INTERVIEW

後継者育成見据え、M&A選択
北関東の縁、大きなシナジー

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株式会社田中電気研究所 常務取締役 武田 景子 氏

株式会社成電気工業 代表取締役社長 瀧澤 啓 氏

株式会社田中電気研究所 取締役社長 田中 敏文 氏

株式会社成電工業(群馬県高崎市長)は2023年8月、株式会社田中電気研究所(東京都世田谷区)の株式の8割を取得し、子会社化した。田中社長は続投、成電工業の瀧澤社長が田中電気の代表権のある会長を兼務し、グループとして一体的な成長を目指す。成電工業はどのようなシナジーを期待したのか、また田中電気は後継者がいる中、なぜM&Aを決めたのか、双方に話を伺った。

経営者教育を見据え、M&A決断
後継専務との信頼関係が決め手

今回のM&Aのきっかけ、経緯を教えて下さい。

瀧澤啓社長
成電工業の瀧澤啓(けい)社長
田中電気研究所代表取締役会長を兼務する

瀧澤:20年ほど前、創業間もないころの荒井社長と親交がありました。M&Aが成長戦略として有効なのは知っていましたが、なかなかいいご縁がありませんでした。本業も軌道に乗ってきて、M&Aを検討し始めた約1年前に紹介されたのが田中電気研究所でした。

田中:自分の年齢を考えると、あと数年で事業譲渡しなければと思っていました。しかし、息子(田中紀平専務)はまだ会社に入って数年。経営者としての教育が進んでいませんでした。しっかりした経営者に次期社長として育ててほしいと考えていたところ、瀧澤さんを紹介されました。

お互いの印象はどうでしたか。

田中敏文社長
田中電気研究所の田中敏文(としぶみ)社長

瀧澤:田中さんとは自社の抱える課題について、良い面も悪い面も含め、率直に話ができました。隠し事や誇張もなく、きちんと課題を認識いただいており安心できました。

田中:落ち着いた話し方、笑顔がとても穏やかという印象。また植物工場を見学した際、従業員からとても慕われている姿に尊敬できる方だと感じました。

パートナーを選んだ理由は。

瀧澤:条件は三つありました。
一つ目は、本業に近いところで得意分野が少しずれている点です。成電工業は制御盤や動力盤、田中電気は計測機器と、お互いに得意分野が違います。外から買っていたものをグループ内で調達でき、営業面、生産面、開発面でのシナジーは大きいと思いました。
二つ目は、下請けだけでなく自社製品を持っているところです。利幅は大きいものの開発コストなどリスクを含む自社製品と、収益の土台となるOEM(相手先ブランド)生産のバランスが大事だと考えており、田中電気は理想的な相手でした。
三つ目は、歴史のある会社。歴史が長いということは、いい技術を持ち時代の変化にも必要とされてきたという証です。これらに合致していたので、是非とも一緒にやっていきたいと考えました。

田中:親子の事業承継には難しい面もあります。そんな中、専務は瀧澤さんをとても尊敬しており、私抜きの二人だけで話し合う機会もあり、意気投合している様子でした。瀧澤さんは、私たち親子の真ん中の年齢。お互いに本音で話しやすく、そこがよかったです。

北関東の縁をつなぎ、新たな商機を創出

社員にM&Aを伝えた時のエピソードを教えてください。

田中:東京にいる社員を含め、全社員を那須烏山の工場に集めて話しをしました。「M&A」とか「企業買収」というと身構えてしまうので、「成電工業グループに入る」と伝えました。続いて瀧澤社長からも説明いただきました。会社は残るし、やることも変わらないと念押ししたので、社員から不満は出ませんでした。

群馬と栃木では距離がありますね。

株式会社田中電気研究所
1949年に設立。排煙中の煤じんを監視するダスト濃度計、プリント基板に強みを持つ。ダスト濃度計の性能評価方法と製品規格で日本工業規格(JIS)の原案を作成し、制定につなげるなどの実績を持つ。

瀧澤:高崎と那須烏山は高速道路で2時間。むしろ「近い」という感覚です。週1回は烏山工場を訪れ、社員全員と面談を進めています。田中さんとは、北関東に生産拠点をもつ会社同士、一緒に商機を増やそうと話しています。

田中:登記上の本社は東京ですが、生産拠点は栃木。北関東の会社としての仲間意識があります。那須烏山は山間にありますが、外部との交流が増え、社員の視野も広がっていくだろうと思います。

今後の取り組みは。

瀧澤:グループの中堅社員を選抜して、人事評価制度などの検討を進めたいです。自主性を育てるため、重要な課題は皆の意見を集めて進めていますが、田中電気のメンバーも入れて刺激を加えていきたいです。

田中:社長として会社全体に目を配りつつ、今まで以上に技術者としての仕事に取り組みます。自社の主力であるダスト濃度計向けの認証システムを整備し、業界団体を立ち上げて製品の普及に努めたいと考えています。

堅実で安心
ストライクの仲介

ストライクの印象はいかがでしたか。

田中電気研究所中敏文社長、田中紀平専務、成電工業瀧澤啓社長、ストライク大西
(右から)田中電気研究所田中敏文社長、同田中紀平専務、成電工業瀧澤啓社長、ストライク大西皓平

瀧澤:荒井社長との親交もあり、様々なM&A仲介会社がある中でも、堅実で手堅い社風に親しみを持っていました。M&Aの提案を金融機関などから週に何件も持ちこまれましたが、ストライクが一番と考えていました。M&Aを手がけるのは初めてでしたが、担当の大西さんから「次はこうです、次のステップは…」と丁寧に説明されたため安心して進められました。

田中:大西さんは、大事なことは時間帯を問わず連絡を入れてくれました。そうした誠実な態度で話し合いの土台を作ってもらえました。

M&Aを検討される方へのメッセージは。

瀧澤:M&Aは社長同士が「よかった」と思っているだけではだめです。ステークホルダー、つまりお客様、社員が「この会社と一緒になってよかった」という形を作らないといけない。大変なのはこれからです。お互いの会社のいいところを持ち寄り「1+1=2」以上になるよう、M&Aを前向きにとらえる環境づくりが大事になると思います。

M&Aアドバイザーより一言(大西 皓平・四国営業部アドバイザー談)

ストライク大西

田中電気研究所様は多くの特許を取り、高い技術力・開発力を持つ会社です。経営環境が目まぐるしく変わる中、M&Aを「成長戦略」としてとらえていただき、業績拡大を目指せるお相手として成電工業様をご紹介させていただきました。
M&Aというと、後継者不在の企業が行うイメージが強いかもしれません。しかし今回は社内に後継者がおられ、その田中専務も協議に関わりながら、成約に至りました。両社の持つ技術力や開発力を持ち寄り、さらに発展されますことを心より祈念いたします。

本日はありがとうございました。

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