今回は太陽光発電事業におけるM&Aの現場から、ポイントとなることを記述する。
【太陽光発電事業の価格形成について】
・譲渡金額の軸となるものは、表面利回り13%内外が基準となっている(金融機関借入は控除)
M&Aにおける価格形成は、多様な要素が組み合わさり形成されるが、太陽光売電事業単体として考えた場合、表面利回り13%が一つの目線となる場合が多い。
・FIT価格と残存期間のバランス
ベストは30円後半から40円で残存年数16年前後。ただし、FIT価格と当時の建設費とのバランスも重要となる。
・自用地それとも借地が良いのか
一長一短。自用地の場合は、固定売電期間終了後の運用が肝となる。M&Aの現場では、固定売電期間終了後において、借地の方が将来的なリスクが低いとの見解が多い。
・設置条件(平地または斜面)
平地での設置が買手企業からは喜ばれる傾向にある。斜面設置は、架台・基礎に対して、安全性の検証が必要となる。
・野建て太陽光発電事業における架台について(コンクリート基礎工事、ブロック基礎工事、杭打ち基礎工事)
今後、太陽光発電事業のM&Aを検討する上で、架台を議論することが多くなるものと思料される。ひとことに野立て太陽光発電と言っても、その支える架台の種類は多様。太陽光パネルは各メーカーの努力によって高出力・低価格化が進んでいるが、架台の強度は様々。特に、単管パイプ式架台は、一般的に一番金額を抑えられる架台となる一方、最近になり強度に関する議論が成されている。M&Aの現場においても、少し前であれば、架台の議論は皆無に等しかったが、最近になり、架台に関して、検討の優先順位が非常に高くなっている。物件紹介・提案時は、全体写真に加え、架台の写真も必要不可欠な情報。
・パネルメーカー(生産国では無く、どこのメーカーなのかが重要)
M&Aの現場において、パネルメーカーについての議論は、後順位となっているケースが多い。海外メーカーでも国内メーカーのOEM生産を行っている企業等があり、どこのメーカーだから悪い等はあまり聞かない。ただし、買手企業サイドが金融機関から資金調達を行って買収を行なう場合は、金融機関がパネルメーカーの一定の検証は行っており、場合によってはパネルメーカーによって資金調達ができないといったケースも発生している。
【具体的にM&Aを検討する際に必要となる資料や項目について】
現状までのFIT価格の推移と建設価格のバランスを勘案すると、太陽光発電事業におけるM&Aは今後2,3年がピークとなるものと思料される。30円後半から40円のFIT価格帯の中で、優良物件(立地条件や架台等)の争奪戦の様相を呈している。セカンダリー市場は賑わっているようであるが、名義変更等のリスクを鑑みると、太陽光発電事業については、優良物件をM&Aで譲渡譲受した方が、総じて良いものと考える。