M&Aの業界動向 調剤薬局

2016年 業界動向

業界定義
一般の大衆薬(OTC)、化粧品、洗剤等を扱う医薬、化粧品小売業とは一線を画し、医師からの処方せんに基づいて医薬品を調剤し、患者に提供する薬局。
(業種別審査事典)
業界シェア
業界最大手のアインファーマシーズの占有率約3%
市場規模
7.8兆円
成長率
9.3%増
関連法規
健康保険法、医療法、薬剤師法、医薬品医療機器等法

『処方医院との距離』から『サービス内容』が重要に…

調剤薬局の経営環境は厳しさを増している。2014年9月現在で65歳以上の人口が3,296万人と、総人口の25.9%を占め、高齢化が著しく進行している。団塊の世代が75歳以上になる2025年以降は医療費や介護に対する需要はさらに増え、医療費増加で国の財政を圧迫することは必至である。現状は、医薬分業に伴う負担に見合うサービスが提供できていない、患者本位の医薬分業を実感できないなど、医薬分業に対する批判は大きい。その中で国の方向性は少しずつだが大きく変わっていき、薬局経営が厳しくなることは間違いないだろう。

調剤市場および処方せん枚数推移 グラフ

『薬局のあり方』が変わる

2015年6月に開かれた『健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会』が開かれ、今後の薬局経営に対しての指針が協議された。

今後調剤薬局が求められることは、『ただ待っているだけの薬局』ではなく『自らが主体的に地域の健康にかかわっていく薬局』であること‐つまり薬局のあり方を大きく変えていく必要があるとされている。地域包括ケアシステムの構築のため、かかりつけ薬剤師・薬局の基本機能を備えなければいけない。

具体的には

・服薬情報の一元的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導

・在宅対応や24時間対応

・かかりつけ医をはじめとした医療機関等との連携強化

とされているが、現に2016年4月の報酬改定では、薬局のあり方を示す色が顕著にみられる。かかりつけ薬剤師制度をはじめ、在宅実績や門前薬局の評価の見直しなど、立地のみのビジネスではやっていけない。売上1000億円を超える大手企業の出現により、サービスの質も大きく改善されてきた。スマホでの処方箋管理や、日本郵政などの物流との協業など患者にとっては有難いことが多い。

業界最大手のアインHDで、市場全体の2.9%前後、上位10社でも14.3%程度のシェアしかない。今後業界再編が進むことで、こうしたサービスの質はさらに改善され、個社別の色が大きく出てくる。

例えば、日々の膨大な患者のデータをビッグデータとして経営に利用し差別化を図ることが可能になる。自社の統計を元に、病気の早期発見や今後かかりやすい病気の対策をするなど、具体的なデータと提案を持って患者の日々の生活に入り込んでいく。しかもその同じ薬局が全国どこにでもあり、旅行先で急病にかかっても、『お馴染みの薬局』に行けばしっかりと対応してくれる。

こうなった場合、立地のみの優位性では太刀打ちできなくなる。厳しい業界環境の変化に、いかに生き残るのか、薬局の経営者には非常に厳しいかじ取りが求められている。

分業率も頭打ちになり、新規出店よりM&Aでの拡大を基本方針とする大手企業は多い。その中で、現状のM&A動向のキーワードは『規模』と『特色』が挙げられる。

『規模』のM&A

新潟県の共栄堂、香川県のNPホールディングス、静岡県のメディオ薬局など、各県でトップクラスの薬局が相次いで譲渡をした。

経営環境は決して厳しいものではなく、むしろ良好である。所謂『売り時』と判断したのかもしれない。今後サービスの向上で大きな企業体でないと厳しくなることは、業界分析にも記述をした通りである。つい数年前まではこの規模の薬局が譲渡することは考えられなかったが、今後こういった規模のM&Aは今後増えていくだろう。大手薬局は水面下でこの規模の薬局オーナーと接触しており、大手は大規模の薬局をM&Aの中心としていくだろう。

また、上記の流れを汲んで、大手の買わない規模の薬局を中堅規模の薬局が買収している。ドミナント戦略が彼らの基本戦略であり、比較的狭いエリアで、地域に根を張り経営をしていく。在宅に特化をしたり、介護事業や葬儀業者との提携を模索したり、セミナーをして地域とのつながりを作ったりと、各社独自の色を出そうとしている。

小規模でもまだまだ譲渡は可能であるが、報酬改定毎に譲渡条件は厳しくなっていることは間違いない。これは買い手が選別するようになったことに合わせ、譲渡希望が増えてきたことも要因だ。薬局オーナーは毎日のように薬局譲渡の提案を持ちかけられる。これにうんざりしているオーナーもいるが、業界の大きな流れだと捉えるオーナーも多い。『薬局を売る』のではなく『他社と手を組んでよりよい薬局にしていく』という戦略が広がってきている。

『特色』のあるM&A

2016年9月、雄飛堂が台湾ウーロン茶の販売会社の買収をした。これは今後の薬局経営に大きなヒントとなる事例だと考える。

多くの薬局のオーナーは、規模拡大だけではなく特色を出していくことを検討している。ドミナント戦略で企業ブランドを構築した中堅薬局は、隣接業界やシナジーのある業界の買収で生き残りをかけている。特にかかりつけ薬剤師と健康食品のシナジーは大きく、信頼のおける薬剤師の提案する健康食品はよく売れる、と聞く。規模拡大に次いで多い買収希望が、『健康食品の自社製造会社』と『通販事業会社』である。薬局は小規模でも内部留保が厚い会社が多く、買収は可能である。これらが薬局経営のトレンドになっていくかもしれない。

営業権は利益の4~6倍程度が相場であり、2016年4月の改定後も大きくは変わっていない。しかし、小規模の薬局は譲渡しづらくなっている。

企業価値は大手の買収実績が基準の一つとなる。大手企業は今後も積極的に買収を進めていくが、譲渡相談の増加に伴い買収先の選別を始めており、小規模薬局には投資はしなくなってきている。なかなか価格がつかない薬局も増え、中堅規模の薬局が比較的安価での譲受をするケースは増えてきた。

調剤薬局業界のM&Aは、いよいよ佳境になってきたと見る経営者も多い。下記図のように、再編の終息はあっという間であり、売るにしても買うにしてもタイミングを逃さないことが重要である。

調剤業界の再編の今は グラフ

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