程は孤独な作業でしたが、ストライクのサポートには大変感謝しています。担当の相馬さんには、専門用語も進め方も全く分からなかった私を、とても親身になってサポートしていただきました。進んでいく中での心の葛藤はものすごくあったので、あの時期の私の心のケアをしていただけたことに本当に感謝しています。
事業承継を考える経営者へのメッセージと、飲食業界の未来への提言をお願いします
事業承継を考える経営者の方々には、「自分の思いを完全に引き継ぐ人」はいないと思うと楽ですよと言葉をかけたいです。 自分のやってきたことを潰したくないなら、死ぬまで自分で自分の思った通りに経営すれば良いと思います。事業を譲渡すると決めたなら、何を最優先事項とするかを明確にすることが重要と言われました。私自身は、現状の会社をお客様やスタッフが困らないように経営していただけるということが一番の最優先事項でした。私のやってきた通りに経営していただくということは考えてはいなかったので、私や現在の会社にないものをもっていることがとても心強かったです。担い手不足や仕入れ問題が深刻化する中、M&Aは互いの得意分野を活かす「共同」のような形になることで、業界課題を乗り越える選択肢になり得ると考えています。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(相馬 峻平・事業法人部 アドバイザー談)

フード・フォレスト様は、静岡県浜松市を中心に「とろろ屋」として地域の方々に長く愛されてきた会社様です。私も幾度となく定食をいただきましたが、豊富な小鉢や季節の新メニューなど、その一皿一皿からおもてなしの心が伝わり、いつも温かい気持ちでおいしく食事をさせていただきました。
店舗やメニューの随所に、オーナーである森口様の並々ならぬこだわりが反映されておりますが、何より印象的だったのは、常に「従業員の皆様」を第一に考え、その将来を案じておられたお姿です。今後は新たな体制のもと、グループとしてさらに飛躍されることを、私自身も一ファンとして楽しみにしております。
2026年3月公開
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