INTERVIEW

アジアの連ドラを日本に根付かせたコンテンツ配給会社
経営基盤を固め、事業の成長を加速させるために
上場大手投資会社と資本提携

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株式会社コンテンツセブン 代表取締役社長 成 七龍 氏

株式会社コンテンツセブン 代表取締役社長 成 七龍 氏
ジャフコグループ株式会社 事業投資部 マネージング・ディレクター 水谷 太志 氏

韓国ドラマの映像コンテンツをいち早く日本に持ち込み、韓流ブームを主導してきた株式会社コンテンツセブン(本社・東京都中央区)。海外ドラマの放送配給事業における先見性と目利き力で創業以来、黒字経営を続けるなかで2023年7月、ベンチャーキャピタル国内最大手のジャフコグループ株式会社(本社・東京都港区)と資本提携した。成七龍氏、53歳での決断にはどのような考えがあったのか。資本提携に携わり、現在コンテンツセブン取締役も務めるジャフコグループ株式会社 事業投資部マネージング・ディレクターの水谷太志氏とともに話を伺った。

フリーターを経て30歳で創業
韓流ドラマ人気の火付け役に

はじめにコンテンツセブンの事業と強みを教えていただけますか。

コンテンツセブン社のエントランス
コンテンツセブン社のエントランス。
韓国ドラマ「トッケビ~君がくれた愛しい日々~」の公式キャラクターである「ボグルファミリー」がお出迎え。

成七龍:海外で制作されたドラマを仕入れて、日本語の字幕や吹替を作成して編集し、国内の放送局や配信プラットフォームに配給するのが主な事業です。ドラマのDVD販売やイベント企画、関連グッズの販売も手掛けています。これまでに仕入れた韓国ドラマは、歴史ものやホームドラマ、愛憎劇、ラブコメなど1,000タイトルくらいになります。最近は中国の時代劇やタイのBL(ボーイズラブ)ドラマの配給にも軸足を移し、台湾、フィリピン、ベトナム、トルコ、インドなどの良質で魅力的なアジアドラマの発掘にも取り組んでいます。約30名いる従業員の大半は女性です。

強みというかモットーとしては、良いコンテンツを発掘することにやりがいを感じて、どうやったら視聴者やファンに喜ばれるかを第一に考えて、たとえヒットを飛ばしても成功体験に引きずられずに初心に戻り、大手企業のようなバックがないのでいつ潰れるか分からないという不安を抱えているからこそ収支にこだわり、創業以来24年もの間生き延びることができた、アジアのテレビドラマを愛してやまない集団です。

何といっても、この仕事にやりがいや生きがいを感じて働く人材こそが、当社の強みと言えます。

会社は成社長が一人で始められたそうですね。

成七龍:設立は2000年で私が30歳のときでした。それまではフリーターをやっていて、自分は一体何をすべきかと悩んでいたときに友人が、「お前の国の韓国には面白いドラマがあるから見てみろよ」と、当時韓国で63%という高視聴率を獲得していた連続時代劇の『ホジュン』を紹介してくれたんです。その面白さにハマって、毎話手に汗を握りながら見るうちに、「日本で配給したらヒットするかも」と思い付いたことがこの仕事を始めたきっかけでした。

ドラマを制作した韓国テレビ局のMBCに行き、日本の放送局への販売許可を得て、NHKや民放各局に電話したのですが、どこも取り合ってくれませんでした。そりゃそうですよね、ドラマ配給の経歴の無い、私のような素人から突然「会ってください」「作品を買ってください」と言われても困ると思いますから。そんな中、唯一テレビ朝日のプロデューサーが「15分ぐらいだったら」と面会に応じてくれたので、企画書を持参すると、「時代劇は日本では難しい」と。「良い作品があったらまた持ってきて」と話を切り上げようとした言葉を私はチャンスだと捉えて、どんな作品だったら良いかを尋ねました。「トレンディな若者向け」と言われて仕入れたのが、『イヴのすべて』でした。この作品が2002年に韓国の連続ドラマとして初めて日本で全国放送され、その翌年にNHKで『冬のソナタ』が始まって韓流ブームに火がついた形です。

50歳を過ぎて感じたワンマン経営への不安
そのなかで紹介されたジャフコという存在

今に続く韓流ドラマ人気の火付け役であり、創業以来、業績も堅調と聞きました。
そうしたなか、なぜ資本提携を考えられたのでしょうか。

株式会社コンテンツセブン 代表取締役社長 成 七龍 氏
今回お話を伺った(株)コンテンツセブン代表取締役社長 成七龍氏

成七龍:会社の課題として常々感じていたのは、経営層の薄さでした。取締役は私一人で後継者もいない。50歳を過ぎたころから、私に何かあったら会社はどうなるんだろうという不安がありました。それは従業員も感じていたことだと思います。そんなときにストライクさんから、「資本提携に興味はありますか」というご連絡をいただきました。こんな中小企業と資本提携したい会社が本当にあるのかと疑心暗鬼でしたが、興味はありましたし、もしかすると課題が解決できるかもしれないと考えて話を進めることにして、ジャフコさんをご紹介いただきました。

ジャフコは国内大手の投資会社です。どう受け止めましたか。

成七龍:当初は投資会社って何だろうという感じでしたし、提携後にどこかに売られてしまうのではないかという不安もあったので、ストライクさんに、ジャフコさんの担当者と直接話をさせてほしいとお願いしました。お会いした水谷さんは、「一緒になってコンテンツセブンの成長を加速させましょう」と言ってくれて、そのために財務や人事に長けた人材を採用し、経営層を厚くしようと提案されました。これまでの資本提携の実績も伺い、何度かお話をするなかで、ジャフコさんが当社の成長を後押ししてくれる存在だと確信し、決断しました。

良質な作品の開拓力と緻密な収益計算が
未経験の業種への資本参加の決め手に

水谷さんはジャフコの事業投資部に所属されていますが、その業務内容と、コンテンツセブンのどこに魅力を感じたのかを教えてください。

ジャフコグループ株式会社 事業投資部 マネージング・ディレクター 水谷 太志 氏
ジャフコグループ株式会社 事業投資部 マネージング・ディレクター 水谷太志氏

水谷太志:ジャフコは1973年に設立し、日本最大の累計投資社数を誇るベンチャーキャピタルで、これまで国内外の4,000社以上に投資してきました。現在は国内から海外へ、ベンチャー投資からバイアウト投資へと、投資の幅を広げております。私が所属する事業投資部は、中小・中堅企業を対象にしたバイアウト投資で、自分たちも積極的に経営参画して投資先企業の成長を経営陣と共に目指していく部門になります。

事業投資部として、エンタメ領域は直近までなかなか投資が進んでいない領域でした。どうしてもコンテンツの当たり外れがあるので業績の浮き沈みが大きく、先が見通しにくいからです。ストライクさんからコンテンツセブンを紹介されて財務諸表を見たとき、エンタメ領域の事業を手掛ける会社とは思えない数字にまず驚きました。年によっての揺れが大きくない。急成長もないけれど、創業以来一度も赤字にならずに利益を出し続けていました。そこですぐに成さんにお会いさせていただきたいとお願いをしました。成さんは業績の変動が大きな業界における経営を深く理解し、事業を運営されていました。

当初、私から見たコンテンツセブンの強みは二つありました。一つは市場の開拓力です。韓国ドラマのコンテンツがメジャーになり仕入値が高騰するなかで無理な仕入れをせず、軸足を少しずつ中国やタイにも移して市場開拓とリスク分散を同時に行っています。一例ではありますが、タイBLという新たな領域を日本市場に根付かせることにも成功しています。もう一つは確実に粗利を生み出す緻密なシミュレーションと交渉実務です。1作品ごとにコンテンツの特性を勘案して、配信や放送配給、グッズなどの各要素でいくらずつ回収していくのか、どこで利益が出せるかを細かいシミュレーションに落とし込んでいます。それらの想定をベースに各部門が関係者との交渉を行い、自分たちの想定数値に近づけていっています。その積み重ねこそがコンテンツセブンの手堅い経営を実現させています。

2023年7月に資本提携されました。従業員からはどんな声が上がりましたか。

映像編集中の様子
資本提携にあたり、従業員からは「次は何をやるのかと、ワクワクし続けられる会社で働けて本当に良かったです」という声もあったという。

成七龍:15年ほど勤めている社員が、うちの会社は毎年びっくりするようなことを仕掛ける会社だと言っていました。中国やタイの作品の開拓といった実務の側面もそうだが、今回はジャフコさんと資本提携した。次は何をやるのかと、ワクワクし続けられる会社で働けて本当に良かったですと話してくれました。ジャフコさんが経営に入られたことを社員は歓迎しています。そうした環境を水谷さんが提携前につくってくれたことが大きかったと思います。

水谷さんはどんなことをされたのでしょうか。

水谷太志:資本提携前にコンテンツセブンの幹部社員全員と私、という質問会を開いていただきました。「ジャフコってどういう会社ですか」「これまでどんな仕事をしてきましたか」「コンテンツ業界、配給業界についてどのように見ていますか」「コンテンツセブンのどこが良いと思いましたか。課題は何だと思いますか」「コンテンツセブンは今後どうなるのですか」などといった気になること、不安に思っていることを全てぶつけてもらいました。経営者が資本提携に賛成であっても、主役はその会社の役職員全員です。社員に少しでも拒む気持ちがあればうまくいかないので、見定めてもらう場を設けたかったんです。忖度無しの率直な質問を受けながら、良い文化を持っている会社だと思いました。当事者意識が高いからこそ質問も出るわけですから。

成七龍:その会の後に部課長たちを集めて意見を聞くと、全員が資本提携に賛成でした。反対するかなと思っていた部長も「やるべきです」と。私よりも前向きになっていました。

経営層にハイレベルの人材を採用
社長が本業に注力できる体制に

資本提携後の変化や新たな取り組みを教えてください。

成七龍:二つあります。一つはこれまで叶わなかった高いレベルの人材採用です。財務を熟知し、M&Aの知見をもつ管理本部長が入り、人事責任者の採用も進めています。念願だった経営層を厚くすることで、私が管理業務から離れてビジネスを伸ばすことに集中できる体制になりつつあります。また、今年4月には創業以来初の新卒社員も入社します。

もう一つの変化は月1回の取締役会です。これまで取締役は私だけだったので定期開催していませんでした。今は水谷さんも加わって、経営や業務についての分析や議論ができるようになりました。投資会社の視点から、実績の低い事業を整理したり、人員をリストラしたりといった意見が出るだろうと思ったのですが、むしろ逆で、その事業をどのようにしたら伸ばせるのか、そのためには何が必要か、この社員を成長させるにはどの部署が良いかなど、プラスに変えることを一緒に考えてサポートしてくれます。そこが本当に有難いと感じる変化です。

水谷太志:新たな取り組みでいうと、成長を加速させるために同業他社のM&Aや新規事業の検討も始めました。ジャフコとしての強みが活かせる分野の一つと思います。

コンテンツセブンを今後どんな会社にしたいですか。

成七龍:設立当初より、千年続く会社に育てることを目標にしています。1人の社長が10年担ったら100人の社長が必要です。創業者がずっと社長を続けることは不可能です。私たちは文化と文化の懸け橋となって、良質なコンテンツを多くの皆様にご提供することをミッションとしています。そのミッションをポッシブルにできる社員と経営者を輩出し続ければ千年企業になれるはずです。

今回の資本提携を契機に、海外ドラマを扱うコンテンツビジネスのハブ基地のような存在になりたいですね。コンテンツセブンを通すと、日本で作品が支持され、評価が高まるよねと、ファンである視聴者や業界内の関係各社に思ってもらえるような会社です。それが結果的に売上や利益を伸ばすことにつながるものと考えています。

ストライクの担当者のサービスについてはいかがでしたか。

株式会社コンテンツセブン 代表取締役社長 成 七龍 氏、ジャフコグループ株式会社 事業投資部 マネージング・ディレクター 水谷 太志 氏、ストライク長谷川
ストライクのオフィスエントランスにて。
(写真真ん中が担当の長谷川)

成七龍:金田さん、長谷川さんはとても真面目で、仕事が丁寧で、誠心誠意取り組んでいただきました。私からの質問や相談は常に真摯に回答してくれました。私の不安に対して即座に対応し、サポートしてくれたので理想的な担当者でした。

水谷太志:真っ先に感謝したいのは、コンテンツセブンという会社を知る機会をいただけたことです。そして交渉段階では、双方の会社の主張を聞いて、その言葉をうまく相手側に伝え、互いが納得できる形に取りまとめていただきました。こうして一緒になれて、新しい展開を目指せているのは間違いなくストライクさんのおかげです。

経験者として、資本提携を考える経営者にメッセージをお願いします。

成七龍:後継者問題などの悩みを一人で抱えている中小企業の経営者は多いと思います。その解決策の一つとして資本提携もあるわけですが、その出会いには仲介会社の役割が大きいと感じました。ストライクの長谷川さんと会う前にも数社が営業に来られましたが、相談しても、「希望の会社を探してみます」で終わるか、あるいは興味のない会社さんを紹介してくれるだけで関係が続きませんでした。ストライクさんはいろいろな引き出しからの提案をいただき、面白いなと感じて専属契約を結びました。仲介会社と担当者の見極めが大事だと思います。

当初、資本提携に疑心暗鬼でしたが、今ではこんなにメリットが大きいのかと驚いています。これまで1人で抱えていた課題を一緒に解決していけるパートナーと巡り会えたのですから、お世辞抜きでストライクさんには感謝の言葉しかありません。

ジャフコでは今後どのような会社と資本提携したいですか。

水谷太志:同じ資本提携でも、経営者が事業承継して引退するケースだけではなく、私たちとの提携後も経営者が継続して経営を担われるケースも増えてきています。いずれのケースにしても、私たちは主役である役職員全員が企業活動に集中できる環境を整え、新たな挑戦を通じて次の成長を共に目指したいと考えています。私たちは今後も、企業としての新しいステージを目指したいと考えられている経営者の方との接点を持っていきたいです。私たち投資会社の強みや特長を上手く活用して、その先の企業発展に繋げていただきたいと考えておりますし、同時にそのように思っていただけるよう広く頼られる存在になっていきたいとも考えています。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(長谷川 奨・成長戦略部 シニアアドバイザー談)

ストライク長谷川 奨

コンテンツセブン様は日本国内での韓流ドラマの人気の火付け役であり、業界のパイオニアとなる企業です。最近では韓流ドラマに留まらず、中国・タイ等からも良質な作品を仕入れ、毎年のように大ヒットを続けられております。また、創業から1度も赤字を出すことなく、継続して高い利益を出されている点も特徴的です。今回、譲受企業としてご紹介をさせていただいたのは、ジャフコグループ様になります。コンテンツセブン様が抱える課題の1つであった属人性の解消と永続的発展に最も適した企業でした。ジャフコグループ様からコンテンツセブン様の社風や強みについて最大限に尊重していただいているため、資本提携後も両社は大変良好な関係で事業運営をされております。コンテンツセブン様は社長含め成長意欲が強い社員様が多いので、今回の資本提携を経て、更に飛躍されることを楽しみにしております。

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