M&Aによる課題解決

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M&A業界動向 アパレル

アパレル業界基本情報

市場規模 成長率
9兆円 7.8%減
業界定義 衣料品の生産、流通、販売に携わる業態を指す。さまざまなアパレル商品を扱う総合アパレルから、婦人服、紳士服、子ども服などを専門的に扱う専業アパレルまで多岐に渡る
市場規模 9兆612億円
(矢野経済研究所「アパレル産業白書2010」)
成長率 7.8%減
(矢野経済研究所「アパレル産業白書2010」)
業界シェア カジュアル衣料「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングが最大手。上位5社で市場の約24%を占める。

アパレル業界分析

矢野経済研究所「アパレル産業白書2010」によると、2009年の国内アパレル総小売市場規模は、前年比で92.2%となる9兆612億円と推計される。過去20年間で市場規模は約3割縮小し、2010年の同小売市場規模も8兆770億円と、さらなる縮小が予測されている。その背景には、景気後退に加えて、外資系ファストファッション・ブランドや低価格カジュアル衣料ブランドの台頭による商品単価の下落がある。

2008年秋にスウェーデン発のカジュアル衣料ブランド「へネス・アンド・マウリッツ(H&M)」が東京・銀座に日本1号店をオープン。2009年春には若者ファッションの聖地、原宿に米国カジュアル衣料「フォーエバー21」(米国)が開業するなど、外資系ファストファッション・ブランドが相次いで日本上陸を果たす。

これらの企業はいずれも最先端のモードを取り入れた衣料を短いサイクルで世界的に大量生産・販売。自社ブランドの衣料を企画・製造から販売まで一括して管理するSPA(製造小売業)の手法をとる。

もともと、SPAは米国のカジュアルブランド「GAP」が作りだしたビジネスモデルで、PB(プライベートブランド)を持つ専門店・小売業(Speciality store retailer of Private label Apparel)の意。転じて、アパレル企業と小売業の機能をあわせ持つ「製造小売業」を指すようになった。大別すると、小売業から発展した企業と、アパレルメーカーが販売にまで手を広げたパターンとにわかれる。どちらにしても、在庫リスクを自社で引き受けなくてはならないというデメリットがある一方、納品時間の短縮、中間マージンの削除、売れ筋商品の欠品といった、販売機会の損失リスクを軽減するというメリットが期待できる。

既存小売業の不振が続くなか、アパレルメーカーは、次々に自社ブランドのSPA化を進めている。背景には、アパレル業界の主販路であった百貨店の売り上げが落ち、独自の販路で競争力を確保せざるを得ないという事情もあるようだ。

例えば、総合ファッションアパレル企業「ワールド」は創業以来、卸事業を100%とする企業だったが、1992年に小売事業をスタート。「アンタイトル」「インディヴィ」「クード シャンス」「スーナウーナ」など、SPAブランドを次々と開発し、製造卸から小売事業型への転換に成功した。「コムサデモード」を展開するファイブフォックスも、「コムサイズム」の多店舗展開で業績を伸ばし、他のアパレル企業に影響を与えた。

日本最大のカジュアル衣料ブランド「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは日本を代表するSPA型企業である。一般に、SPAを取り入れていても、企画・開発を一部、生産業者に委託している企業は少なくない。しかし、ユニクロの場合は実際の生産工程こそ委託するものの、生産管理や製品開発まで徹底して自社で行う。その姿勢は低価格ブランドでは珍しく、むしろ「エルメス」や「ルイヴィトン」のように自社工場で生産まで貫徹するラグジュアリーブランドを彷彿とさせる。

日本百貨店協会によると、2010年度の百貨店衣料品の売上高は前年比93.7%の2兆1441億円と、過去5年間で4分の3ほどに縮小した。百貨店衣料品の背景には不況の影響もあるが、同時に業界が抱える構造的な問題もはらんでいる。従来の百貨店は、駅ビルやファッションビルなどに比べるとテナントの賃料が高い。高コスト・低収益に耐えうる体力が必要となり、自然と出店は大手アパレルメーカーに絞られる。こうした中、若者をターゲットとした中小アパレルメーカーや新興ブランドの受け皿として業績を伸ばしているのが、「ルミネ」をはじめとする駅ビルやファッションビルである。

近年では、アパレル各社は、駅ビルやファッションビル向けの新ブランドを次々に開発している。前出のワールドは若者向けファッションビルの渋谷109や、ショッピングセンター(SC)などにも進出し、多ブランド戦略を展開。10年前の同社では、ファッションビルやSCが売上に占める割合は約10%だったが、現在では5割強に達する。婦人服総合メーカーの東京スタイルは、「ナチュラルビューティー」などの人気ブランドを擁するサンエーインターナショナルとの経営統合(2010)や、関西エリアを中心に婦人服小売を展開するフィットの子会社化(2011)など、複数のM&Aを実施している。

さらに、ネット通販やテレビショッピングといった販売チャネルも、今後の成長が期待されている。ワールド、サンエー・インターナショナルに続いて、三陽商会、イトキンも自社直営のネット通販サイトをスタートさせた。現時点で減収を補うスケールには至っていないが、今後の成長の活路として期待が寄せられている。

アパレル業界のM&A動向

2008年秋のリーマンショック以降、M&Aによるアパレル業界再編を企てた投資銀行やファンドが姿を消し、M&Aの主役は大手アパレルメーカーなど事業会社に様変わりした。

その主役交代劇として象徴的なのは、「ゴールデンベア」ブランドで知られた小杉産業のケース。1990年代から長く業績不振だった同社は、2005年1月には債務超過に転落。同年、投資会社ジェイ・ブリッジ傘下に入り、2007年に伊藤忠商事などが出資する投資会社レゾンキャピタルパートナーズに売却された。ところが、景気悪化により、親会社のファンドや金融機関の支援を得られず、主力ブランドも販売不振。2009年2月に倒産を余儀なくされた。

大手アパレルメーカーによるM&Aは新たな販路の開拓や事業領域の拡大を目的とした案件が目立つ。オンワードホールディングスによるジル・サンダー(イタリア)やジョゼフ(英国)の買収は海外事業拡大策のひとつ。強力なブランドを自社に取り込み、海外戦略の礎にしようという試みだ。

また、ファーストリテイリングはタイ王国におけるユニクロ事業展開のため、今年6月に三菱商事とともに合弁会社(ファーストリテイリング75%、三菱商事25%)を設立。今秋にはタイ王国第一号店を出店する予定となっている。ユニクロは2002年からアジア地区における出店をスタートし、中国や香港、韓国、シンガポール、マレーシア、台湾へと店舗網を拡大。2011年2月時点で、アジア地区における店舗数は132店に達している。

一方、日本を代表する大手アパレルメーカーであるレナウンは中国企業の傘下に入り、再建を目指すこととなった。日本を代表する老舗アパレルメーカーの同社も業績の悪化に対処すべく、ブランドの統廃合実施、不採算事業からの撤退など、大規模なリストラを断行。その甲斐あって、2004年度から3期連続で営業黒字を達成したが、2007年からは再び21億円もの営業赤字を抱えることに。そして2010年、中国の大手繊維メーカーであり、欧州ブランドを複数展開するアパレルメーカー「山東如意」を引受先とする約40億円の第三者割当増資を実施。同社がレナウンの筆頭株主となった。中国企業による日本企業へのM&Aは増え始めており、今後第二、第三のレナウンが登場する可能性も否めない。

アパレル業界における企業価値の目安

損益面では主なアパレル企業40社のうち、約9割が直近決算で営業黒字となっている。営業利益率は平均3.9%だが、16.3%という驚異的な利益率を誇るファーストリテイリングや、9.0%を叩き出すしまむらといった高収益型モデルを実現している企業もある。総資産営業利益率は平均6.3%、EV/EBITDA倍率(n=32。EV、EBITDA、営業利益のいずれか一方がマイナスの企業を除いて集計)は平均5.37倍だが、一方で10倍を超える企業の割合も高いなど、分布はばらついている。なお、分布としては1倍から5倍台が53%を占めている。

国内市場が縮小や中国をはじめとする新興国マーケットの拡大に伴い、アパレル業界のビジネスモデルも変革を余儀なくされている。こうした中で、M&Aで企業の価値を高めるという戦略が今後ますます重要度を増すことは想像に難くない。

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