ご成約インタビュー No.123
INTERVIEW
PINECONEが語るM&A戦略:
「地味に尖った」企業への共感と未来への継承
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- #戦略的M&A
- #事業投資
- #投資ファンド

PINECONE Holdings株式会社 共同代表 服部周作氏
PINECONE Holdings株式会社 プリンシパル ディレクター 服部知宏氏
PINECONE Holdings株式会社(東京都中央区)は、長期目線で日本の事業承継問題などを抱える優良な中小企業に投資し、経営支援を行う投資会社だ。地域に根ざし、目立たないながらも社会に貢献する企業を「地味に尖った」企業と定義し、その企業価値を重視している。今回のM&Aでは、給排水設備の清掃・メンテナンスを手掛ける大進総業株式会社(埼玉県新座市)の事業モデルと、従業員を大切にする経営姿勢に共感し、M&Aに至った。本記事では、PINECONEの服部周作共同代表と服部知宏ディレクターに、M&Aの経緯や戦略、今後の展望について詳しく伺った。
PINECONE Holdings株式会社
ご成約インタビュー動画
長期目線で優良中小企業に投資
PINECONEの事業内容と強み
御社の事業内容や強みについて教えてください。

服部周作:PINECONE Holdings株式会社は、日本国内にある優良な中小企業様に対し、超長期にわたる投資を行っています。一般的なPEファンドとは異なり、投資期間に制約を設けず、原則として永続的に保有し続け、その発展を支援することを前提としています。私たちの投資の特徴は、伝統産業や地域に根ざした、独自の強みを持つ企業、いわゆる「地味に尖った」企業に注目し、その自主性を尊重しながら、共にのびのび一つ屋根の下で成長を目指すという点です。これらの企業は、目立たないかもしれませんが、社会を支える重要な役割を担っており、私たちはその価値を最大限に引き出すことを目指しています。
M&A検討のきっかけと経緯:
地域に根ざした「地味に尖った」企業への共感
今回のM&Aをご検討されたきっかけについて教えていただけますでしょうか。
服部周作:当社では常に、業種業態を問わず、様々な産業の特性を重視し、業務提携先を開拓しています。地域に根ざし、BtoB領域で独自の専門性を発揮し、社会に貢献している企業との出会いを大切にしています。大進総業様は、一気通貫で給排水設備の清掃・メンテナンスやそれに伴う産業廃棄物の収集運搬を行う大進総業のあたたかいビジネスモデル、そしてそれを会長である創業者と家族で丁寧に守り続けてきたストーリーに深く共感しました。
代表ご家族の想いを引き継ぎつつ、次の50年を一緒に描くパートナーとして当社を選んでいただけたことは大変光栄でした。
「地味に尖った」という点を重視される理由は何でしょうか。
服部周作:私たちが求めているのは優良企業です。目立てば目立つほど、競合他社が多い市場となり、競争が激化してしまいます。「地味に尖った」企業は、見えにくい部分がありますが、それが参入障壁となり、経済的な「堀」を築くことができると考えています。例えば、大進総業様の排水管清掃・メンテナンス事業は、専門的な知識や技術が必要であり、容易に参入できる市場ではありません。そのため、既存の企業は安定的な収益を確保しやすく、長期的な成長が期待できます。また、社会と人々を支えているのは、そうした地味に尖った企業だと考えています。大進総業様もそうですが、日々の暮らしに役立っている企業を支えていきたいという思いがあります。
今回、お相手に求める条件はどのようなことでしたか。
服部周作:企業の本質的な価値を大切にしているか、地域や顧客との信頼関係があるか、そして何より「永く残る」可能性があるか、という観点を重視しました。主に、安定性や自主性の高い事業であることを大切にしています。
大進総業様は、長年にわたって多岐にわたる優良なお客様と取引を続けており、まさに“社会インフラとしての存在感”を持っている企業でした。その誠実な商売姿勢と、次世代への事業継続の強い想いが、私たちの理念と合致しました。
服部知宏:私自身の信条として、人と人が中心になって事業を進めていくことを重視しています。PINECONEでも、良いキャラクターを持っているかどうかなど、人をまず見て判断します。大進総業様は、従業員を大切にし、従業員が満足することで顧客にも良いサービスを提供し、顧客満足度が向上することで、さらに待遇が改善されるという良いサイクルを回していました。これは、私たちが理想とする企業文化そのものです。
PINECONEとしては、良い会社をそのまま成長させていきたいという思いがあり、自主性を重んじています。地味に尖っていることに加え、人を大切にするベースがあることが重要だと考えています。
お相手の企業価値をどのように評価されていましたか。

服部周作:大進総業様には、見えにくい価値が多くありました。環境に対する考え方や、取引先からの高い信頼はその一つです。また、従業員を手厚くもてなす温かい心を持ち、それを体現している点も評価しました。利益や収益力もずば抜けており、稀な企業だと感じました。
特に、環境への配慮は、今後の企業経営においてますます重要になると考えています。大進総業様は、給排水設備の清掃・メンテナンス事業を通じて、環境保全に貢献しており、その企業姿勢は高く評価できます。
服部知宏:PINECONEは投資会社として、テクニカルな分析も行いますが、定性的な要因を非常に重視しています。大進総業様は、我々が今まで投資させていただいた企業と同様に、チェック項目をほとんど満たしており、素晴らしい会社だと評価しました。
例えば、従業員の定着率や顧客満足度などは、企業の長期的な成長を測る上で重要な指標となります。大進総業様は、これらの指標においても高い水準を維持しており、その企業価値は非常に高いと判断しました。
トップ面談の印象:
情熱的な会長と冷静な社長の絶妙なバランス
トップ面談の印象はいかがでしたか。
服部周作:会長は非常に情熱的で、熱量がものすごかったです。事業をゼロから作り上げてきた軌跡を語る熱意に共鳴しました。特に印象的だったのは、ビジネスよりも顧客に満足してもらうことが一番だと考えている点です。ビジネス以上の価値を創出することで、口コミで顧客が増えるという自然な形を実践されていることに感銘を受けました。
会長の情熱的な語り口からは、事業に対する深い愛情と、顧客に対する真摯な姿勢が伝わってきました。このような経営者の下で働く従業員は、きっと幸せだろうと感じました。
服部知宏:社長は会長とは対照的に、冷静沈着な印象でした。初回のマネジメントミーティングにて当社に対してのコメントが少なく、気に入ってもらえなかったかと当初は不安に感じたほどでしたが、後々お話を伺うと、非常にバランスの取れたお二人だと感じました。創業者のカリスマを受け継ぎ、冷静に事業を運営されている姿に感銘を受けました。事業承継という点でも、非常に魅力的な会社だと感じました。
社長の冷静な判断力と、会長の情熱的なリーダーシップが組み合わさることで、大進総業様は安定的な成長を遂げているのだと感じました。
M&Aの決め手:
思いの共鳴と未来へのバトンタッチ
今回のM&Aの決め手は何でしたか。
服部周作:最終的には、お互いの思いが共鳴したことです。M&Aは定量的な部分と定性的な部分を考慮する必要がありますが、最終的にはお互いの思いが繋がり、未来へバトンタッチできると感じました。
私たちは、大進総業様の事業を単なる投資対象としてではなく、社会に貢献する重要な事業として捉えています。そのため、M&Aを通じて、大進総業様の事業をさらに発展させ、社会に貢献していきたいという思いがありました。
服部知宏:地味に尖った企業を支えたいという思いや、黒子役として事業を支えたいという精神が、私たちと大進総業様との間で共鳴したと感じています。
私たちは、M&Aを通じて、大進総業様の従業員や顧客、そして社会全体にとって、より良い未来を創造していきたいと考えています。
今後の協業内容と展望:
自主性の尊重とDX化の推進
今後の具体的な協業内容や展望についてお伺いできますでしょうか。

PINECONE Holdings株式会社 プリンシパル ディレクター 服部知宏氏
服部周作:大前提として、大進総業様の自主性を尊重し、既存の風習や文化、運営体制を踏襲します。その上で、やるべきこととやらなくていいことを明確にし、本当に注力すべき点に集中していただきます。
具体的には、DX化や顧客管理体制、ソフトウェアの見直しなどを支援していきたいと考えています。また、新たな顧客チャネルの開拓や、人材確保のプロセス構築なども支援していきたいと考えています。
服部知宏:経営管理体制の整備は必須だと考えています。経理や財務周りの報告体制を整えたり、横展開できるような体制を整備したりするなど、地道な取り組みを進めていきたいと考えています。
成長戦略におけるM&A:
共感、継承、若返り
成長戦略におけるM&Aについてどのようにお考えでしょうか。
服部周作:M&Aにおけるキーワードは、共感、継承、若返りだと考えています。新たな経営者が伸び伸びと活躍できる場を提供し、様々な経営者が知見や知識を共有することで、共感や継承が生まれると考えています。
M&Aは、単なる企業の売買ではなく、新たな価値を創造する機会だと考えています。私たちは、M&Aを通じて、企業の成長を加速させ、社会に貢献していきたいと考えています。
服部知宏:新たに生まれるキャッシュフローを再投資し、様々なプロジェクトや事業に有効活用していくことが使命だと考えています。
PINECONEのM&A戦略:
事業そのものがM&A
御社のM&A戦略について教えていただけますでしょうか。
服部周作:PINECONEのM&A戦略はシンプルで、M&Aそのものが事業内容であると考えています。投資先を成長させていくプロセスそのものが、私たちの事業です。スピードや数を追うのではなく、1社1社に寄り添い、次のステージに引き上げることを重視しています。
私たちは、M&Aを通じて、企業の成長を支援するだけでなく、地域経済の活性化や雇用創出にも貢献していきたいと考えています。
ストライクのサービスと担当者:
寄り添う姿勢と濃密なコミュニケーション
ストライクのサービスや担当者はいかがでしたでしょうか。
服部周作:担当の丸山隼人さんには大変感謝しております。PINECONEと譲渡先の大進総業様に寄り添い、濃密なコミュニケーションを取っていただきました。丸山さん抜きでは、今回のM&Aは乗り越えられなかったと思います。
服部知宏:人を重視するという私たちの考えを理解していただき、柔軟に対応していただきました。最初のウェブ会議で、私たちの投資モデルを丁寧に説明したところ、深く理解していただき、感謝しています。仲介として、常に中立な姿勢を崩さず、粘り強く最後までお付き合いただきました。安心してお任せすることができました。
今後M&Aを検討される経営者へのメッセージ:
新たな始まりと良きパートナー選び
今後、M&Aを検討される経営者の方にメッセージをお願いします。
服部周作:長年かけて作り上げてきた「事業を手放す」ことは難しい決断ですが、終わりではなく、「新たな始まり」だと考えていただきたいです。若返りを託す、バトンを託すという気持ちで、M&Aを検討していただきたいです。
M&Aは、企業にとって大きな転換期となりますが、新たな成長の機会でもあります。私たちは、M&Aを通じて、企業の未来を創造していきたいと考えています。
服部知宏:自主性を重んじたり、文化を踏襲したりするなど、良きものをさらに良くしてくれるパートナーを選ぶことが重要です。未来へ繋げていただけるようなパートナーを探していただきたいと思います。
PINECONEのPR:
多様なメンバーと未来へのミッション
最後にPINECONEのPRをお願いします
服部周作:PINECONEには、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっています。DXや環境問題など、未来を見据えて行動しているメンバーが多く、中小企業様に提供できる価値が多いと考えています。
服部知宏:未来を繋げ、事業承継を支援するというミッションを掲げ、長期投資や自主性の尊重といった構造を重視しています。様々な経験や考えを持つメンバーが集まり、中小企業様の成長を支援しています。
本日はありがとうございました。
M&Aアドバイザーより一言(丸山 隼人・企業情報部 アドバイザー談)

PINECONE Holdings様は超長期の目線を持ち、地域に根差した企業の成長支援に資する投資を行っております。投資期間を定めない事で、投資先企業の自主性を重んじながら、長期的な利益の創出にコミット出来る体制を構築されています。
もちろん投資先企業の定量的な分析もされますが、その企業が作ってきた文化、地域との繋がり、従業員や取引先との関係といった数値化出来ない定性的な要素も非常に大切にしておられます。
服部周作代表を始めとしたメンバーの皆様には、常に冷静な頭と温かい心を持ち合わせた対応を頂きました。
今回のM&Aにおいては、大進総業様の業績はもちろんの事、その裏にある創業家の情熱や従業員への想い、社会インフラを支える必要不可欠な企業様である事を評価され、株式譲受に至りました。
「黒子」として地域経済や社会インフラを支える大進総業様を、「黒子の黒子」としてPINECONE Holdings様が支援を行い、両社様が益々のご発展をされる事を心より祈念しております。
2025年6月公開
本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
是非お気軽にお問い合わせください。
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