INTERVIEW

東北地方の同業2社の良縁
製品の拡充、技術交流、顧客共有など
多彩なシナジーが期待できる

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株式会社三浦エンジニアリング 取締役社長 増田 敏 氏、株式会社翔樹 代表取締役会長 門田 周 氏

株式会社三浦エンジニアリング 顧問(元代表取締役) 後藤 修平 氏
株式会社成栄 代表取締役社長
株式会社三浦エンジニアリング 代表取締役社長 木村 忍 氏

1979年の創業以来、地元・山形を中心として『技術と信頼』を社是に、各種板金加工を手掛けてきた株式会社三浦エンジニアリングは2023年7月、福島県で同じく板金加工を手掛ける株式会社成栄とのM&Aを行った。「PMIも順調」と話す両社にM&Aの背景やきっかけ、同業がタッグを組むメリットなどについて伺った。

株式会社三浦エンジニアリング × 株式会社成栄
ご成約インタビュー動画

同じ板金加工でも得意分野が異なる
協業により製品力や技術力、顧客力の強化が可能に

まず初めに2社それぞれの事業内容や特徴を教えてください。

株式会社三浦エンジニアリング 顧問(元代表取締役)後藤 修平氏
株式会社三浦エンジニアリング 顧問(元代表取締役)後藤 修平氏

後藤:三浦エンジニアリングは、小型~中型部品をメインに扱う板金加工の会社です。小ロット、短納期に対応できることが強みで、試作品なども得意としています。創業は1979年、44年の歴史と実績があり、長いお付き合いのお客様も多いです。

木村:成栄はエネルギー関連部品や航空・宇宙開発関連部品、汎用機械器具などの加工・製造を行っています。部品単体から機械設備一式まで受注可能で、工場には30m×60m×高さ22mのクレーンなど最新機器があり、大型設備も製作できます。父が1992年に創業した会社で、私は二代目です。

どちらも金属加工業ですが、得意分野が異なるのですね。

株式会社成栄 代表取締役社長 木村 忍氏
株式会社成栄 代表取締役社長 木村 忍氏

木村:簡単に言えば、成栄は大きく重厚なもの、三浦エンジニアリングが軽く薄いものが得意です。ですので、同業ではありますが、有している設備や人材、技術は異なります。

今回のM&Aのきっかけを教えてください。

三浦エンジニアリング社の工場内部
三浦エンジニアリング社の工場内部。
創業44年の歴史に裏付けられた実績と技術力を持つ。

後藤:実は三浦エンジニアリングにとって、今回は二度目のM&Aです。創業者が高齢になり、2018年に人材派遣会社である株式会社マイセルフの傘下に入りました。私は2021年、マイセルフから社長として着任しました。マイセルフには三浦エンジニアリングの工場や技術力を生かし派遣スタッフに付加価値をつけようという展望があったのですが、製造業を成長させるリソース、ノウハウを持っていないこともあり、なかなか思うようにいかず……。三浦エンジニアリングの発展のためには、製造業のプロに経営を任せたほういいという結論に至りました。

木村:私はストライクの清野くんと昔からの知り合いで、清野くんから「同じ金属加工業で素晴らしい会社があるから検討してみないか」と紹介されました。三浦エンジニアリングは創業44年の実績と技術力があり、財務内容もよく、互いの得意分野が異なるため協業できれば製品の幅が広がります。M&Aは未経験でしたが、会社の次のステージに向け新しいことに挑戦したいと考えていたところでもあり、具体的に話を進めてみようと決めました。

決め手になったことを教えてください。

株式会社三浦エンジニアリング 取締役社長 増田 敏 氏、株式会社翔樹 代表取締役会長 門田 周 氏
男女問わず活躍しており、活気のある現場体制が決め手の一つになった。

後藤:成栄さんの技術力、営業力です。同じ東北地方なのもよかったですね。顧客共有、技術交流などのシナジーを考えると近いところのほうがいいと思いました。

木村:私は実際に仕事を依頼し、工場にも足を運んで、対応や品質、環境を見させていただきました。まず魅かれたのが従業員の若さ、男女問わず活躍できる現場体制です。黙々と作業する中でも活気があって、好印象でした。

後藤:成栄さんも従業員が若いですよね。お互い20~30代が活躍しているので、うまくマッチしそうだと思いました。

木村:譲受後のことを考えると、一度M&Aを経験していること、社長の後藤さんがトップセールスではないこともポイントでした。製造業の中小企業は、創業者社長がトップセールスで「オレについていこい」的な体制のことがよくありますが、それだとM&A後に社長が交代したときに弊害が出ますよね。その段階を脱していたことは大きかったです。

後藤:決め手といえば、やはり木村さんの人柄です。この道のプロで、事業や従業員の成長をよく考えておられる。この方になら安心してお任せできると思いました。

木村:でも初回のトップ面談は、後藤さんの都合で急にオンラインになりましたよね。私は絶対に成栄を選んでもらいたいと思っていたので、かなり緊張していました。なぜか後藤さんの顔が見切れているし、オンラインの面談で本当に大丈夫なのかなと……。

後藤:自分の部屋にいたので、余計なものが映りこまないようにと思ったら顔が見切れてしまって(笑)。私はオンラインになって、かえってリラックスできたかもしれません。和気あいあいとお話しできたと思います。

木村:基本合意が終わってから直接お会いしましたが、そのときにはもうすっかり打ち解けていましたね。

ものづくりのスタンスは共通
従業員の混乱も不安もなく
引き継ぎはスムーズに進んだ

成約に至るまで大変だったことはありますか?

後藤:秘密裏に進めることです。私は他社から来たこともあって、提出すべき資料をすべて社員に頼んで出してもらわなければならなかったのですが、M&Aのことは話せない。かなり気を遣いました。成栄さんとの間では、ストライクのサポートもあり、それほど大変なことはなかった印象です。清野さんが良い接着剤になってくれました。好きになった人に思いが通じて、そのまま結婚できたような感じです。

木村:本当にスムーズでしたよね。M&Aには今後も取り組むつもりですが、今回がうまくいきすぎたので、次が怖いぐらいです。ただ、“両思い”になっても成約までにはいろいろなプロセスがあって、それなりに時間を要するものだなと思いました。「M&Aをしよう!」と思ってもすぐにお相手が見つかるわけではないし、見つかったとしてもすぐに成約できるわけではない。M&A戦略は年単位で立てる必要があるというのは、今回の学びでした。

従業員の方にはいつどのように発表されましたか?

後藤:成約後の8月の第1月曜日、朝礼で「今日から社長が代わります! 新しい社長の木村さんです!」と発表しました。でも、みんなリアクションが薄くて……。

木村:月曜の朝から伝えたのは失敗だったかも(笑)。ピンときていない様子でしたね。

後藤:でも、その後も特に何か聞かれたりすることはなく、すんなり受け入れられた感じでした。M&Aの経験値がありますし、同業のプロが社長になるので不安はなかったのでしょう。M&A後の流れとしては理想的ではないでしょうか。

木村:製造業同士のM&Aのメリットですよね。ものづくりのスタンスは基本的に同じなので、経営の引き継ぎが非常にスムーズで、従業員への負担も最小限で済みました。

PMIは順調
M&A後まもなく技術交流も開始
社長候補も育成中

M&A後の体制を教えてください。

後藤:三浦エンジニアリングの社長は木村さん、私は顧問になりました。私はいずれマイセルフに戻る予定です。

木村:三浦エンジニアリングの執行役員の一人を社長候補として、今後、育成する方針です。私は社長が減る、つまり雇用を生み出せる能力がある人材が減ることは会社にとっても、社会全体で考えた場合もマイナスだと考えています。社員から社長を育成して盛り立てていくほうが、会社の雰囲気もよくなるのではないでしょうか。将来の組織構築としても、M&Aによって2社が一つになるというより、それぞれが独立した会社として助け合いながら成長していけるようにしたいです。1社ではできなかった仕事も、2社が力を合わせれば迅速・丁寧に対応できます。お客様のニーズに幅広く応えることで、両社の売上向上を図りたいです。

すでに協業が始まっているそうですね。

株式会社三浦エンジニアリング 取締役社長 増田 敏 氏、株式会社翔樹 代表取締役会長 門田 周 氏、ストライク前川
技術交流や仕入れ先の共有など、M&A後の協業も順調とのこと。
(写真真ん中が担当者の清野)

木村:技術交流をスタートしました。成栄に三浦エンジニアリングの社員が出向き、厚物の溶接や機械加工の技術向上に取り組んでいるところです。顧客や仕入先の共有も進めます。仕入先については、地域性や物流の問題で、同じ材料でも日本海側から仕入れるのと太平洋側から仕入れるので値段が違ったりします。メリットのある仕入れの仕組みをつくれるように勉強しているところです。

後藤:両社ともベトナム人の技能実習生がいるので、先日、木村さんと一緒にベトナムへ視察に行きました。PMIは順調です。従業員も新体制の下、やる気を持って働いてくれています。顧問の立場から見て、すごくうまくいっている、今回のM&Aは成功だという実感がありますね。

最後にM&Aを考えている経営者の方にアドバイスをお願いします。

後藤:M&Aをするにあたって、迷いや不安があるのは当たり前です。後悔のないようにじっくり考えてください。譲渡するのか買収するのか、またその理由によってもアドバイスは変わってきますが、やはり一番大切なのは、従業員のためにも自分が育ててきた会社のコンセプトを見つめ直し、従業員と会社の将来をよく考えることだと思います。

木村:迷いや不安があったかと聞かれると、私は成栄単独の未来と三浦エンジニアリング単独の未来、2社が協力し合う未来を描いて、2社が協力する未来が一番楽しいと思ったとき、迷いは消えました。不安は経営者なら誰しも常にあるものなので……。M&Aをしてもしなくても不安はあるし、譲受をして会社が2つになったから不安が倍増するわけでもない。不安はM&Aの判断材料にはなりませんでした。

後藤:いずれにしてもプロに相談するのはオススメです。M&Aの可能性があるなら、まずストライクにお電話を(笑)。

木村:そうですね(笑)。ストライクのようなM&A専門の会社には情報もノウハウもありますので、一度相談してみるのが一番いいと思います。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(清野 遼太・法人戦略部 アドバイザー談)

ストライク清野

三浦エンジニアリング様にとって今回は二度目のM&Aということで、従業員の皆様がそれをどのように捉えるか、場合によっては離職してしまうのではないかと、正直不安な気持ちがありました。しかし、従業員様のことを熟知し、かつ従業員様からとても信頼されていた後藤元社長のご協力のおかげで、大きな動揺もなくスムーズなM&Aを実現することができました。
お相手となった成栄様の木村社長は、経営手腕はもちろんのこと、現場を長く経験されたご経歴から技術面における知識も豊富であり、提案後すぐに三浦エンジニアリング様の強みと伸びしろをご理解いただきました。また、トップ面談やキーマン面談の際にM&A後のビジョンについて明確にご提示いただいたことも今回のM&Aを進めるうえで重要なポイントであったと考えております。
山形出身の私としては微力ながら地元への貢献ができたと自負しておりますが、これもひとえに後藤元社長、木村社長のご協力があったからです。この場をお借りして御礼申し上げます。
今後も両社のさらなる発展を祈念しております。

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