M&Aの業界動向 運送業

2010年 業界動向

業界定義
陸上運送、海上運送、航空運送のうち主に陸上運送を記載している。
業界シェア
大手民間では日本通運、ヤマト運輸(ヤマトホールディングス)、佐川急便(SGホールディングス)、西濃運輸(セイノーホールディングス)、福山通運の大手5社の寡占化が進む。売上高1兆円を超える企業である郵便事業(郵政)、日通、ヤマトで市場の約36%を占める。 一方、中小・零細企業の事業者数が多いことも特徴的。
市場規模
14兆円

(社団法人全日本トラック協会(平成19年度トラック運送事業の営業収入))

成長率
4%減

平成13年度の11兆円から2006年度の14兆円と拡大するものの平成19年度は前年度比微減(社団法人全日本トラック協会)。平成20年度以降はリーマンショック等による景気低迷により市場成長率は減少傾向にある。

関連法規
貨物自動車運送事業法、自動車関係諸税、自動車排出ガス規制

平成20年9月のリーマンショックを契機とした世界同時不況により国内貨物輸送量が急激に落ち込んだため、平成21年1~3月期の国内向け出荷量「荷動き指数」はマイナス75とかつてない勢いで荷動きが減退した。その後、持ち直してきたが依然として低水準での推移に留まっており、平成22年度はピーク時の約3分の2の水準まで落ち込むと予想される。

そのためトラック運送事業者数は一貫して増加を続けていたが平成20年度は40年ぶりに減少に転じた。大手の事業者が存在する反面、資本金1千万円以下、従業員20人以下、保有トラック台数20台以下の小規模な事業者が全体の60%以上を占め、直近の平均売上は約2億円(平成20年度)となっている。

トラック運転者の年齢構成比

また、わが国の少子高齢化に伴い若年層のドライバーが近年激減している。平成5年では20歳代以下のドライバーが占める割合が中小型トラックでは37.8%、大型トラックでは15.1%だったが、平成21年になるとそれぞれ12.7%、4.7%と3分の1程度まで減少している。このまま若年層のドライバー離れが進めば、産業の盛衰にも関わりかねない大きな問題になると懸念されている。

(出所:社団法人全日本トラック協会「トラック輸送産業の現状と課題・特別編集版(平成21年度版))

運送業界は市場規模に比して業者数が多いため、価格競争の激しい業界である。リーマンショック以降は、市場が急速に縮小し、原油高による燃料コストアップ等もあり、収益が悪化している企業が多い。また、運送業は資本集約型、労働集約型の産業であり、最近の事業環境の悪化に伴い、借入金依存度が高くなっている。このような環境の中、日本通運と郵便事業の宅配業務の統合、日立物流とSGホールディングス、福山通運と王子運送、商船三井ロジステックとトナミホールディングスなどの大手企業が業界内での生き残りを掛けてM&Aが行われている。

また、中小の運送会社でも、事業承継問題や将来不安を起因としたM&Aが積極的に行われている。

運送業は国内だけに留まらず、世界規模の動きになっている。航空フォワーディング事業、通関事業等を取り込んでいく動きや海外の運送会社の取得が活発化しており、今後は業界の垣根を越えたM&Aが増加すると予想される。

M&Aを行うに当り、荷主別の収益、トラック一台当り収益、借入金等が重要な視点となる。

EV/EBITDA倍率は平均が7.47倍でやや幅が広いが4~10倍で全体の62.2%を占めている。

トラックや倉庫、不動産など設備投資が必要な業種であるため、負債が拡大しやすい傾向がある。

また、設備投資にリースを活用しているケースも多くみられるが、非上場企業ではリース債務を決算上の負債として計上していないケースがほとんどであるため、買収価額を算定する際にも売却価額を推測する際にも注意が必要である。

なお、物流業(このうち特に倉庫業)の企業は不動産を保有しているケースもあり、これらの企業では不動産価値が企業価値に与える影響が大きい。このため、収益性指標による評価だけでは片手落ちになる場合もある。

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