M&Aの業界動向 人材派遣業界

2015年 業界動向

業界定義
一般労働者派遣事業及び特定労働者派遣事業
(労働者派遣法より)
業界シェア
業界トップは、リクルートホールディングスで部門売上高は6,124億円、第2位はテンプホールディングスで3,624億円、第3位はパソナグループで2,086億円となっている。
市場規模
5.4兆円

(厚生労働省「労働派遣事業報告書」より)

成長率
0.1%減

(厚生労働省「労働派遣事業報告書」より)

関連法規
労働法、職業安定法、雇用対策法

2013年以降、企業の人材需要は増加傾向にある。派遣の中心となる事務職の回復は鈍いが、貿易事務や会計など付加価値の高い業務では需要が増加している。また、ITや建築関連、製造業、研究開発など一部の職種で需要が急増しており、人材の確保が困難な業種も少なくない。これは円安の影響で自動車などの輸出産業とその裾野産業の収益力が向上したからだと考えられる。

また、一部の大手企業では、正社員採用へのシフトがはじまっており、その影響により人材紹介ビジネスが急成長している。2013年度の人材紹介業市場は前年度比3%増の1,300億円で市場規模は4年連続の右肩上がりとなった。一方、企業の正社員や新入社員の採用意欲が高まったあおりを受ける形で、再就職支援市場は微減傾向が見られた。2013年度の市場規模は0.3%減の310億円となっている。

業界の注目は、2015年度中の成立が予定されている労働者派遣法の改正だ。改正派遣法が成立すると、これまで届出制だった特定労働者派遣が廃止され、許認可制に一本化される。さらに、派遣期間の制限を受けなかったソフトウエア開発など専門26業務の枠組みが撤廃され、一人の派遣技術者が同じ派遣先で働ける期間は、原則で最長3年間となる。これまでは『業務ごとに3年』だったが、改正案では『1人あたり3年』に代わるため、同じ仕事でも人が交代すればずっと派遣社員に任せられるので、企業も活用を増やすと予想されており、人材関連ビジネスの追い風になるとみられている。

■人材派遣業市場規模推移
出典:「人材ビジネス市場に関する調査結果 2014」矢野総合研究所

■人材紹介のビジネスモデル

2013年、M&A市場を賑わせたのはテンプホールディングス(東京)だった。4月に、米投資ファンドのコールバーグ・クロビス・ロバーツ(KKR)から680億円(負債含む)で、業界6位の大手インテリジェントホールディングス(東京)を買収し、業界3位のパソナグループを引き離した。さらに、同年1月には、パナソニックの全額出資子会社であるパナソニックAVCテクノロジー(大阪)とパナソニックAVCマルチメディアソフト(大阪)を買収し、技術関連領域への強化を実施。4月には、ボルボ(スウェーデン)の日本法人UDトラックス(埼玉)を買収し、自動車業界へ切り込んだ。

一方、業界3位のパソナグループは、傘下のキャプランを通じて1月にアサヒビールの事務作業を請け負うアサヒビールコミュニケーションズ(東京)、9月にも信販大手ジャックスの子会社で労働者派遣業のサポート(東京)を買収し、さらなるシェア拡大を目指している。ほかにも、製造業派遣のUTホールディングスが電池製品加工・組立・派遣事業を手掛けるパナソニックバッテリーエンジニアリング(大阪)を、ジェイエイシーリクルートメント(東京)が求人情報サイト「キャリアクロス」を運営するシーシーコンサルティング(東京)を、クリークアンドリバー(東京)がアパレル向け人材サービス、インター・ベル(東京)を買収するなど、数多くのM&Aが行われた。

業界トップのリクルートホールディングス(東京)は、2020年に人材サービス世界一になると宣言し、海外で積極的なM&Aを進めている。2011年には、米国人材派遣大手のアドバンテージ・リソーシングを買収したことで、一気に世界第4位の人材サービス会社へ躍進した。さらに、2013年8月には、香港の人材紹介事業者RGF Hong Kong Limitedを買収、同じくシンガポール法人のRGF HR Agent Singapore Pte Ltdを通じてインド最大級のエグゼクティブサーチ会社、ニューグリッドコンサルティングを買収し、アジアへの進出を加速している。

マンパワーグループ日本法人(東京)は、法務関係のリーガルフューチャーズジャパン(東京)と、金融業界に特化したエクスぺリス・ティーエムジェイ(東京)、製造分野のエクスぺリス・モータース(東京)の人材会社3社を2013年1月に買収した。3社は、日本をはじめ香港、台湾、韓国、シンガポール、オーストラリアで実績があり、今後バイリンガル人材の需要が高まることを見越した戦略と考えられる。ほかにも、エン・ジャパン(東京)によるベトナムの人材サービス大手ナビゴス・グループの買収や、日本マニュファクチャリングサービス(東京)による中国の製造業派遣、心連心人力資源服務ならびに無錫市濱湖人力資源服務の買収など、海外進出を目指す企業によるM&Aが増える傾向にある。

人材ビジネスは、開業時の投資負担が小さく参入障壁が低いため、中小規模の事業者が乱立する業界といえる。大手企業といえども市場シェアは比較的小さいことも特徴といえる。また、大きな設備投資負担もなく、基本的にキャッシュを生み出し続ける業種であることから、このキャッシュを用いたM&Aが起きやすい業界といえる。

企業価値ではEV/EBITDA倍率は平均12.36倍と高めで、分布は10~16倍に38.5%が集中している。

財務内容が良好な会社が多いが、登録者の募集や定着に関わる経費や広告・宣伝費がかさみがちな側面もある。また、労働者派遣法や労働基準法など法的規制がビジネスモデルや収益に大きな影響を及ぼす業界であるという点に留意したい。

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