M&Aインタビュー

インタビューイメージ 株式会社ファイブテイルズ 創業 井上(五位尾) 麻美 氏 井上 勝雄 氏 ご夫妻

株式会社ファイブテイルズ 創業
井上(五位尾) 麻美 氏 井上 勝雄 氏 ご夫妻

日本であまり知られていなかったワックス脱毛を旅先で見つけて日本へ持ち帰り、2014年に株式会社ファイブテイルズを立ち上げ、都内にワックス脱毛専門サロン「Ibiza Wax(イビサワックス)」を開業した井上ご夫妻。サロンの利用者の声から市場に顕在化していなかったデリケートゾーンの悩みを発見し、オリジナルのケア美容品「イビサクリーム」などを開発、サロンと商品開発・販売の2軸で事業を展開・発展させてきた。2020年11月、夫婦で築き上げてきた会社を、化粧品や健康食品の開発・販売を手掛ける老舗の株式会社かがやくコスメへ譲渡した背景と理由についてお話を伺った。

オリジナルの美白クリームが大ヒットし
想定外のスピードで急成長を遂げる

ーー創業の経緯をお聞かせください。

麻美氏 :ファイブテイルズは、私が28歳だった2014年に、夫の勝雄とともに創業しました。私はもともとアパレル関係の会社に勤めた後、海外でバックパッカー生活を送っていました。夫も日用品の会社に勤めた後に海外で旅をしており、南米のユースホステルで出会って、帰国後に結婚しました。

勝雄氏 :二人が約30ヵ国を渡り歩いて出会ったのが、各地で日常的に行われていた「ワックス脱毛」です。海外では脱毛サロンが美容室やネイルサロンなどに併設されており、誰でも気軽に受けられるサービスとして提供されていました。当時、日本でもワックス脱毛は少しずつ流行り始めていましたが、まだ認知度は高くはありませんでした。

麻美氏 :世界中で見てきた脱毛手法やその関連商品を日本で広めていきたいと思い、ワックス脱毛専門サロン「Ibiza Wax(イビサワックス)」を運営するファイブテイルズを創業いたしました。

ーー創業後、どのように事業を展開されてきたのでしょうか。

麻美氏:1店舗目のサロンは、六本木に開業しました。最初に苦労したのは集客です。後からわかったのですが、六本木は、人は多いのに非常に集客がしづらい、お店を開くには難しい場所だったのです。

そこで考えたのが「ブラジリアンワックス脱毛の体験キャンペーン」でした。日本ではあまり知られていなかったワックス脱毛を、より多くの方に知ってもらいたい。そこで、赤字を覚悟で破格の体験キャンペーンを行い、その良さを感じていただけるようにしたのです。体験にいらしたお客様にはアンケートにご協力いただき、内容を「サロンの体験談」としてホームページに掲載し、アピールしました。その結果、ホームページを見た多くのお客様にサロンに来ていただけるようになりました。

アンケートに記載されているお客様のご意見から、新しい発見もありました。それは、脱毛したからこそ気づく、「肌の黒ずみ」についての悩みでした。

勝雄氏 :そこで、私たちは2015年にデリケートゾーンケアに特化した美白クリーム「イビサクリーム」を開発しました。インターネットで発売したところ、とても大きな反響が寄せられました。サロンでのアンケートにより、これまで誰も気づかなかったニーズを捉えたことで、2ヵ月で初回生産分が売り切れるほどの人気商品となったのです。

想像以上の売れ行きで、供給や発送の手配はとても大変になりました。人手が足りず、従業員が帰った後、私たち二人で深夜まで、手作業で商品の梱包や発送を行いました。非常に忙しい時期に妻の妊娠・出産が重なり、陣痛中も電話応対をするほど、休みなく仕事をし続ける状況でした。

麻美氏 : ピンチをチャンスに変え、目の前の仕事を一生懸命こなしていくうちに、会社は想定を超えるスピードで飛躍的に成長していきました。脱毛サロンはフランチャイズも含めて9店舗に増えました。商品の販売も順調に伸び、イビサクリームを中心に石けんや美容液なども開発、商品構成も増やしました。今ではシリーズ累計83万本(2021年2月末時点)を超える大ヒット商品となっています。

会社のさらなる発展のため、
商品開発力・設備のある会社への譲渡を検討

ーー成長を続ける会社の譲渡を決断したきっかけは?

麻美氏 : 会社が成長を続けることをうれしいと思う半面、経営から離れることも考えるようになりました。その理由の一つは家族です。経営者になると、1年365日、会社のことを優先することになります。

実際、会社の成長とともに仕事はどんどん忙しくなりました。優秀な社員の増員も必要になり、そのためには人材に見合う労務規定や福利厚生を考えなければいけません。また、脱毛サロンの店舗数が増えたことで、経営者としての業務量が増えていきました。小さな子どもを抱えながら夫婦で会社経営をしている私たちでは、飛躍的に成長していく会社の足かせになってしまうのではないか。そう考えるようになったのです。

勝雄氏 : もう一つの理由は、会社のさらなる成長です。私たちはある程度の規模まで会社を成長させることができましたが、これからもっと会社を伸ばし、社員たちに安定して働いてもらうためには、人材育成や商品開発への投資が必要です。そうした中、私たちよりも適切なマネージメントをできる人、さらには職場環境の整備された規模の大きな会社に経営を任せたほうがよいのではないか。そう判断し、会社の譲渡を検討するようになりました。

実際に譲渡に向けて動き始めたきっかけは、2018年に参加したM&Aに関するストライクのセミナーです。ストライクのような大手M&A仲介会社は、大きな会社が取引先だというイメージが強く、当時の私たちのような売上高10億円以下の会社は対象ではないと思っていました。しかし、セミナーでストライクのお話を聞いて、私たちにもチャンスがあると思い、買い手企業の探索を依頼することにしたのです。

社員を大切にしてくれること、
社員が安心して働ける・成長できる
仕組みがあることが決断の決め手に

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麻美氏 : M&Aを進めるために、ストライクの永岡さんにいろいろな相談をしました。当初、私たちは好調だったネット通販事業のみの売却を考えていました。ところが、永岡さんから「御社の商品力や企画力の強みは、脱毛サロンの現場でお客様の生の声が聞けて、商品のトライアルもできるからこそ。ネット通販とサロン経営は一体で考えたほうがよい」というアドバイスをいただき、脱毛サロンも一緒に売却することを決断しました。

確かにその通りで、永岡さんは私たち以上に、私たちの事業を理解してくれていたと思います。おかげで、私たちの要望により近い条件での譲渡をスムーズに進めることができました。

勝雄氏 : 会社の譲渡を急いではいませんでしたが、紹介された数社の中から良い譲渡先に出会うことができ、決断に至りました。お相手は、投資ファンドであるニューホライズンキャピタル傘下の「かがやくコスメ」様です。同社は、生協と郵便局を通じて商品販売を行っている老舗。豊富な商品とその商品開発が行える人材と設備が整っている規模の大きい会社でした。

ただ同社にも課題はあり、従来の販売チャネルでは少なかった若い顧客層と、若年層向けの商品および企画力、ネット販売のルートの確立とのことでした。今回の譲渡を通じて、私たちが培ってきた商品や企画力、ネット通販の仕組みなどが同社のお役に立てることを願っております。

一方で、ファイブテイルズとしては、社員が安心して働ける環境と成長できる仕組み、インターネット以外の販売チャネルや、安定的に商品開発を行える組織が今後は必要だと思っていました。かがやくコスメ様がファイブテイルズのブランドや社員を大事に思ってくださることは、譲渡する前から強く感じました。また、商品開発力のあるスタッフの方々と一緒に仕事をすることで、ファイブテイルズと社員の将来の不安がなくなるとも思いました。

お互いにないものを補完し合えることに加え、互いの相性も非常に良いと感じたため、最終的に譲渡を決断しました。

ーーM&Aを考えている方へのメッセージがあれば、お聞かせください。

麻美氏 : 会社を譲渡するきっかけは、人それぞれだと思います。外部の方に自分の会社の価値を評価してもらうかどうか、そのタイミングもまた人それぞれなのかもしれません。

私たちは今回のM&Aを通して、自分たちの会社を外部の方に評価してもらえる、言わば会社の“健康診断”を受ける貴重な機会を得ることができました。正しく会社の価値を評価してもらい、M&Aアドバイザーに適切なアドバイスをしてもらい、良い譲渡先に出会いました。想定していなかった新型コロナウイルスの感染拡大の影響もありますが、これからもさまざまなことにチャレンジして、新しい生活を送っていければと思っています。