M&Aの業界動向 太陽光発電業界

2017年 業界動向

業界定義
太陽光発電事業(売電事業)、太陽光発電設備工事業、管理・メンテナンス業(O&M)
業界シェア
発電事業業界一位はLooop Inc.、売上高は2017年3月期で233億円。2位はガスアンドパワー、2016年3月期の売上高は172億円。その後にレノバ、自然電力、日本風力開発、エコ・パワー等が続く。
市場規模
1.2兆円
成長率
59.1%増
関連法規
電気事業法、FIT法、

太陽光関連事業は大きく3つの事業に分けることができる。①余剰電力の売却事業(売電事業者)、②太陽光発電設備施工業(施工事業者)、③管理メンテナンス事業(O&M事業者)である。

太陽光発電関連事業の業界動向としては、2013年以降倒産する事業者が増加しており、2017年1-8月の「太陽光関連事業者」の倒産数は東京商工リサーチによると累計59件で、前年同期比で63.9%も増加している。このままのペースで推移すると、2017年は過去最高を記録した2016年の倒産数65件を上回る可能性が高い。

太陽光関連事業者の倒産 年次推移

その理由は①売電事業者と②施工事業者③O&M事業者で異なる。

まず、①売電事業者の視点で見て行く。こちらは平成27年3月31日に廃止された特別一括償却制度の影響が時間差で来ていると考えられる。この制度は、設備取得額の全額を即時償却することにより税金を繰延することができる制度だ。しかし、この制度はあくまでも税金負担を将来に繰り延べることができるだけで、支払うべき税金の額が減るわけではない。繰延してきた分の額が数年後に重くのしかかってくるのだ。そしてこの繰り延べてきた税金負担が最近になって顕在化してきたため、税負担に耐え切れずに倒産する業者が増えたと考えられる。

次に、②施工事業者と③O&M事業者の視点から見て行くと、2012年7月に再生可能エネルギ―の固定価格買取制度(FIT)が導入されたことが発端となったようである。導入当初の買取価格は1kw当たり40円で、東京電力の電気料金が1kw当たり12~13円程度であることを考えるとかなりの高額である。そして、太陽光発電事業は毎年の発電量に大きな変動がないため、長期間に渡って安定して高い収益を得られる。そのため多くの事業者がまず①売電事業に参入し、それを取り囲む形で周辺事業である②施工事業者、③O&M事業者が大量参入した。固定買取価格制度によって安定した収益を得られる①売電事業者とは反対に、②施工事業者、③O&M事業者は一気に競争が激化、それに加え工事単価は年々減少しており、当初の予定通りの収益が得られなくなった事業者が倒産に追い込まれているようである。

また、①売電事業者にとっては他にも様々なリスクが存在している。改正FIT法により既存の事業者であっても事業計画を提出する必要が出てきており、この事業計画にはメンテナンス計画の提出も含まれており、今までメンテナンスを積極的に行ってこなかった小規模事業者にとっては負担である。さらに認可だけを取得して、設備を取得しなかった①売電事業者は設備工事を行い、実際に発電を開始しなければ認可を取り消しされてしまう。太陽光発電設備の設置費用を捻出することが難しい①売電事業者は太陽光発電事業を他社に譲渡する場合もある。

このように、太陽光発電関連事業は法改正の影響で新規の参入が増える一方、倒産する会社も増加しており、既存の事業者にとっては厳しい状況が続く見込みだ。

太陽光発電関連事業のM&A動向に関しては、売電事業者か施工事業者やO&M事業者のような周辺事業者かによって別れる。

売電事業者に関しては買いニーズが非常に活発化している。固定価格買取制度初期の高い価格で売電する権利を持つ事業者は、今から売電事業を開始するよりも遥かに高い額で余剰電力を売ることができ、さらに安定して高い収益を得ることができるため非常に買収ニーズが強い。また、売電事業者の中には認可だけを取得し、未着工の太陽光発電所を保有しているケースもある。そういった事業者も改正FIT法により実際に発電を行うことが求められるため売電事業の売却を行う事業者もいる。直近の事例をあげてみると、2017年9月15日にジオネクストがサンライフコーポレーションへ売電事業を譲渡。同年8月にはジー・スリーホールディングスが未着工太陽発電所の権利を保有する合同会社出資持分の一部を売却している。

また、売電事業に関してはインフラファンドも発電所の取得に乗り出している。インフラファンドは太陽光発電施設などのインフラ施設を投資対象としており、2015年4月に東京証券取引所にインフラファンド市場が創設され、2017年9月時点ではタカラレーベン・インフラ投資法人、いちごグリーンインフラ投資法人、日本再生可能エネルギーインフラ投資法人が上場している。タカラレーベン・インフラ投資法人は上場から約1年で18件、いちごグリーンインフラ投資法人は2016年10月から2019年6月までに15件、そして日本再生可能エネルギーインフラ投資法人は上場時点で8件の太陽光発電所をそれぞれ取得している。このように、インフラファンドも売電事業のエグジット先として数を増やしてきている。

施工事業者に関しては2極化によりM&A市場が活発になることが予想される。自社で施工まで行うことができる事業者に関しては低い工事単価でも工事を引受けられ、価格競争力が有るため注文が集中する。その一方で、工事そのものは自社で行わず外注する事業者は価格競争力が弱いため工事を受注することができず業績が悪化、M&Aによる譲渡を検討する事業者も増えている。しかし、現在受注を独占し収益を上げられているような事業者であっても先行きは必ずしも明るくない。現在は、固定価格買取制度による売電事業が活況なため、太陽光発電設備の工事の受注量は増えていても買取制度が終わってしまえば工事も一気に無くなってしまうというリスクが潜んでいる。中には現在大きな収益を上げていても将来的なリスクを見越してM&Aによる譲渡に踏み切る事業者も出てきている。将来的にはこうしたリスクが表面に出てきて太陽光発電事業の周辺業者によるM&Aが活発化すると思われる。

太陽光発電業界に関しての企業価値の計算方法は譲渡対象企業が売電事業者、施工事業者およびO&M事業者かによって異なり、一概にEV/EBITDA等の指標で表すことは難しい。だが、考え方そのものに関しては非常にシンプルである。

まず、売電事業者に関しての計算方法であるが、太陽光発電事業は発電量がほとんど変わらないため収益は安定している。よって、固定価格買取制度の買取価額に年数をかけて、予想される整備費等のコストを差し引けば価値が算出できるという、非常にシンプルな計算方法となる。いわゆるアセットとしての価値算定となり、相場も存在する。

一方、施工事業者・O&M事業者に関しては事情が変わってくる。太陽光発電設備の施工やO&Mのみを行っている事業者は非常に少なく、EV/EBITDA等のデータを集めることができない。土木建設業者等の近しい業種のデータを比較対象として使うことも考えられるがそもそも景気等のマクロ的な動向に影響される一般の業種と違い、太陽光発電事業はFIT法の改正になど様々な要因で業績が変動するため類似業種と比較しても正確なデータは出ない。そのためDCF法等の手法を使うことが現実的であるが、上記の通り太陽光発電関連事業そのものが法規制に大きく左右されるため予測が非常に立てづらい。よって、個別ケース毎の価値算定にならざるを得ない。

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