1954年の創業以来、モリブデンなど合金鉄事業を基盤に、精密鋳造、化学品、環境関連と多角的な経営で成長を続けてきた妙中鉱業株式会社。70年以上の歴史を持つ同社が、次世代の事業の柱を構築すべく、M&A仲介大手のストライクが提供するコンサルティングサービスを選択した。M&Aを急ぐのではなく、まずは自社の強みを深く理解し、既存事業とのシナジーを最大化する戦略策定から着手。なぜ彼らはM&A仲介会社に戦略コンサルティングを依頼したのか。その背景にある課題意識と、プロジェクトを通じて得られた成果、そして未来への展望について、プロジェクトを牽引する新庄達也氏と比佐京太郎氏に話を伺った。
4つの事業を柱に、次の成長ステージへ
まずは、貴社の事業概要とこれまでの歩みについてお聞かせください。
新庄 達也 取締役 経営企画室長(以下、新庄):妙中鉱業は、創業から70年以上の歴史を持つ会社で、現在は4つの事業を柱としています。 一つ目は、当社の祖業であり、歴史が最も古い合金鉄事業です。これは、鉄鋼材料などに使われる金属素材を製造しています。二つ目は、精密鋳造事業。文字通り、鋳物製品を手掛けています。三つ目は化学品事業で、主に医薬品の原料などを製造しています。そして四つ目が、茨城県鹿嶋市にある日本製鉄様の事業所内で、製鉄プロセスで発生する副産物の処理などを行う環境関連事業です。こちらは「ものづくり」というよりは、役務の提供が主な事業となります。
この四つの事業は、それぞれが独立して事業運営を行っており、多角経営によって安定した基盤を築いてきました。
今回、ストライクのコンサルティングサービスを導入されるに至った経緯や背景についてお聞かせください。
新庄:当社は長い歴史を誇りますが、将来を見据えたとき、次の世代に向けた新たな事業戦略を策定する必要があると考えていました。その成長戦略の一つの選択肢として、M&Aという手法も視野に入れて情報収集を開始したのが始まりです。
その過程で、ストライクさんだけでなく、お付き合いのある金融機関などからも様々なM&A案件をご紹介いただく機会がありました。しかし、正直なところ、どの案件を見ても我々の中からでは「決め手」が見つからない。自社にとってどのような価値があるのか、どう判断すれば良いのか分からない、という状況が続いていました。
そんな中、ストライクさんから事業成長戦略に関するご提案をいただいたのです。M&Aありきで話を進めるのではなく、まずは我々の事業とのシナジーを最優先に考えた場合、どのような可能性が見えるのか。専門家の視点から客観的に分析・整理していただけるのではないかと考え、コンサルティングをお願いすることにしました。
M&A仲介会社へのコンサル依頼。その決め手は「人間力」と「解像度の高さ」
M&A仲介会社であるストライクに、戦略コンサルティングを依頼することに、社内での葛藤や他の選択肢との比較はありましたか。
新庄:他のコンサルティング会社と直接的に比較検討することはしませんでした。もちろん、市場の競争力評価など、特定の情報を得るために別の調査会社を利用することはあります。しかし、我々が求めていたのは、断片的な情報ではなく、それらをどう組み合わせ、事業戦略として昇華させていくかという視点でした。
ストライクさんにご相談したところ、新規事業の検討からM&Aによる実行まで、ある意味「一気通貫」で支援していただけるのではないか、という期待感がありました。M&A仲介を専門とされているからこそ、最終的な出口戦略まで見据えた上で、現実的な戦略を描いていただけると感じたのです。
比佐 京太郎 経営企画室課長(以下、比佐):我々が抱えていた課題は、情報が多すぎて、戦略の方向性が定まらない「モヤモヤした状態」だったと言えます。その漠然とした思いや課題をストライクさんにお話ししたところ、議論を重ねる中で「では、このように進めていきましょう」と、非常に解像度高く道筋を整理し、提示してくれました。我々が考えていたこと、やりたかったことが明確に言語化され、その合致度が高かったことが、最終的な決め手になったと感じています。
新庄:比佐が言う通りですね。コストや提案内容の優劣比較というよりも、我々の話を真摯に聞き、想いを汲み取ってくれるコミュニケーション、その「人間力」が大きかった。かしこまった関係ではなく、「こんなことはできないか」と気軽に相談できる信頼関係を築けたことが、すべてだったと確信しています。
外部の視点とファシリテート力がもたらした、新たな「発見」
実際のプロジェクトはどのように進められ、どのような成果が得られましたか。
新庄:最初のプロジェクトは、既存の4事業とは異なる領域、いわゆる「飛び地」での新規事業創出をテーマに、約半年にわたり取り組みました。我々のプロジェクトメンバーとストライクさんが協働し、
①事業の現状整理、
②メガトレンドや顧客業界・業務プロセスを基にした新規事業機会の発掘、
③事業領域の絞り込み、
④有望領域の深掘り、というステップで進めていきました。
このプロジェクトを通じて得られた最大の成果は、我々だけでは気づけなかった「外部の視点」に基づく新規事業機会の発見と、それを具体化していくための検討手法を学べたことです。
比佐:ストライクさんのファシリテート力と、議論した内容を構造化し「見える化」する力には、本当に学ぶべき点が多かったです。我々がうまく言葉にできない部分も的確に質問で引き出し、それを咀嚼して納得感のある形にまとめてくれる。例えば「こういう切り口で市場を見てみましょう」といった提案は、我々の中だけでは決して出てこない発想であり、多くの発見がありました。
現在は、既存事業を起点とした新たなプロジェクトが始まっているそうですね。
新庄:はい。「飛び地」の検討で得た学びを活かし、今度は自社の既存事業を起点に、より実現性の高い成長戦略を描くことをテーマとしたコンサルティングを新たに開始しました。自社の強みを改めて見つめ直し、既存事業のさらなる発展と新たな価値創出の可能性を探る取り組みとして進めています。決して前回の検討が無駄になったわけではなく、会社の状況を踏まえ、より地に足の着いた成長戦略を描きたいという強い思いがあったからです。
この方針転換についても、社内の役員から反対意見は全くなく、「ぜひやってみよう」とスムーズに承認されました。これも、最初のプロジェクトでストライクさんと共に確かな手応えを感じられていたからに他なりません。
未来を担う若手と共に、M&Aも視野に入れた成長戦略を
今後のプロジェクトの進め方と、ストライクに期待することについてお聞かせください。
新庄:今回のプロジェクトには、20代から40代の若手メンバーを中心にアサインしています。彼らが中心となり、我々の持つ要素技術を起点として、半年間かけて事業拡大の可能性を探っていきます。そのゴールイメージは、あくまで事業を確実に成長させることであり、その手段としてM&Aが最適だと判断すれば、当然その選択肢も入ってきます。
今後ストライクさんには、今回のようなM&A戦略と結びついたコンサルティングはもちろんのこと、もう一つ期待していることがあります。それは、企業価値向上を目的とした「幹部社員教育」へのご協力です。例えば、今回のようなプロジェクトを題材に、複数の部署からメンバーを集めて研修を行うなど、人材育成の観点でもお力添えいただけると、会社全体の成長に繋がるのではないかと考えています。
最後に、同じように新規事業やM&Aを検討している経営者の方々へメッセージをお願いします。
新庄:我々のように、M&Aを検討し始めても、何から手をつければ良いか分からない、という企業は少なくないはずです。そんな時、すぐに案件を探し始めるのではなく、一度立ち止まって自社の強みや目指すべき方向性を専門家と共に整理する時間は、非常に有益だと断言できます。
特にストライクさんのように、M&Aという最終的な実行まで見据えている専門家に伴走してもらうことで、絵に描いた餅で終わらない、地に足の着いた戦略を描くことが可能になります。成長戦略に課題を感じている経営者の方々は、こうした伴走型のコンサルティングという選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。我々も、このプロジェクトを通じて、会社の未来を切り拓く確かな一歩を踏み出せたと感じています。
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成長余地がある領域と、ない領域の見極めがついた。
具体的な顧客の話から把握できたのでしっかり腹落ちした。
会社の将来ビジョンについて、何となくの感覚で考えていたが、根拠が見えて自信が出てきた。