M&Aの業界動向 調剤薬局

2014年 業界動向

業界定義
一般の大衆薬(OTC)、化粧品、洗剤等を扱う医薬、化粧品小売業とは一線を画し、医師からの処方せんに基づいて医薬品を調剤し、患者に提供する薬局。
(業種別審査事典)
業界シェア
業界最大手のアインファーマシーズの市場占有率約2%。約7割を個人薬局が占める。
(保険調剤の動向、各社決算短信、各社決算報告書)
市場規模
6.5兆円
成長率
7.9%増
関連法規
薬剤師法

調剤薬局業界は市場形成から約20年とまだ歴史は浅いものの、国内でも希有な市場拡大が続いている業界として知られる。調剤薬局とは文字通り、処方せん調剤を行う薬局である。国の医薬分業政策により、病院内の薬局に代わるものとして登場。一般用医薬品や生活雑貨を取りそろえたドラッグストアとは一線を画していた。しかし、最近では調剤を行うドラッグストアが登場するなど、競争が激化している。

薬局数及び処方せん枚数の推移 グラフ

厚生労働省によると、2011年度の調剤医療費は約6兆5133億円(対前年度同期比、7.9%増)。店舗数は約5万4000軒。コンビ二エンスストアの4万8293店(JFAコンビ二エンスストア統計調査月報2013年7月)を上回る。日本薬剤師会は1997年に医薬分業とあるべき薬局像を示した「薬局のグラウンドデザイン」の中で、適切な薬局数を2万4000軒と推定したが、じつに倍以上に増えている。

売上高を見ると、大手10社によるシェア占有率は1割強。ドラッグストア業界では大手5社が市場の約1/3を占めているのと比べると、ごく小さい数字にとどまっていることがわかる。全体の7割は個人薬局が占めており、小規模店が乱立。しかし、競争激化による再編淘汰が進み、中小の調剤薬局が大手チェーンのM&Aに応じたり、医薬品卸の参加に入るといったケースも目立つ。

また、2009年の改正薬事法施行後からドラッグストアが調剤に参入する動きも活発化した。従来、薬局や薬店(ドラッグストアを含む)では薬剤師の常駐が義務づけられていたが、薬事法の改正により、コンビ二やスーパーでも医薬品を取り扱えるようになった。結果、ドラッグストア業界の再編が進み、調剤分野に参入することで競争力を高めようとする企業が登場。新たなマーケットとして広がりつつある。

ジェネリック薬品の加算制度改定も調剤薬局に大きなインパクトを与えた。ジェネリック薬品とは、後発医薬品を指す。特許が切れた先発医薬品と同じ有効成分でありながら、薬価は先発医薬品の7割~2割程度と安価に設定している。医療費抑制策が実行されるなか、政府は加算制度を大幅に変更。2010年の調剤報酬改定により、ジェネリック薬品が2割以上使用されていることを点数加算の条件とし、調剤促進を後押しする。

一方、消費税引き上げの影響も注目を集める。医療関係者の技術報酬である「診察報酬」と、薬の公定価格である「薬価」はおよそ隔年で改定が行われている。次回は2014年、消費税が5%から8%に引き上げられるタイミングと重なる。薬価はこれまでほぼ一貫してマイナス改定となっている。過去の消費税スタート・増税タイミングではいずれも救済措置として診察報酬の引き上げを実施。しかし、その効果は一時的なものに過ぎないという指摘もある。

調剤薬局の売上は医薬品の仕入れ額と販売額の差である「薬価差」に左右される。消費税が10%に引き上げられると薬価差分が吹き飛び、経営悪化の懸念もある。こうした業界環境の変化により、さらなる競争と再編の動きが強化するものと予想される。

市場の成熟や競合の出現を受けて、M&Aが活発化してきた調剤薬局業界。大手調剤薬局による新規出店ラッシュが続く中、さらなる事業拡大を図りたい上場調剤薬局大手による同業企業の買収も盛んに行われてきた。周辺業種である医薬品卸やドラッグストア業界の再編も追い風となっている。

また、大手同士の合併の動きや、ジェネリック薬品の営業損失回避・改善を目的としたM&Aも見られる。日本調剤は2012年1月に西武調剤センターをはじめとする7社を吸収合併した他、2013年にはジェネリック医薬品の製造・開発を手がける長生堂製薬の子会社化も果たした。

さらに、アインファーマシーズとセブン&アイ・ホールディングスの共同出資による「セブンヘルスケア」の設立(2008年)など、異業種からの進出も目が離せない。一方で、いったんは調剤薬局事業に進出したものの、薬価改定などの影響を受け、売却を決断するケースもある。

年度ごとに厳しさを増す薬価改定や、医療費削減を掲げる国の方針、そして消費税が与える影響。こうした環境下で、業界再編の規模はますます大きく、広く浸透していくものと思われる。業界最大手であるアインファーマシーズですら業界シェアはわずか数%。主導権をめぐり、M&Aは今後ますます本格化するだろう。

調剤薬局は店舗規模が小さく、他の小売業と比較すると初期投資は小さい傾向にある。そのため財務内容については比較的スリムな会社が多い業種である。上場大手調剤薬局の営業利益率の平均は4%前後、総資産営業利益率は8%前後である。

調剤薬局のM&Aの場合、譲渡会社の収益を自社でのオペレーションをした場合を想定して収益計算を実施することが一般的である。将来CFの計算においては3年~10年と大きな幅も見受けられる。これは門前薬局が比較的長期間将来CFを計算するのに対して、マンツーマン型・面対応型は門前薬局と比較すると短く計算される傾向にある。

また、調剤薬局は専門小売業であり、立地産業の色彩が強い。そのため病院の入り口が変わると薬局の売上が影響を受ける、とまでいわれている。調剤薬局のM&Aは好立地を押さえる出店戦略の一環として行われるケースが多い。したがってM&A市場では大病院の門前薬局など、好立地の調剤薬局は希少価値があるため、高値で売買されている。ただし、薬価差益は縮小方向にあるといわれており、今後も買いニーズが持続するとは限らない点には注意が必要である。

EV/EBITDA倍率は平均で4.84倍で、4~6倍台で約85%を占めている。

過去の調剤薬局のM&A事例では年商の0.1倍から1倍を超える事例まで幅広く分布している。構成上は成約価額/売上高倍率は0.4倍台が最頻値となっている。

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