INTERVIEW

競合の少ない領域で独自技術を確立し、
経営を安定させて大手にM&A
創薬分野の起業家が語るM&A戦略

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株式会社浜松ファーマリサーチ 前代表取締役会長  髙松 宏幸 氏

株式会社浜松ファーマリサーチ 前代表取締役会長 髙松 宏幸 氏

国内外の製薬会社からの委託を受け、新薬の研究開発に欠かせない実験動物を用いた非臨床試験を行う株式会社浜松ファーマリサーチ(本社・静岡県浜松市)。独自技術と優秀な研究者に高い評価がある同社株式を、創業者である髙松宏幸氏は2023年10月、医薬品開発支援会社のシミックホールディングス株式会社(本社・東京都港区)に譲渡し、グループ傘下に入った。60歳を前に決断したM&Aは、海外展開への加速と、セカンドライフを考えてのことだったと語る髙松氏に経緯などを伺った。

サルを用いて新薬の有効性を検証
製薬会社を早期退職して2005年に創業

浜松ファーマリサーチの事業内容から教えてください。

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髙松:実験動物を用いた薬効薬理試験を国内外の製薬会社から受託して行う会社です。新たな医薬品の研究開発では、薬が効くという有効性の評価と、安全性の確認という2段階の検証が必要になります。浜松ファーマリサーチは、実験で使う動物を人に最も近いカニクイザルに絞り、人での臨床試験との乖離をなくすようにした世界においても数少ない研究機関です。

創業の経緯と理由を伺えますか。

髙松:新薬の開発研究をしていた製薬会社を早期退職し、2005年に会社を設立しました。在職中に国内留学の形で約2年半、浜松医科大学で研究活動をしていた縁で、退職後にいったん同大の研究生となって大学発ベンチャーとして起業しました。浜松医大の先生方は私の事業内容や技術を高く評価してくれていましたので、大学側と連携した体制を築いて事業をスタートさせました。
当時は新薬の有効性を検証する受託試験会社はあまりなく、加えて、実験動物では効くけれど、人に試すと効かないというケースが特定の領域で増えてきた時期でした。FDA(アメリカ食品医薬品局)が、ラットなどの小動物ではなく、霊長類で薬の有効性が検証されない限り、人による臨床試験は認めないとする方針を出したこともあり、サルを用いて薬の有効性をしっかりと判定する会社をつくれば世界にも通用すると考えました。

その狙いは当たったわけですね。

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髙松:FDAが霊長類で薬の有効性がみられないと先に進めないとした領域の一つである脳梗塞に関する薬の評価例数は世界トップクラスです。また、脳のどこで痛みを感じているのかを画像診断で解析する技術を独自開発し、その装置を使ったサルによる鎮痛剤の有効性をみる受託試験も数多く受けています。国内の製薬会社とはほとんど取引があり、海外はフランス、台湾、韓国、インドのベンチャー企業が主な得意先です。近年は毎年増収増益で、10年前と比べて売上は約8倍に増えました。

M&A決断の背景にある
海外展開と60歳での引退

業績堅調のなか、なぜM&Aを検討されたのですか。

髙松:私がずっと事業の目標にしてきたのは、海外の売上比率が国内を上回ることでした。アメリカのサンディエゴに子会社を設けて営業活動もしましたが、取引先の拡大までには至らなかった。これは私の能力不足によるもので、海外の製薬会社にもっと活用してもらうには、海外営業に力のある企業に会社を引き継いだ方が良いのではないか。そうすることが世の中のためにもなるんじゃないかと思いました。国の薬価引き下げで国内の製薬会社は利益が減り、新薬の研究開発費を抑える傾向にあります。国外からの受注を増やすことが、会社の成長や研究開発を加速させることにもなると考えました。

海外展開以外にもM&Aを考えた理由はありますか。

髙松:これは私の人生観ですが、60歳までに今のような仕事は辞めて、好きなことをして妻や子どもたちと人生を楽しみたいとずっと考えていました。仕事が生きがいという人もいますが、私は人生の楽しみ方は働くこと以外にもあると思っています。従業員にも以前からこうした考えを伝えていて、「ぼくのゴールはバイアウトだからね」と話していました。

60歳で引退する準備もしていたのでしょうか。

浜松ファーマリサーチ(株)前代表取締役会長 髙松宏幸氏。
今回お話を伺った浜松ファーマリサーチ(株)前代表取締役会長 髙松宏幸氏。

髙松:譲渡先を探し始める前の2022年10月に、後継指名した夏目貴弘氏に社長職を譲りました。私は会長として、社長のやることにはほとんど口を出さず、彼がどう経営の舵取りをするのかを見続けてきました。そして、私が抜けても大丈夫、海外の仕事を増やせれば自然と業績は伸びるはずと確信できたタイミングでM&Aを進めました。

後継者育成にそうした時間をかけたのは失敗した経験があったからです。10年ほど前、IPO(新規公開株式)を目指した時期がありました。パブリックカンパニーになれば信用が高まり、海外との取引もしやすくなるだろうと考えて、経営体制を厚くするために製薬会社の社員数名を幹部として招き、権限移譲したのですが、売上がみるみる落ちて過去最大の赤字に陥りました。権限移譲が早すぎたわけです。この失敗の轍を踏まないように後継者を育てました。

医薬品開発支援のパイオニア企業の傘下に
数カ月という短期間で成約

ストライクとの最初の出合いはいつでしたか。

髙松:6、7年前になります。担当された小牧さんとは最初にお会いしてから年に1回くらいのペースで会っていました。他の営業面談は忙しいと断るのですが、小牧さんからは不思議と仕事が暇なときに連絡が入るんです(笑)。それで、「海外営業の強い会社を短期間で探せますか」と相談したのが2023年5月。それからすぐにシミックホールディングスさんをご紹介いただき、10月に成約しました。

シミックホールディングスさんの名前が出たとき、どんな印象を持ちましたか。

髙松:シミックさんは日本で初めてのCRO(医薬品開発支援)会社であり、創業者である中村和夫CEOは、かつて勤めていた製薬会社で高脂血症治療剤「メバロチン」の開発を担当された方です。リスペクトする存在であり、非常に勢いのある大きな規模の会社なので好印象を持ちました。中村CEOとの面談でも、研究者マインドや海外に向けて発展させたいという考えが一致し、数カ月という短い期間で話がまとまりました。

従業員にはM&Aをどのタイミングで伝えて、どんな反応がありましたか。

髙松:約25名いる従業員には成約後に話しました。「ぼくのゴールはバイアウトだからね」と話してきたので、ついに来たかという感じだと思います。社内のハレーションはなかったですし、事業展開が加速できるので、全員ハッピーだと受け止めたのではないでしょうか。

ストライクのサービスについての感想を教えてください。

写真左がストライクの小牧、写真右が相馬
担当者のスピーディーな動きにより、約5か月での成約に至った。
(写真左がストライクの小牧、写真右が相馬)

髙松:小牧さんはスピーディーに動いてくれて、タイムリーに進捗を報告してくれたので、ストレスなく話を進められました。「今売らなきゃだめですよ」といった押し付けもなく、私の意志を終始、尊重してくれました。その姿勢が素晴らしかったです。

最後に経験者として、M&Aを考える経営者へのアドバイスをお願いします。

髙松:私は会社を「商品」だと思って、M&Aをしやすい「商品」をつくってきました。社会になかった「商品」をつくり、出来上がった成果を世の中にもっと広げるために大手にM&Aする。会社設立の目的や経営方針は、経営者それぞれのセンスや生き方に絡む話なのでアドバイスなんてできませんが、こうした私の考えや経験が少しでも参考になればと思います。

本日はありがとうございました。

M&Aアドバイザーより一言(小牧 成宜・事業法人部マネージャー談)

ストライク小牧

一般的にM&Aと言うと、まず思い浮かぶ言葉の一つが「後継者不在」だと思います。オーナー社長が後継者を育て、任せるという事はそれだけ難易度が高いもので、弊社にも後継者不在を理由に多くの経営者からご相談を頂戴しております。一方、今回のオーナーである髙松様の場合、将来を見据えて、社長候補を社内昇格させ、社長として育てあげるという準備を何年も前からされた上で、M&Aを進められたという点が非常に印象に残っています。
事前に準備を行い、髙松様としても60歳手前という良いタイミングで決断をされたことで、後継者様、従業員様、取引先様にとってベストなタイミングで譲渡をされたと思います。
浜松ファーマリサーチ様は、今後シミックホールディング様の国内外のネットワークを活用し、薬効薬理における創薬支援サービスを更に拡大させていくことを目指しており、社会的にも大きな意義のあるM&Aとなりました。

本サイトに掲載されていない事例も多数ございます。
是非お気軽にお問い合わせください。