2017年業界ニュース

2017/12/05
世界の太陽光との比較

日本では2012年の自然エネルギーに関する固定価格買取制度の導入以降、急速に自然エネルギーが全体の発電量に占める割合を伸ばしてきた。また、近年では中古設備市場が盛り上がる他、固定価格買取期間終了後の先行きの不透明さを見越してのM&Aによる譲渡も増えてきた。現状は非常に盛り上がっている業界ではあるが、前述の通り固定価格買取期間終了後の先行きは不明である。本稿では世界の太陽光と比較し、今後の太陽光の行方を予想してみる。

今回比較の対象とするのはドイツとイギリスである。ドイツの自然エネルギーへの取り組みは世界的にも有名であり、再生可能エネルギーによる発電量は30%を超える。日本が2015年時点で15%を切っていることを考えれば圧倒的である。2000年より固定価格買取制度を導入してきたドイツであったが、近年では同制度への大幅な見直しが行われている。FIT制度からFIP制度への移行である。FIPの制度の概要は以下の通りである。
①公定による一定の固定価格で買い取る形から市場取引平均価格と公定による指定価格の差額を補助として受け取る。
②FIT制度では買取義務による契約を電力会社と行っていたのものを、発電者が市場で販売する形に変更。

ドイツの移行を見習って日本もそのまま同じ制度が導入されるとは考えづらいが、②のように発電者が市場で自由に販売を行えるようになると、中小の発電事業者にとってはチャンスであり同時に大きなリスクとなる。競争の色が強くなるため、上手く販売ルートを確立できなった事業者は設備の売却M&Aにより大手へ会社そのものを売却することも考えられる。いずれにせよ、太陽光発電事業における中古設備市場やM&A市場は活発になると考えられる。

また、固定価格買取制度の開始当初の買取価格のように高額な買取価格の場合、巡り巡って国民の税負担で賄われることから競争させる方が良いのではないかという意見もあるが、自然エネルギーの普及の観点からはあまり成果をあげられないようだ。これはイギリスの例からも見て取れる。イギリスは1990年に競争入札制度により国内での自然エネルギーの普及を狙ったが、政策目標には到達できず、他国が導入した固定価格買取制度と比較しても導入効果は低かったようである。もちろん、固定価格買取制度から競争入札制度へ移行した場合には違う結果となるかもしれないが中小事業者にとっては大きなリスクとなりうる。

以上、ドイツとイギリスの例を挙げてみたが、いずれ終了する固定価格買取制度の後は、競争または競争に近い形に変化するのではないかと思われる。中国においては2009年頃から本格的に固定価格買取制度が採用されてから、2020年を目途に太陽光発電に関しては固定価格買取制度を脱却することを検討している。こうした動きを見ると日本も将来的には固定価格買取制度から新しい制度に移行する可能性は大きい。現在は玉石混交の日本の太陽光市場だが、市場統合として設備の売却やM&Aによる事業者の絞り込みが行われる可能性も大きい。