背景と現状

背景と現状

深刻な“隠れ倒産”の問題~黒字で廃業のナゼ?

後継者難、人材不足に起因する
「隠れ倒産」が急増!?

資産が負債を上回る資産超過の状態で、経営の余力を残しているにもかかわらず、自主的に会社を休業・廃業したり、解散したりすることを「隠れ倒産」といいます。統計上の「倒産」の数字には含まれませんが、企業活動を継続できないという意味では倒産と同じなので、「隠れ倒産」と呼ばれています。
そして最近、人材不足や後継者不在による「隠れ倒産」が急増していることが懸念されています。

「隠れ倒産」といわれるぐらいですから、その数字や個々の事情を正確に把握することはできませんが、例えば帝国データバンク「全国休廃業・解散動向調査(2014年度)」によると、2014年度の休廃業・解散件数は24,153件。減少傾向にはあるものの、同期間の「倒産」の約2.7倍に上り、経営者の高齢化や後継者難を背景とした休廃業・解散が目立ってきているとされています。

休廃業・解散と倒産の件数推移
出典:帝国データバンク 2015/4/30『全国「休廃業・解散」動向調査(2014年度)』

「後継者不在=廃業」ではない
会社存続の道を探るべき

「後継者が見つからない以上、廃業するしかない」と考える経営者の方は多いですが、それは間違いだと、あえて断言させていただきたいと思います。
私の専門であるM&Aについていえば、破産せず廃業できるような会社であればお相手(譲り受け企業)が見つかる可能性が高いですし、直近の業績が赤字であっても技術力などが評価されて、お相手(譲り受け企業)が見つかることもあります。

実際のところ、黒字の企業であっても清算するのは大変です。在庫は叩き売り価格になり、生産設備は無価値になるどころか、処分費用がかかることもめずらしくありません。完全に廃業するまでの操業赤字に耐え、退職金などを支払い……。
「会社をきれいにたたむ」とよくいわれますが、きれいにたたむのは容易ではないのです。

隠れ倒産はアベノミクスの弊害だなどという議論も見受けられますが、日本経済・社会という大きな枠組みで後継者問題をとらえたとき、廃業なのか解散なのか隠れ倒産なのか呼び方はともかく、「会社を閉める」という選択は何としても避けなければなりません。守られるべき雇用、技術・ノウハウをが失われてしまうからです。
特に後継者不在による「隠れ倒産」のように、経営の余力を残している状態ならば、何としても会社存続の道を探るべきだと思います。