2018年業界ニュース

(更新日:2019年1月)

2017/11/15
良い太陽光、悪い太陽光とは?~M&Aで売れる太陽光発電所とは?

太陽光発電事業において、事業内容の良し悪しを考えてみる。太陽光発電事業の要素としては、発電所の物理的条件と収益事業としての投資条件に分けられるが、まずは太陽光発電の物理的条件について検証してみたい。太陽光発電は、発電所の立地条件と太陽光電池モジュールが発電量や工事単価につながるため、事業の良し悪しを決定する重要な要素である。

まず、発電所の立地は、年間平均の日射量の多い立地が良いことは言うまでも無い。年間平均の日射量についてはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)において、各地の日射量のデータを提供している。日射量は真南を向く立地が最大で、さらに太陽光パネルを水平に設置する場合が最大となる。ただし、一般的には降雪やよごれを考慮し、降雪の少ない地域でも10度程度の傾斜をつけて設置している。

降雪の多い地域は融雪の意味合いと日射量が比較的少ないことから、傾斜を30度程度とし、多くのパネルを設置する地域が多く、日射量の多い地域と比較すればコストがかかる。余談であるが、太陽光パネルの販売業者の中には、パネル設置の斜度を大きくし、発電に必要以上のパネルを設置・販売する悪質な業者もいるようだ。こうした物件はM&Aによる売却を検討する場合、過剰設備部分については回収しきれない恐れもある。以上から、立地に関してはやはり、降雪の少ない日射量の多い南向きの立地が最も良い立地であろう。

では、立地が良ければ良いかといえばそれだけでは無い。その土地が平坦地か傾斜地か、また地盤の状況はどうかという要素もある。平坦な土地であれば傾斜地より造成費はかからないが、水はけの関係などで軟弱な地盤であれば地盤改良の必要性も出てくる。基礎を打たずに太陽光パネルを設置している発電所も多くみられるが、数年で地盤の影響から太陽光パネルが波打つといった事例も出てきているようで、地盤の状況により基礎工事を行なう必要があるかを十分検討する必要もある。基礎工事を行なうか否かで工事単価が大きく異なり、当然ながら事業収支に影響が出てくる。

現在、保険会社各社は太陽光発電事業に向いている土地かどうかを調査するサービスを開始している。調査料は土地の状況にもよるが30~50万円程度のようで、規模の大きな発電所の新設計画には多く利用されている。

つぎに、太陽光パネルについてであるが、FIT導入直後では国産品が優れ、中国等の太陽光パネルは粗悪品といったイメージがあったものの、近年ではその性能差は少なくなってきており、LG、ハンファソーラー、インリーソーラーといった海外のパネルメーカーが多く利用されている。

一方、海外メーカーが大量に太陽光パネルを製造したため、その在庫負担から財務状況が悪化し長期間の製造者責任を担えるかを不安視する声も聞かれる。そうした不安に対応するため、パネルメーカー各社は供給者責任に保険を付して製造者としての保障付で、ユーザーの安心感を謳い販売を行っている。

また、一部の海外メーカーでは、大量の在庫を抱える事情から、製造後長期間経ったパネルを出荷する可能性もあるため、海外からパネルを船便で輸入する際に数枚のパネルを抽出し、テュフ(ドイツの国際的認証機関で世界シェア7割)などの認証機関で割れ(クラック)や性能について検査した後に検収している業者も多く、補助金の認定要件として、上記のような認証機関の認証が要件となっているものも多い。

以上から、太陽光パネルについては海外メーカーのものも含め、認証機関の認証がなされているものが好ましいと言えよう。M&Aで太陽光発電事業を売却する際、地盤や太陽光パネル等に保証が付されていれば、買収側へのアピールポイントとなるのは言うまでもない。

今年の9月末までの期限で太陽光発電事業者に課された、事業計画の提出に伴うメンテナンスの厳格化により、メンテナンスコストも増加するなど、太陽電池モジュールに付随するコストは年々増加している。以上の通り、太陽光発電所の物理的条件を担保するコストは、太陽光パネルの単価を除けば、増加傾向にあると言える。

一方、FITによる買取価格は低下しており、採算のとれない事業が増加している。一般的には、FIT導入当初(固定買取価格40円~36円)では、kw当たりの工事単価は30~35万円でも採算が取れたようであるが、現行の買取価格ではkw当たりの工事単価を12~14万円で抑えないと採算に合わないと言われている。

太陽光発電ビジネスに参入した事業者としては、基礎工事、架台、モジュールといった発電所の各構成要素から、それぞれ土木工事業者、サッシ製造業者、電気工事業者等が多く見られる。こうした事業者の多くは、従来の自社事業以外の工事を外注に出すケースが多く、電力買取価格低下に伴う工事単価の低減要請に追いつけない業者も多くなってきている。

こうした理由から、太陽光発電所を設計から施工、パネルの仕入れまでトータルに請け負うことのできる企業は、現行のFITにおいても採算が確保できるため、工事受注が集中してきており、勝敗がより鮮明になってきている。上記のような状況から、これまで太陽光発電の設置工事を行ってきている業者のM&Aが増加している。

では、上記のような企業をM&Aで買収する理由は何か?現状においては、①施工販売先(分譲先)の情報を入手し、買取取得するリセール目的(セカンダリー)②太陽光発電事業者に課された事業計画の提出に伴う、メンテナンス需要の増加を見越したメンテナンス部隊としての買収などが挙げられる。その他にも太陽電池モジュールの廃棄処分の問題もあるが、その点については太陽光発電事業の事業性の観点で考えてみたい。