M&Aの業界動向 調剤薬局

2011年 業界動向

業界定義
一般の大衆薬(OTC)、化粧品、洗剤等を扱う医薬、化粧品小売業とは一線を画し、医師からの処方せんに基づいて医薬品を調剤し、患者に提供する薬局。
(業種別審査事典)
業界シェア
業界最大手のアインファーマシーズの市場占有率約2%と、未だ寡占化は進んでいない。
(保険調剤の動向、各社決算短信、各社決算報告書)
市場規模
5.8兆円

(日本薬剤師会「2010年度 保険調剤の動向(速報値)」)

成長率
3.6%増

(日本薬剤師会「2010年度 保険調剤の動向(速報値)」)

過去10年で市場規模は倍増しており、2008年度には5兆円を突破した。大手調剤薬局を中心として新規出店意欲も旺盛な状況。その一方で、ドラッグストアの調剤事業強化や異業種会社(総合商社・医薬品卸会社)の参入により競争は一段と激化している。成長産業から成熟産業への過渡期にあり、今後は大手調剤薬局を中心としたM&Aが更に増加することが予想される。また、大手調剤薬局同士や周辺業種、新規参入によるM&Aも否定できず、調剤業界における主導権争いは激化していくだろう。

1990年代から、厚生労働省を中心とした医薬分業が国策として掲げられ、分業率は50%を超えるまでに至っている。市場規模の成長率はやや鈍化しているものの、大手調剤薬局の売上高、営業利益ともに拡大傾向にある。

アインファーマシーズ、日本調剤を中心とする大手調剤薬局は大病院の門前薬局を主流に店舗拡大を図っている。

近年、医療費抑制策が実施される中、薬価の改定は毎年厳しさを増してきている。薬価差(国の定める薬剤費-仕入値)が縮小傾向にあれば、院内で処方するメリットが低下し医療機関から更なる院外処方の拡大や、部分分業から完全分業に移行する医療機関が増加することも考えられ、更なる市場拡大が見込める。その反面、薬価差は調剤薬局の収入の一つであり、薬価差が縮小することにより収益面では厳しさが増すことが想定される。

また、医療費削減は国の施策の大きな柱であり、ジェネリック医薬品の調剤に対するインセンティブが打ち出されており、ジェネリック医薬品の処方を活用することで収益面での向上が期待される。

地域によっては薬剤師会の大手参入を嫌がる傾向があるが、近年その状況は解消しつつある。大手調剤薬局が進出してくることで地域の個人経営の調剤薬局は大きな打撃を受けることは避けられないため、大手調剤薬局と薬剤師会の争いは今後も続くであろう。

大手調剤薬局は大病院の門前に出店するいわゆる門前薬局戦略を引続き中心とすることが予想されるが、分業が進んでいる地域においては、新規の分業による件数が減少するため、今後は個人診療所や医療モールのいわゆるマンツーマン型の出店が増加する可能性がある。また、幅広く多数の医療機関の処方せんに対応するいわゆる面対応の新規展開も画策されている。しかし、医療機関の近所にある調剤薬局を利用する消費者の行動パターンが大きく変化することは考えにくく、今後も門前薬局を中心とした出店戦略に大きな変化はないと予想される。

人材の面では、薬学部の6年制が2006年に開始されたことに伴い、2012年まで新卒薬剤師の供給がなく、一時的な薬剤師不足が懸念される。省令により薬剤師の1日平均処方せん枚数が40枚となっており、薬剤師不足の調剤薬局においては苦労が絶えない状況になるだろう。

大手調剤薬局の新規出店は旺盛であると当時に、積極的なM&Aによる事業拡大を図る傾向に変化は無く、M&Aが活発な業種の一つである。周辺業種では医薬品卸やドラッグストアの再編が先行して進展しており、調剤業界も追随すると予想される。調剤薬局最大手のアインファーマシーズでも業界シェア数%となっており、業界の主導権争いはこれから本格化すると予想される。引続き大手調剤薬局による中小調剤薬局のM&Aは活発に続くと予想され、数年前の食品スーパーやドラッグストア業界のM&Aを彷彿とさせる。今後は大手調剤薬局や周辺業種、新規参入を含めた業界再編に目が離せない状況にある。

大手調剤薬局は、優良立地の確保、いわゆる大病院の門前への出店確保が至上命題であり、門前薬局へのM&Aは非常に活発で価額も高騰気味である。これは大病院の門前立地を確保することで、大病院の移転が無い限りは安定した収益が見込めるからである。

個人医療機関や診療所のマンツーマン型調剤薬局の場合、医師の年齢・後継者有無等により価額に幅がある。また、面対応薬局については医療機関の分散率や処方せん発行病院の医師の年齢・後継者の有無により価額に幅がある。

大手調剤薬局による中小調剤薬局のM&Aは、多額ののれん代を付した買収金額が多く散見される。今後2,3年で大手調剤薬局による中小調剤薬局のM&Aは一通り完了すると想定され、一服した後はのれん代が小さくなっていくことは避けられないだろう。中小調剤薬局においては現在がM&Aにおいて高い金額で譲渡することができる絶好の機会である。

年度ごとに厳しさを増す薬価改定や、医療費削減を掲げる国の方針次第では、更なる業界再編が加速することも予想される。

調剤薬局は店舗規模が小さく、他の小売業と比較すると初期投資は小さい傾向にある。そのため財務内容については比較的スリムな会社が多い業種である。上場大手調剤薬局の営業利益率の平均は7%前後、総資産営業利益率は15%前後である。

調剤薬局のM&Aの場合、譲渡会社の収益を自社でのオペーレーションをした場合を想定して収益計算を実施することが一般的である。将来CFの計算においては3年~10年と大きな幅も見受けられる。これは門前薬局が比較的長期間将来CFを計算するのに対して、マンツーマン型・面対応型は門前薬局と比較すると短く計算される傾向にある。

また、調剤薬局は専門小売業であり、立地産業の色彩が強い。

そのため病院の入り口が変わると薬局の売上が影響を受ける、とまでいわれている。

調剤薬局のM&Aは好立地を押さえる出店戦略の一環として行われるケースが多い。したがってM&A市場では大病院の門前薬局など、好立地の調剤薬局は希少価値があるため、高値で売買されている。

ただし、薬価差益は縮小方向にあるといわれており、今後も買いニーズが持続するとは限らない点には注意が必要である。

EV/EBITDA倍率は平均で5.00倍で、分布も5倍代を中心としている。

過去の調剤薬局のM&A事例では年商の0.1倍から1倍を超える事例まで幅広く分布している。

構成上は成約価額/売上高倍率は0.4倍代が最頻値となっている。

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