2017年業界ニュース

(更新日:2019年1月)

2017/11/10
何故太陽光を手放すのか?

太陽光関連事業の現況に関して言うと、倒産数が年々増加しており、その理由として一括償却制度の利用による税負担が時間差で出てきたことや、市場の拡大を見込んで参入してきた施工業者が競争の激化や工事単価の低下で予定通りの収益が得られなくなったことが挙げられた。また、太陽光関連事業を譲渡する理由として、売電事業者はFIT法改正により未着工の設備を売却するケースが増えたことが挙げられた。

一方で、太陽光発電設備に関しては廃業ではなく中古市場での売却を選ぶケースも増えているように見える。確かに一括償却制度による時間差での税負担に苦しむ事業者は少なくないだろうが、それでも税負担だけで多くの事業者が設備の売却に至るとは考えにくい。ここでは太陽光発電設備の譲渡(≒売電事業者による譲渡)が何故増加しているのか他の理由を考える。

一つ目の理由としては上記の一括償却制度のメリットだけを取ろうとするためであると考えられる。これは設備にかかった費用を本来耐用年数に渡って償却するとろを一括でその年に全て償却してしまう制度である。つまりその年に設備購入にかかった金額を全て費用計上できるため、大幅な税務メリットがある。しかし、税務メリットを受けられるのは導入した期だけであり、結局のところは下図の通り支払う税金の額は合計すれば同じである。これは、経費として計上する額を何年かに分割にするか、一括で計上するかの差でしかなく、一括償却制度は税金支払いの繰越を行ったに過ぎないためだ。上記の「一括償却制度による時間差での税負担」とはこのことである。

そこで、繰り越した税金の支払い分が回ってくる前にメリットだけ享受した状態で譲渡してしまおうというのが理由の一つとして考えられる。しかし、実はこの状態で売却した場合は簿価がゼロとなっているため売却益が大きくなり、比例して所得税も高くなるため必ずメリットだけを享受できるとは言い切れない。

そして、二つ目の理由は利益の確定である。太陽光発電事業は非常に安定しており収益予想が立てやすい事業であるが、唯一の欠点としてFIT法が改正されれば一瞬で状況が変わってしまうため固定価格買取期間が過ぎてからの予想が事実上不可能である点が挙げられる。そのため、固定価格買取期間後は保有している太陽光設備が収益を生み出せなくなってしまう可能性があり、不透明な先行きを見越して売却することが考えられる。

三つ目は事業のリタイアをするタイミングで利益確定の意味も含めて売却してしまうという理由ではないだろうか。太陽光事業者の中には高齢の者もおり、会社ごと譲ってしまうケースもある。実は会社ごと売却してしまう方法というのは大きい税務メリットを受けられる可能性がある。一括償却制度を利用して簿価がゼロであっても税金は株式の売却益にかかる。株式譲渡益に係る税金は20.315%で固定であり、退職金と合わせたスキームを選択できればさらに低く抑えられる可能性もある。設備のみの売却や事業譲渡と比べて税金を抑えられるため会社ごと太陽光設備を売却する事業者もいる。ただし、こちらもグリーン減税の制度等を活用している場合、売却交渉の過程で太陽光設備の時価に調整が入り、その分が株価にも反映される可能性もあるため必ず株式譲渡の方が有利であるとは言い切れない。