2017年業界ニュース

(更新日:2019年1月)

2017/12/11
太陽光関連事業のM&Aが急増中です!

最近急激に太陽光関連事業のM&Aが急増している。これまでも、グリーン税制の改正(一括償却の廃止や特別償却の廃止)に伴う償却メリットを享受した後の発電設備の売却や売電単価低下に伴う太陽光設備投資案件の減少による関連事業者のM&A増加については触れてきた。

1.事業計画書の提出

  • (point)
  • ①全ての太陽光事業者に対し事業計画の提出を義務化
  • ②権利のみの案件や事業化の難しい案件が譲渡対象に
  • ③案件化できたものでも資金繰りに窮しM&Aに
  • ④後出しジャンケンによる先行き不安感醸成がM&Aを後押し

①全ての太陽光事業者に対し事業計画の提出を義務化
従来の固定価格買取制度は設備認定であったが、改正FIT法では事業計画認定に変更された。これにより全ての太陽光発電設備の所有者に対して、資源エネルギー庁へ事業計画を提出することが義務付けられた。

②権利のみの案件や事業化の難しい案件が譲渡対象に
提出期限は2017年9月30日までとされ、事業計画を提出しない場合は認定(売電できる権利)を取り消される可能性があったことから、権利のみを保有していた事業者が急ぎ事業を開始。事業を開始できない資金や信用力に不安のある企業は、権利のみを転売する動きが加速した。

③案件化できたものでも資金繰りに窮しM&Aに
特に特別高圧(2000kw以上)の案件は億単位で資金が必要となり、出力抑制(※1)を理由に銀行からの融資が付かないケースやスポンサー企業が、出力抑制、熊本地震などによる自然災害リスクの顕在化、太陽光パネルの廃棄問題など、様々な不安材料から投資を撤回するなど、事業計画の見直しを迫られ、発電設備または設備認定の権利をM&Aで売却する動きが加速してきている。

④後出しジャンケンによる先行不安感醸成がM&Aを後押し
加えて、提出する事業計画はメンテナンスの厳格化を求めており、メンテナンスコストの増加を余儀なくされるなど、後出しジャンケンとも言える度重なる法改正が、投資家に太陽光ビジネスの先行不透明感を抱かせる結果となり、太陽光投資案件の利益確定のためのM&Aを増加させている。

2.出力抑制

  • (point)
  • ①出力抑制とは?
  • ②出力抑制のルール
  • ③出力抑制実施は売上減少を意味する。
  • ④出力抑制も「後出しジャンケン」

①出力抑制とは?※1
出力抑制とは、電力会社が各発電事業者に対して発電設備からの出力停止または抑制を要請し、出力量を管理する制度であり、設備認定された発電容量が各電力会社の接続可能量を上回ることで取られた措置。

②出力制限のルール
出力制限のtルール 500kw以上の設備の場合
「30日ルール」:年間30日を上限として無補償で出力制限を要請できる
「360時間ルール」:年間360時間を上限として無補償で出力制限を要請できる
「指定ルール」:国から指定された電力会社(現状では東京・中部・関西電力を除く各電力会社)がそれ以降に接続申込をした発電設備に上限時間を設けずに無補償で出力制限を要請できる。

③出力抑制実施は売上減少を意味する
出力抑制は簡単に言えば、電力を買い取らないことを意味するため、実施されれば売り上げの減少につながる。仮に年間360時間の出力抑制を実施された場合、1日の発電時間を12時間としても30日分の売上減少を意味し、年間(季節変動要因は加味せず)1/12か月、つまり年間8.3%の売上減少に繋がる可能性がある。21円の買取価格の場合は19,257円の売電価格となることと同意であり、事業計画に大きな影響を与える。

④出力抑制も「後出しジャンケン」
出力抑制はFIT導入後に適用された制度であり、事業計画の見直しの必要性も出てくる可能性もあることから、「指定ルール」適用地域(東京・中部・関西電力以外の地域)ではセカンダリーマーケットで減価され、融資を行わない銀行も出ている。出力抑制や前述の事業計画の提出によるメンテナンスコストの増加など、相次ぐ事後のルール変更は、前述同様投資家の先行き不透明感を助長し、M&Aによる利益確定を増加させている。

その他にも、外資による優良案件の大量放出や太陽光パネルの廃棄に関するコスト、自然災害によるリスク顕在化など、20年間におよぶ長期投資である太陽光発電事業に対する様々なリスク要因により、M&Aによる太陽光事業の売却は活況を呈している。

こうした状況であるが故に、電力を自力で売ることができる企業や発電設備の証券化までを展望できる企業は、逆に積極的にM&Aで太陽光関連事業を買収している。